『衒学始終相談』唸る発想のネタとニンマリできるソフト百合のふいんき（←なぜか変換できない）

『衒学始終相談』（三島芳治）読了。

クセになるような不思議な感覚になります。そしてソフト百合の匂いがとても良い。

読み進むほどに謎が深まる不思議な時空間。胡乱な蘊蓄が華麗に舞う研究室で交わされる師弟関係にある女性二人の常在戦場な会話。「人類の心の復興計画」の行方は!?な第１巻

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大学の先生と生徒の研究室

『衒学始終相談』は、ある大学の研究室で謎の研究をする先生と、いつか先生の地位を奪ってやると思ってる女子生徒で繰り広げられる研究についての小話が面白い作品。

で繰り広げられる一見凄い勉強になるようでいてまったくそんなことなく、でもちょっと哲学チックだったりする何のこっちゃな摩訶不思議な研究とテーマが妙にクセになる。

博識でないので、最初は先生の言ってる事は本当なのかと錯覚してしました。

例えば、あらゆる物の中に魔女のアイデアやモチーフがあるとか、NASAの月ロケット計画は元はカトリック修道士の瞑想法だったとか…「それっぽく」語られてるので、「そうだったのか！？」と勉強になった気になってました。

しかし、前時代のインターネットで「お、パソ通の話か？」と思ったら全然違って気付いた。これ先生が「それっぽく」語ってるだけで、別にリアルでも何でもない空想話だと。正確にはこの漫画オリジナル設定といったところか。そうなるとその発想力が凄い。

着眼点が凄い

今の子は知らないだろうけど現在使われてるインターネットは実は二代目でね。それ以前に今は使われていない前のインターネットがあったんだ（3話）

先生の研究してるテーマや知識はこの漫画オリジナル設定のもので現実ではないけど、「ありそう」「っぽい」のが実に良い味出してる。

今のインターネットは2代目で今の子は知らないけど前のインターネットがあったというのは、確かに合ってるといえば合ってる。今と10年前、20年前ではネット文化が全然違いますからね。その辺をうまく拾い上げて漫画の設定に落とし込んでる。

つまり、作者の着眼点と発想力が素晴らしいのである。天才的ですらあります。

リアルの何てことない日常の事や物や疑問を独特の発想力でネタに昇華してる。知的な「ふいんき（←なぜか変換できない）」を醸し出してる（※今の子は知らない前のインターネットじゃ）

実は知的かもと思わせる

環境となって人間の周りに寄り添い、私たちの言葉を聞き取って空へ送る…。天使の様な存在になったのかも知れない（6話）

6話「盗聴器の生態」では、冷戦時代にお互いの陣営が盗聴器を仕掛けまくって、今でも盗聴器は残ってるという話でたくさんの盗聴器が発見される。誰にも聴かれる事もなくまだ作動して空しいと生徒が呟けば先生は絶妙なポエムを述べる。

盗聴器の電波は空へ送る天使のような存在！そして酷いオチ（褒め言葉）からの最後に描かれた1コマはあざやかな謎の感動を産む。ロマンチックだ。

独自の視点で描かれたこの漫画オリジナル設定も「本当にそうだったらいいな」と思わせるのが最大の魅力かな。

ふわふわした心地よさ

基本的に研究室で先生と生徒が駄弁るだけですが（たまに出かけますけど）、それがめちゃくちゃ居心地よい。心地よいでなく読んでる時の世界に没入してる居心地がいい。

その理由を考えると良い意味であいまいないなことかな。不思議な空間になってる。それでいてどこか安心できる。

例えば研究室のディテールなんてエピソードごとに毎回まったく違ってる。部屋の形状も家具も変わってる。この辺のふわふわしてるけど、何か2人がいれば同じいつもの我が家のような研究室になってる。

また先生も生徒も名前すら謎なのもふわふわして良い。「君」「先生」と呼び合うだけで一切名前が出てこない。まるで夢幻かもしれない。そこが「いつまでも居たい」と思えるリラックス空間をより高めてるかも。

読み終えた時は「あー、読了しちゃう」と寂しさすら感じちゃうもん。例えるならば、ゆったりとリラックス空間で満喫していたら、蛍の光が鳴ってしまい、「お客様もう閉店です」と言われて、しょんぼり帰るような気持ち。

ほのかな百合臭

あと『衒学始終相談』最大のキモはほのかに…しかし確実に如実に濃厚に濃密に漂うソフト百合な関係です。

先生と生徒は大学で偶然「ちょっと手伝ってくれる？」と出会ったはずなのですが、先生は生徒の幼少期の写真を私的に持ってたり子供の頃にサンタとして手紙を出してたりします。冷静に考えるとちょっと怖い。笑

普通に解釈すれば「先生→生徒」の好意は透けて見える。一方の生徒も生徒で先生に対する淡く甘いものがちょいちょい描かれてて絶品です。ニヨニヨできるシーンは多い。ソフト百合漫画としても十分堪能できます。

そんなわけで、日常や物や自称を突飛な着眼点と発想力でおもしろく漫画に落とし込むネタ。居心地の良さがある雰囲気。自然と「あらあらまあまあ」とニヤケちゃう百合成分。素晴らしかったです。まる。

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衒学始終相談

三島芳治

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