『柔道部物語』は三五十五の成長物語として熱い。
何よりも個性豊かなライバルたちよ。樋口、飛崎(兄)、千代崎、西野との熱戦が最高でした。特に一番ヤバかったのは耕談館大学付属浦安高校の西野新二でしょう。超パワーの持ち主で「力」というものを見せつけます。
天才・樋口を再起不能にし、強豪千代崎をまったく寄せ付けない圧倒的すぎる強さ。まさに最強のラスボスでした。ちなみに、樋口を再起不能の大怪我させたけど試合では負けてるというのも、最後まで樋口の格を保った役割もあった。
十五とは巡り合わせや途中で十五が敗退するなど、なかなか直接対決しませんでした。2年のインハイ団体は十五先鋒で西野次鋒、代表戦は先代主将・鷲尾が出たし。個人戦は千代崎に準決勝で敗れたので戦えず…。はじめて相対したら衝撃を受けましたね。
最凶のラスボス・西野新二
西野新二強えぇぇ
十五も秒殺。
2年の高校選手権決勝で十五と初めて試合して圧勝。しかも、団体戦の勝ち抜きで1人で岬商業を5人抜きして優勝してしまいました。柔道ってのは相手をくずして瞬時に技を決めるもの?ノー!力だけでぶん投げます。
とんでもない努力で、重量級のパワーと軽量級のスピードを併せ持つ規格外の化け物となった西野。ラスボスというに相応しい圧倒的な強者感といい感じのクズっぷりを発揮して強烈すぎるキャラでした。
作中ではけっこう負けてる十五ですけど、熱い闘志で次は頑張るぞ!って前向きだったのが西野に敗北して心が折れてしまう。あの十五を秒殺し、さらにやる気も無くさせるとか西野の怪物っぷりは半端じゃなかったですから。
金鷲旗団体決勝・大将戦
十五VS西野
最後の「十五VS西野」はまさに神試合でしたね。
なんつーかこれが集大成ってのが存分に描かれてて、震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!って感じでした。はい。
『柔道部物語』は初期はじっくり練習を描いてたんですけど、途中から試合メインになりほぼ練習シーンを省略するようになります。試合もダイジェストが多くて描くべきところはしっかり描いて省略するところは省略するテンポの良さがウリでもあります。で、金鷲旗の前には原点に立ち返ってしっかり練習が描かれ、かつてのライバル樋口と飛崎(兄)が技を教えてくれたりしました。
しかも、西野との決戦ではちゃんと役に立ってるし。
ありがとうよ樋口!
お前が教えてくれて袖釣りが土壇場で俺を救ってくれたぜ
かつてのライバルの技を使う十五である。かつてのライバル(地方大会のライバル)が全国制覇のために練習に付き合ってくれパワーアップさせたり技を伝授するなんて熱いじゃないですか。今ではスポーツ漫画の王道展開にもなってるけど。
『柔道部物語』は本当に後世の作品与えた影響はデカいと思う。スポーツ漫画を読んでると、お!この展開は『柔道部物語』の影響を受けてるなって思う展開が描かれる作品多数ありますからね。しかも、昔の作品だけど今でも十分に楽しめる分かりやすさがありますし、柔道なんて知らなくても面白いから凄い。
金鷲旗の決勝「十五VS西野」はまじで神。いわゆるゴッド!
