『あげくの果てのカノン』読了。
めっちゃ良い意味で気持ち悪かったです(最大限の賛辞)。
すっげぇ面白い。ぶっちゃけ、1巻はまぁこんなもんかなという感想だったんですけど、2巻から一気に話に引き込まれてしまい圧倒されっぱなしでした。同時に、良い意味ですさまじいエヴァ臭を感じる。気持ち悪いこのドロドロしたあれ。作者はこの漫画を描くにあたってシンクロ率400%エヴァの影響を受けている(確信)。それを見事に作品に落とし込んでいる。
スピリッツ公式サイトの説明は以下の通り。
押見修造(漫画家)、驚嘆。―僕はかのんのような女の子だった。
志村貴子(漫画家)、恐怖。―隠しておきたい感情を丸裸にされてしまった感じ…
村田沙耶香(小説家)、絶賛。 ―「恋」ほど無垢な異常はない。ゼリー(エイリアン)襲来によって、機能を失った東京・永田町。
高月かのん(23)は、高校時代からストーカー的に想いを寄せる境(さかい)先輩と、アルバイト先の喫茶店で再会を果たす。でも、いけない。先輩は世界の英雄で、そして他の人のモノだから。
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<1話が試し読み>
「SF×不倫」とか謳ってるけど、まあセカイ系ですね。
高校の時から8年間片想いしていたかのんが境先輩とバイト先で再会して不倫関係になっていくというお話し。まあ、不倫といっても生々しいものでなく、かのんの先輩に対する好きって気持ちがメインの純愛です。不倫だけど。
同時にゼリーが地球に来週したというSF要素をスパイスとして取り入れてる世界観も良い味を出しています。かのんは一般人で、境先輩はゼリーと戦う日常と非日常が同居する中でのピュアラブストーリー。不倫だけど。
まあ、本格SFってわけでなくあくまで本質は「恋のお話し」。主人公のかのんが境先輩を好きで好きで好きで好きでどーしようもなく好きって気持ちがこれでもかと描かれきゅんきゅんします。同時に完全にストーカーであるでもあり、引くんだか呆れるんだか可愛いんだか分からなくなる…。
かのんは気持ち悪くて可愛い
高月かのん
まず何よりもかのんの恋する乙女っぷりがすごく可愛らしい。
8年振りに再会した先輩が自分のことを思い出したら、目に涙を溜めながらめちゃくちゃ嬉しそうな赤面がどえりゃあ可愛い。高校時代の片想いをいまでも引きずってずっとずっと好きで境先輩が結婚していてもその想いは変わらず、一途な純愛の尊さを見せてくれます。
かのんの見せる赤面の素晴らしいことよ。
顔芸や表情が活き活きしてて良いね。序盤からレベルの高い赤面を叩き出しまくりでした。その上、きょどり顔と合わさった赤面っぷりの「可愛い力(ぢから)」を見た時は、驚異の大型新人が現れたと思ったものです。かのん。末恐ろしくも末楽しみな子!
こんな純情な天使にはペロペロするしかないと思ったのもつかの間、かのんの本質は一途すぎるが故に客観的に見なくても一目で分かる完全にストーカーそのものの痛い子でもあります。元カノファイルとか先輩の使用済の物品コレクションとか普通に引くわ…。
すごいギャップですね。清純派の大天使のようでストーカーのヤバイ子って。
いや純愛を極めればこそ同居するのかも。好きで好きで好きで好きで好きでどうしようもないからこそって溢れる感情ですしおすし。逆にこのギャップこそ魅力でもあります。
個人的にかのんのベストは5話のはじめてのデート
かのんはピュア少女漫画の主人公のような一面と引くぐらいキモイ一面が同居している。純情乙女さとキモさを美味い具合に併せ持ち表裏一体になっています。
表情もいいけど、かんののモノローグがまた心の琴線に触れます。
むしろ心の内こそキモ。モノローグでは強く強く境先輩への想いで焦がれているのに、現実は挙動不審になる様子が面白くて可愛い。好きな人の前では平常心でいられないからこそ、零れてしまう言動の数々がとても不自然でいてとてもリアルでもあります。
2巻から赤松急上昇で盛り上がりまくり
個人的に1巻はまあそれなりに面白い程度の評価だったんですけど、2巻はさらにエンジンかけて加速していきます。かのんと境先輩だけの物語かと思いきや、境先輩の奥さんとかんの義弟が参入してきて息をつかせぬ展開になっていく。
境先輩の奥さん
奥さんかのんの店に襲来!盛り上がってまいりました!
