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お勧め漫画『ランド』(山下和美)、1000のバイオリン


ランド 1 (モーニングKC) (モーニング KC)
 

 

傑作確定!

 

ちょー最高!!

 

はやくも今年のナンバー1の漫画が決まってしまいましたか。

連載で読んでましたが、単行本でまとめて読むとさらに世界観に引き込まれるよね。

何の前情報も無しに1巻丸々読む事を進めるメチャクチャ面白い(断言)。

 

1巻が350ページ超えというすんげぇ分厚い仕様となっていますが、ここまで収録してこそ1巻として芸術的に完璧に完成するコミック1巻であろう。『天才柳沢教授の生活』『不思議な少年』の山下和美先生の『ランド』である。公式サイトで1話が読めるのでまずは読んでみて欲しい。
<まずは1話を読むべし>
『ランド』モーニング公式サイト

 

 

その村では、人は必ず50歳で死を迎える。村人を縛るしきたり、「あの世」と呼ばれる山の向こう。双子の姉を生け贄に捧げられた少女・杏。獣の皮をかぶった役人達が取り仕切る「この世」と呼ばれる村で神に見守られて暮らす人々。そして、不思議な山の民。杏が見つめる先には希望も絶望もある。この物語で描くのは山下和美が抱く、日本という国への不安
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超お勧めである

ジブリ風味で少し不気味な古日本の村を舞台とした作品である。

 

山下和美が抱く、日本という国へにへの不安」というオビがこの漫画の壮大さを伺わせます。50歳になったら人は必ず死を迎えるという「この世」で生きている村の人々。50歳を超えると「知名」と呼ばれる葬式のような事をする。それは大変めでたい事のようだが、主人公の杏ちゃんはいまいち納得できない。好奇心旺盛で「知りたい」という欲求がまず第一にあるから。

 

『ランド』は知りたいという欲求で動く杏ちゃんが世界を知る物語である。


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杏ちゃんは知りたい。

 

この村は色々と昔から決まり事というか絶対のルールが存在している。簡単に羅列すれば「凶相の子は災いをもたらすから捨てる」「50歳で人は死を迎える」「あの世は山の向こうで鳥に乗って行く」「東西南北の四ツ神様はいつも見てる」「夜に出歩いてはいけない」…等々。そこで杏ちゃんはいつも思うのです。「何で?」と。

 

ジブリ風味の昔の農村を舞台に、徹底的に作り込まれた世界観。物語に一気に引き込まれちゃうじゃないの。私がこの『ランド』を気に入った理由の一つに、架空世界をきちんと細部まで描き構築するところにある。自分はやや設定厨の所があるので、徹底的に作り込まれた世界観は大好物なのである。

 

杏ちゃんは好奇心旺盛で何ごとも知りたがる女の子である。昼に太陽がなぜ高く昇るのかとか、夜にみんな眠るのは何でなのかとか、「あの世」と呼ばれる山の向こうは何なのかとか、50歳で人が死ぬのは何でなのか…等々。

 

興味が尽きません。大人に聞けば、禁止されてるとか昔から決まってるとしか答えてくれない。じゃあ、一体誰が決めたのか?知りたいのである。


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雁字搦めに閉鎖した空間で、外へ向けられる欲求。
重層的で練られた世界観の作風だけど、杏ちゃんの行動原理は少年漫画の主人公と同じである。好奇心からくるワクワクする冒険。何も考えず、少年漫画の感覚で読むのも良い。細かい設定なんて気にせず、ドキドキするワクワクする冒険がある。「ワンピース(ひとつなぎの大秘法)」はどこかにあるはずだ。

 

しかし、杏ちゃんは何でここまで好奇心旺盛なのでしょうか。

 

アダムはリンゴが食べたかったから食べたわけではない。
禁じられていたから食べたのだ。

これだな
要するにダチョウ倶楽部の「押すなよ!絶対に押すなよ!」理論。禁止されたり、ダメだと言われたらやりたくなるのが人間の真理であろう。かのマーク・トウェインの名言である。『トムソーヤの冒険』の小説家です。楽天的な小説家なのですが、晩年は悲観主義な人間観となるのでした。青年誌に移ってからの山本和美先生と晩年のトウェインは切っても切れない業がある(と思う)。

