うお!めちゃくそ面白い!
岩明均先生&室井大資先生のコンビによる戦国漫画『レイリ』1巻と2巻が発売されました。岩明先生は原作なんてやってる時間あるなら『ヒストリエ』描いてくれよんなんて思ってたのに、今作『レイリ』が傑作の匂いしかしないってんだからね。
<関連記事>
まだ2巻ですけどはやくも飢えて続きが読みくてしょうがない。
これは1巻と2巻を同時発売したのは正解ですね。2巻まで四の五の言わずに黙って読んでくれっておすすめした。
長篠の戦いから4年、黄昏ゆく武田帝国と勃興する織田軍団の血戦のはざまで、数奇な運命を生きる少女の名はレイリ。巨匠渾身の原作を新感覚の鬼才が作品化! 衝撃の本格戦国時代劇、開幕!!
<試し読みできます>
ガチ戦国時代なのに女の子が主人公なのかと最初は面を食らいましたが、主人公のレイリちゃんが魅力的なキャラクターすぎて惚れそうになってしまいます。死にたがりの狂戦士レイリとエピソードの数々が素晴らしい。
岩明均&室井大資コンビの新感覚戦国漫画
レイリちゃん
いいねレイリちゃん。良い意味で狂ってる。
もちろん死にたがりなのには理由があり、1巻はレイリの過去を掘り下げます。歴史漫画として面白くなるのは2巻からかなぁ。1巻は序章って感じ。武田勝頼が織田・徳川連合軍に大敗した「長篠の戦い」より4年後(1579年)が現在軸として展開されます。
4年前のレイリは百姓の娘ですが「長篠の戦い」の落ち武者狩りの被害に合う。んで、岡部元信に拾われて4年間育てられてきました。その過去編がまた淡々と起こった出来事を静かに丁寧にねっとりじっくり描く(褒めてる)もんだから辛い内容がより一層胸に刺さる。
レイリの過去
あー、この静かに事象を刻む感じが実に岩明均テイストなんですよね。絵もそうなんですけど、コマ割りまで室井大資先生はかなり意識して岩明均節を出してる気がする。
過去編は、全体的につねに緊迫した空気が漂っていました。スピード感があるんだけど、ゆっくり丁寧でもある(←何言ってんだ)。というのも、イベントは淡々と進みつつもレイリの絶望シーンはじっくりコトコト煮込んだスープみたいに描くからね。
そりゃ、こんな過去があればねレイリも死にたがりになっちゃうってものですわ。
のっけに過去を掘り下げたことで、レイリというキャラクターを細部にいたるまでより身近に感じられます。レイリのキャラ立てをするだけでなく、同時に史実をリンクさせてレイリの話とは別に軸を置いて物語を走らせるにも良い。
史実もリンクさせる
過去編でレイリの父親が語る岡部元信である。
レイリを拾ったのが岡部元信とか胸が熱くなるな。好きな武将に上げる人多いんじゃないですかね。「信長の野望」じゃ物理壁として使い勝手の良いバフ役でもあります。初期シリーズじゃ脳筋野郎でしたがシリーズを重ねるにしたがって知略も増強。朝比奈泰朝と並ぶ今川家のエース筆頭して誰もが重宝したものです。
そんな岡部元信の逸話といえば、「桶狭間の戦い」で敗れた後も織田信長に抗戦し続け、今川義元の首と引き換えに鳴海城を開城したことでしょう。首を渡されゆうゆうと鳴海城を去ったという。その辺りを美味い具合に漫画にリンクさせて歴史漫画としての厚みを出しています。
岡部の戦闘能力が半端無いのは間違いないかんね。史実通りに高天神へ入城するし。おそらく近い未来に描かれるだろう「高天神城の戦い」は今から楽しみです。岡部の他にも有名武将がかなり登場しますのでその辺りも見所の一つ。
歴史漫画としての見所も満載
歴史というのは過去の出来事で確定していることですけど、「なんでそうなったのか」というのは視点や解釈次第で様々に捉えることが可能です。だから歴史物の作品でもっとも面白いのは作者がどうやって解釈して歴史を描くかってところだと思うんですよ。