しかも傍若無人だった西野と先生のやり取りがまたグッとこさせるヒューマンドラマまで仕込んでて最高でしたね。その後の、十五と西野も含めて『柔道部物語』はまだまだ読者が想像するしかないエピソードが無数ですからね。例えば、十五と西野は将来の金メダルを誓い合ってたし。
2人で金メダル2個だぜ
十五と西野がオリンピックに出るまで見たかった。
他にも『柔道部物語』は気になること多数です。十五の世代は高校3冠のうち2冠を達成するんですが、これが岬商業高校の最高成績かというとそうじゃない。そうじゃないのだ。『柔道部物語』はナレーションで後に〇〇となるのだった…と結果を先に書いちゃうのも特徴。
随分前の段階でネタバレして、実際の作中でその通りになるのです。ほとんど先にナレーションで書かれたことを達成した『柔道部物語』だけど、未達成のものもあります。それが十五の一つ下の世代が入部した時に書かれてナレーションである。
5人の新一年生が加わった。
彼らが2年後、岬商柔道部史上最強のチームを作ることをこの時点では誰も予想できなかった。
1つ下の田丸や星たちの世代が3年になる2年後こそ岬商柔道部史上最強なんだって。
十五の世代では高校3大タイトル(春の高校選手権、夏の金鷲旗、インターハイ)のうち2冠達成したのに、岬商柔道部史上最強が1つ下の世代ならば、田丸たちの世代は十五の世代も無しえなかった三冠達成するってことでしょう。この辺りも興味ありますよね。
十三や西野たちが高校を卒業した後どうなったのか(『1・2の三四郎 2』でチョロっと描かれてるけど)。岬商柔道部史上最強の田丸たち世代。気になることはてんこ盛りです。そして始まった『女子柔道物語』である。
『柔道物語』のその後『女子柔道物語』
『女子柔道物語』
三五十五キター!!
『女子柔道部物語』の舞台は北海道で1話目にて「JAPAN」のジャージを着た十五が登場しました。高校卒業してOU大に進学し日本代表になったようです。オリンピックが地獄だったって、敗けたのでしょうか…。詳細不明だけど気になる。
元祖『柔道部物語』と同様に先に未来の結果を出して、そこに至る過程を描く。『女子柔道物語』はモデルで原作である恵本裕子さんの実体験を元に、神楽えもが1995年の世界選手権で11秒敗けし、1年後の1996年アトランタ五輪女子柔道61キロ級で金メダルを獲得することが冒頭で描かれてます。
まず時代背景が面白いですね。
『元祖柔道部物語』の年代は現実にも合わせてましたから。
十五3年 / 十五2年
十五が高校2年の時のインターハイは高知で開催され、十五が高校3年のインターハイは仙台で開催されていました。つまり元祖『柔道部物語』は1988年~1990年の間の物語だったことが分かります。
1988年(昭和63年)兵庫県 88兵庫総体
1989年(平成元年)高知県 89高知総体 .
1990年(平成2年)宮城県 90宮城総体
あれ?計算すると、モデルの恵本裕子さんは『柔道部物語』の三五十五と同じ年なんですよね。モデルと同じ時間軸を歩む神楽えもと十五は同級生になってしまう。高1からはじめて柔道経験8年でアトランタで金取るし。しかし、『女子柔道部物語』で登場した十五はどう見ても神楽えもよりも年上です。
どうやら時空に歪みが発生したようです。
あんま元祖『柔道物語』の年代とか気にしないほうが良さそうですね。年代を気にしないようにしても気になること。それは十五は岬商卒業後に五輪に出たっぽいですけど、結果がどーなったのか気になりますね。『女子柔道部物語』で描かれのでしょうか。
『女子柔道部物語』は面白くなりそうな匂いしかない
神楽えも
まあ1巻の段階ではなんとも言えないけど絶対に面白くなる臭いしかしない。だってあの『柔道部物語』の冠で女子柔道なんだもん。1巻では神楽えもが何でも途中で投げ出してしまい続かない中で、柔道やれば痩せると聞いて柔道部に入部し、入って5日後にいきなり試合するまでが収録。
ノリが元祖『柔道部物語』の初期を彷彿させておっさん歓喜ですわ。モチのロンで岬商業高校とカムイ南高校道部では色々違います。「サイ!」なんて挨拶も「セッキョー」もないけど、柔道部の様子が近いものがあります。