境先輩は同僚と結婚しているくせにかのんにチョッカイを出す軽薄なスケコマシか奥さんが悪女で愛が無いのかなって思ってたんですけど、予想通りの悪女っぽい雰囲気でかのんに釘を刺す。あー、こんな奥さんならかのんに惹かれるのも仕方ないかなぁって思ったら…そこからまたひっくり返すからすごい。
2巻後半では奥さん視点で過去が語られ、これがとても素晴らしい。
こんなん見せられたら、奥さんめちゃんこ可愛く思えてしまうやんか!
境先輩は「修繕」と呼ばれる回復技術でゼリーに身体をぶっ壊されても修復します。この「修繕」を行うと以前とは味覚や好みや気持ちまで変わって別人になっていきます。
「修繕」を繰り返し、以前とはまったくの別人になってしまっている境先輩。変わりゆく境先輩を変わらず「好き」というかのんと、変わっている境先輩を「嫌い」という奥さん。それでも奥さんの心情がまたグッとくるというか痛すぎる…。
奥さん…(´;ω;`)
1巻ではかのん視点でのみ物語が語れており、ただただ先輩がどうしようもないぐらい好きってだけの話かと思いきや、2巻からは奥さん視点、義弟視点…と群像劇になっていく。かのん視点からの境先輩、奥さんからの境先輩を交互に描き分けることで二人のキャラクターと境先輩という人物像を細部までより一層身近に感じられる構成が上手い。
悪女かと思ってた奥さんも一途でとても良いキャラだった。同時に心が痛くなってしまう…。こんなん見せられちゃね、例えかのんと先輩が結ばれてハッピーエンドでもえぐり取られた心の痛みは絶対に残るでしょ。これどー決着付けるんだろ。
義弟視点のかのんも良い意味で痛い。
1巻からお姉ちゃん好きなんじゃないかという気配はあったけど、それが明確になりかつ痛々しぐらいに一途でもある。一途な純愛をする4人がこじれてしまってるのう。
なんだこのエヴァ臭は…
カノン…
この漫画の世界観はエヴァっぽいな…と思うのはオタクなら間違いなく感じるところであります。世界観もそうだけどかのんが心情の吐露する黒に白文字ダダダダ…が特にっぽいなって。んで、2巻まで読んで確信しましたね。わざと描いてるって。「パッヘルベルのカノン」まで出されちゃ間違いないわ。あえてそういう風に描いてるなと。
同時にこの漫画に対する気持ち悪さの正体にもなんとなく分かった気がした。
エヴァを文学という人がいる。まったく同意見です。かつて太宰治が自分の恥部をさらけだして、色んな人の共感を得て「太宰治という文学」などと評されたようにね。エヴァは庵野秀明氏のオタクの恥部を全てぶっこんだ作品だからね。禍々しい共感を生んだわけです。文学です。はい。オタクの妄想全部乗せですしおすし。気持ち悪くも心地よくあった。
それを踏まえると、この漫画もエヴァのコードに乗っかって妄想全部乗せ(のように見える)。エヴァに影響されて燻る妄想のアレコレが爆発して卍解している(気がする)。あんなこといいな♪できたらいいな♪って。
起きたらいいなな世界ですよ。恥ずかしい妄想をさらけ出してる。
この世の果てで恋を唄う少女KANON。普通の感性なら絶対に嫌われるようなとこをさらけ出してくる…。あぁ…良い意味で気持ち悪い(賛辞)。同時に謎の共感を禍々しく生む。物語に飲まれます。まる。
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