 

とりわけ『不思議な少年』は如実でしょう。トウェインの晩年の名作としても知られ、まったく同じタイトルで漫画でオマージュしたのが山本和美先生の『不思議な少年』である。有体にいえば、先人への挑戦でしょうか。例えるなら『あまんちゅ』における『ピーターパン』、『四月は君の嘘』における『いちご白書』のようなものです。

 

ちょこっと解説すると山下版『不思議な少年』と原典トウェイン版『不思議な少年』は、下地こそ近いが出来上がった料理はまったく別である。あえて個人的な結論で断ずれば、原典は「人生の無意味」、山下版『不思議な少年』は「人生の肯定」でしょうか。同じようでまったく違う。『AIR』と『SNOW』ぐらい違う!

 

あくまで個人的な意見ですが、山下和美先生は晩年のマーク・トウェインに喧嘩を売っていると思ったものです。んで、今作の『ランド』を読んで自信が確信に変わりました。絶対に喧嘩売ってるというか挑戦状を叩きつけているんじゃないか、と。何度も言うけど個人の意見ですよ。で、今作は『人間とは何か』に対する挑戦状じゃねーの

 

人間とは何か (岩波文庫)
マーク トウェイン
岩波書店

いわく、人間というものは「人間の自由意志を否定し、人間は完全に環境に支配されながら自己中心の欲望で動く機械にすぎない」だとか。

 

あ…!(察し)

ジジイに青年が次々と論破される内容なんですけど、「人間など自由意思などない」だとか「人間は機械である」とか「人間は環境に支配されている」とか「人間は独創性など無い」だとかすげぇ鬱々しいジジイの論破が炸裂する。ジジイが晩年のトウェインならば、青年はトムソーヤなど書いてた頃の若いトウェインに置換可能である。で、これジジイこそ『ランド』の村人たちではないか、と。青年は杏ちゃん。全然関係ないかも知れんが。

 

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杏ちゃんは納得できない

 

と、話が大幅に脱線してしまった。

 

そういうの抜きに『ランド』が名作に傑作になると断言できるのは、普通に読んでて面白いことに尽きるでしょう。 1話を読んで触手が伸びなかったり、細かい設定が嫌いな人もいるだろう。とりあえず、脳みそ使わなくていいから1巻全部通して読んでみてくれ、と言いたい。

 

まさに、王道少年漫画のようなドキドキとワクワクさせる冒険がある。
好奇心旺盛の杏ちゃんの小さな世界での大冒険は胸が熱くなるね。こういうドキドキしてハラハラする展開は実に素晴らしい。素晴らしいです。

 

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杏ちゃんの大冒険

 

杏ちゃんの大冒険を最高と断ずるに些かの躊躇も待たぬわ!

 

好奇心旺盛で「知りたい」という欲求のために色々と杏ちゃんが動くんですが、それと同時に様々なドラマがあるからね。杏ちゃん周辺で、または全然関係ないところで。読み応えは抜群。爽快感があるね。世界観はどうもモヤモヤするんですけど、杏ちゃんの真っ直ぐさは見ていて気持ちいい。

 

何より、青年誌にきてからの山下和美先生の作品は読んでて考えさせられるからね。「人生とは何だ?」という一貫したテーマがあるように思う。今作『ランド』も読んでる途中に人生について色々と考えてしまうというもの。

 

また杏ちゃんの可愛さも素晴らしいね。

これぞ、おてんばな大和撫子ですよ。ペロペロしたくなるじゃないですか。動きに躍動感があるから、可愛いにプラスしてかっこいいです。そして、テンポ良く話が転がるから。かっぱえびせん状態の止められない止まらないである。作品にのめり込みます。そして1巻を一気に読んでしまい…ん?…あれ?

 

 

 

って、えええぇぇっ!?

 

 

えええぇぇ!!?

 

 

 

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↑1巻を読み終えた読者の図

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