んで、今作『レイリ』は武田家と深く関わるんですけど、その関わり方がなかなかどうして。すごく面白いです。レイリが武田信勝の影武者となるってんだからね。レイリの顔は信勝そっくりなのでした。女の子のレイリがどう戦地に赴くかなって思ってたらそー来たかって感じです。
レイリと信勝
何度も言うけど歴史というのはすでに確定してることで知っているんですけど、結果が予想が出来るとしても、それ以上に感動などをドラマチックに魅せてくれるのが歴史漫画の面白いとこ。レイリが信勝に姿が似てて影武者となるなんてこの先はどんなドラマになるのか期待が膨らみまくりです。
しかし『レイリ』はどこまで描くんだろうか…。
原作の岩明均先生は1巻の後書きで以下のように述べていました。
私は「キャラクターが描きたい」ではなく、「出来事が描きたい」という所から物語を書き始める。漫画作者としては少数派かな、とも思う。
まず最初、歴史上のある「出来事」を描きたいと思った。そして次に、その「出来事」の近くに立っている人物を「主人公」に据えるのだ。
なんでも、はじめはレイリを主人公に据えたわけでもなく別の男だったそうですが、資料を調べ津うちに他の男を…と二転三転してレイリを主人公にしたとか。でも、もともと描きたかった「出来事」は物語中で展開するそうな。
『ヒストリエ』もそうですけど、「出来事」を描くのを優先にしつつ、きちっとキャラクターを掘り下げてヒューマンドラマでも魅せるので、「キャラクター」も「出来事」も、どっちも最高クオリティってんだからすごい。
気になるのは、描きたい「出来事」は何なのかですね。
武田氏のハイライトである「三方ヶ原の戦い」と「長篠の戦い」は既に終わってるので、おそらく武田氏滅亡の「甲州征伐」だと思われますが…。1話目の冒頭見開きカラーには武田の家紋四つ割菱が確認できますし。
1話冒頭
甲州征伐まであと3年かな…。
信勝は享年16歳ですので、そうすっとレイリは18歳か。影武者として戦うのだろうか。コミックの1話毎にあるイラストが興味深い。織田・徳川に滅ぼされるのは覆せない事実なので胸に刺さりまくるきっつい物語になりそうですけど、果たして『レイリ』はどう紡ぐんでしょうか。
レイリちゃんぐうかわ
何よりキモはレイリちゃんの可愛さに尽きます!
過去編で強姦されそうになったレイリちゃん(11歳)はけっこうはぁはぁした(←)けど、2巻からは可愛さもすさまじい勢いで上昇していきます。
レイリちゃんまじ天使
自分で自分のこと美少女と言って赤面しちゃうレイリちゃん可愛すぎるんですよ。
かっこ良さとかわいさを併せ持つ恐ろしい子!圧倒的な可愛さを誇っていました。いやはや、2巻は物語が動くのと同様にレイリちゃんの可愛さを堪能できる仕様なのも素晴らしい。
レイリは最初こそ狂ったやつだなという印象だったけど、愛嬌も増して「可愛い力(ぢから)」が半端ないね。日常のやりとりほんとすこ。
うむ。死にたがりの美少女レイリちゃんの行く末が楽しみ。
読み始めてから2巻まで読むのが止められない止まらないカルビーかっぱえびせん状態になります。続きを渇望して飢えてしまう。1コマ1コマの何気ないやり取りまで堪能できる。超面白かったです。まる。
<こちらもどうぞ>
コメント
岩明先生、アフタヌーンのコメント欄で読者に凄く気を遣った説明してて
読んでるこっちが気にしちゃう感じになったわ。
もっと堂々としてていいのよ(;^ω^)
アフタのコメント欄で「原作者としての仕事はもう終わってる」って言及してたのはこの作品なのかな?
>甲州征伐まであと3年かな…。
>信勝は享年16歳ですので、そうすっとレイリは18歳か。
歴史に疎い人にとって、これはネタバレ…