さて、「バチバチ」がヤバイですね。
クソ熱い試合が多い「バチバチ」の中でも阿形VS吽形の対決は半端ないですな。
怪我を押して土俵に上がる吽形の思いや覚悟、それを受け止める阿形。
魂が揺さぶられるというか。勝敗以上のものがあるというか。
以前の阿形の「お前の最後は俺が決めてやる…」という台詞から、ぶっちゃけ勝敗は予想できたんですけどね。吽形は怪我してるし、阿形が勝つなって。で吽形の意志を受け継ぐんだろーなって。
阿吽
そもそも阿吽対決は勝負として見ると白けているんですよ。
吽形は取組中に膝の腱を再断裂してしまい崩れ落ち、それを阿形は咄嗟に手を差し伸べてしまったわけですから。もうどっちが勝つかという、勝負論としては完全に終わってしまっている。真剣勝負としては茶番もいいところですよ!
なのに何故なんでしょうか、俺は猛烈に泣いている。
阿吽対決…もうこれは勝負論では語れない。生き様である。
阿形VS吽形
「バチバチ」は試合の魅せ方が上手く燃えまくるわけですけど、阿吽対決は特に半端ないですね。お互いがひたらすらド付き合いをするのはただただ圧巻。両者の台詞も心情もなければ、試合を見ている観客も誰もが喋らず、擬音すらなく、ただただド付き合う描写だけ。「動」のみを描く。
スポーツ漫画ではよくある、ここが試合の山場的な文字無き動作だけの描写。これだけで十分引き込まれるし、圧倒的なド迫力、見開きでのど付き合い、観客や鯉太郎たちの反応とクソ燃えるわけです。魂が揺さぶられる。泣く。
その中でも「バチバチ」で特に逸材なのは意外な観客の反応ですよ。
え、こいつがこんな反応するのって感じで、熱い試合がさらに彩られ、胸が熱くなる名試合となるんです。
例えば、鯉太郎VS王虎。
めがっさ燃える「バチバチ」史上でもトップ3に入る名試合でした。
この試合では鯉太郎と喧嘩(ボコされてた)してた歯抜けヤンキー達が鯉太郎の死に様を拝みにきていました。「今までの報いだ死ね鮫島!」とヤジを飛ばし、鯉太郎の負ける姿を見に来てたはずが…。
歯抜けヤンキー
「勝て、鮫島―!!」
「負けるお前なんて見たかねーぞ!」
「鮫島ー頑張れ、チクショーバカヤロー」
誰もが王虎を応援しアンチ鯉太郎の空気だった会場の観客たち。その中でもわざわざ上京して鯉太郎のやられる様を見に来たアンチ鯉太郎の筆頭だった歯抜けヤンキーが、鯉太郎VS王虎を目の当たりにし、鯉太郎の頑張りに心動かされ叫び応援をするのでした。
試合中に心動かされる観客…熱い試合の中にある「何か」がある感じ。
「バチバチ」の中でも隠れた名エピソードで胸熱です。
他にグッときた観客の反応といえば鯉太郎VS蒼希狼にヤジを飛ばしてたガン黒DQNカップルも外せません。鯉太郎と蒼希狼が投げ合いをする中で、バカにしたヤジを飛ばしていました。
バカップル
バカ女「ギャハハハ、何アレ!キモッ!」
バカ男「アハハハ、相撲取れ!相撲!」
酷いヤジを飛ばすDQNカップル。
それでも鯉太郎と蒼希狼は投げ合いを続けます。
ダンスとヤジられる投げ合いを続け、両者の集中力がピークになった時、鯉太郎も蒼希狼も動かなくなりガップリ四つで組み合い続けました。どちらも組んだまま動きません。
再びDQNカップルが汚い野次を飛ばすかのように見え…。
バカ女「ギャハハハハ動けフンドシ!ほら!アンタも何か言ってやれば」
(バカ男サングラスを取り)
ぐう聖「お前ちょっと…黙ってろ…」
鯉太郎と蒼希狼の生き様を見せつけられたガングロ男は試合に見入りサングラスを取って心を動かされたのでした。
このように「バチバチ」では、熱い試合を見て心が揺さぶられる観客がいいアクセントとなって、その試合がいかに壮絶か、名試合なのかと読者にビンビン伝えてくれます。
んで、阿形VS吽形の試合。
観客たちはその生き様を見せつけられ恐れ慄き、「相撲ってこんななの…」「何だよコイツら、バカじゃねーの…」「ここまで…ここまで本気になれるって…」と、阿吽の試合がいかに壮絶であるかを物語る感想を述べています。泣いてる観客までいます。
特筆すべきは、阿吽対決は前座を見に来た客ではない事でしょうか。幕下以下の力士の優勝決定戦は十両力士の取り組みが終わった後に行われ、次代ホープのお披露目という意味があります。つまり、大関や横綱の相撲を見た観客達すら阿吽対決は圧巻である試合だったのです。
しかし阿吽対決のキモはこの観客達ではありません。
虎城親方ですよ。虎城親方は火竜や空流部屋と因縁があり、阿吽対決の同部屋同士の優勝決定戦にムカムカしまくっていました。
荒れまくる虎城親方。
空流と犬猿の中だから、虎城の部屋では猛虎以外今はパッとしないから…理由は色々ありますが、キレまくっていた虎城親方。
阿吽対決を見ても悔しがりまくり。
そもそも虎城親方は1話から登場して、ひたすら小物に描かれ続けていました。
しかし、物語が進むにつれ「関取」になるのがどれほど難しいか、その中でも神様という横綱がどれほど凄いかが明らかになるにつれ…この小物の虎城も元横綱ならば実は大物だったのではないかと思った事もありました。
虎城、この男が阿吽対決を見てむかついてむかついて悔しがって荒れてたのに、阿吽の真っ直ぐな生き様、ド付き合いを目の当たりにし、怒りの表情ではなく「…」と真顔で阿吽を見つめているのです。
吽形が押し負けなくなった時にポツリと…。
あの虎城親方が…
「終わりを迎えた者の…」
「最後の燃焼か…」
「フン」
「…」
「見事だ」
あの虎城親方が認めた阿吽対決。
この試合がいかに壮絶であるかという説得力が半端ない。第三者の観客が心動かされる表現が上手ないなかで虎城の「見事だ」は作中最高のものです。全てを持っていった虎城親方に胸が熱くなるな!
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