まだまだ物語が本格的に動いていませんけど、今後の期待値は高いですよ。絶対に面白くなると言えるんじゃないでしょうか。もちろん元祖『柔道部物語』を知らなくても充分楽しめます。先が楽しみな作品です。
『女子柔道部物語』のサクセスストーリーも楽しみだけど、十五たちのその後も気になるので描かれることをワクワクしながら待ちたいです。まる。
※追記、以下の指摘をツイッターで頂きました。
@yamakamu はじめまして。三五がオリンピックに出て負けた話は、「格闘探偵団」で触れられてますね。1回戦負けしてボロクソに叩かれたそうです。
— kob / しくろん (@_kob) 2016年12月24日
『格闘探偵団』で五輪金メダル確実まで期待される選手となった十五が無名相手に1回戦敗けして世間からバッシングを受けたと明かされてました。時系列はその後で、十五が五輪1回戦敗けしてボロクソ叩かれたから地獄だと言ったのかもしれませんね。
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コメント
まさか可愛い子をペロペロするのが好きなヤマカムさんが(失礼)柔道部物語を紹介するとは。
柔道部物語は柔道をやっていた父の影響で家にありましたが、確かに傑作でした。ホント熱かったです。今でも紹介してくれた場面全てを覚えています。試合の迫力は凄かったなぁ。西野との最終決戦は文字通り手に汗握りましたよ。
っていうかこの紹介で続編が出たことを初めて知りました。ありがとうございます。
ただ見たいような、思い出にしておきたいような……不思議な気持ちです。
本編中で三五十五は基本三五の父ちゃん母ちゃん以外はみんな三五と呼ぶから、十五と書かれてるとちょっとモヤモヤしちゃうなぁ。
新潟市の高校を下敷きに書かれているので親近感が湧いてました
岬商業はモロに新潟西高でしたから
ヤマカムさんのレビュー大変楽しく拝見させていただきました。
文面から柔道部物語への愛が感じられ、ファンとしては抑えて欲しいポイントも余すことなく紹介されており素晴らしいレビューだと感じました。
ただ一点、ごめんなさい、どうしても気になったので訂正させてください。
個人的に柔道部物語は格闘マンガの最高峰だと思っており、今まで何度読んだか分からないくらい読み返しているのですが、ヤマカムさんの書かれていたココ
“5人の新一年生が加わった。
彼らが2年後、岬商柔道部史上最強のチームを作ることをこの時点では誰も予想できなかった。”
これ、本編では史上最強ではなく“史上最低”なんです。三五率いる三年生と田丸などのレギュラー2年生が猛練習をしている中で、新一年生は3年生の名古屋に「俺をめざせ!!」と言われ素直に言うことを聞いてしまうんですね。おそらくこのせいで2年後田丸たちが抜けたあと弱小チームに成り下がるのだと思われます。
初めてこの部分を読んだときにガッカリした記憶があり、また読み返してみましたがやはりそうでした。これが小林まこと節のギャグなのでしょうけど、ちょっと残念ですよね。
ちなみに1.2の三四郎2に三五と西野がカメオ出演してまして、三四郎と赤城の対決を見に来ている群衆の中に紛れています。そこにマイケルもいます(笑)。三五たちは首からメダルを下げていたような記憶もありますが、手元にこの巻がないので未確認です。小林先生は過去のキャラをちょこちょこ出してくれるのでファンとしては見る度に毎回ほっこりしますね。
初めまして。
にこ氏のコメントが気になったので一言。
ヤマカムさんの記述はまちがってないと思いますよ。
田丸ら5人の入学した2年後であるから、彼らが岬商業最強の世代で間違いないと思います。彼ら5人が三冠王を果たしたのでしょう。
そしてその一学年下の「小林・楠・服部・下坂・田中」(皆、小林先生以下、先生の友人漫画家の名前)新入部員が入部した時から2年後に「史上最低のチームを作る」との記述なのでなんら矛盾はしていません。名古屋の悪影響を受けたまま史上最低のチームを作るのでしょうね。
最強の後に最低のチームが出来上がる部分なのがギャグなんでしょう。その時の五十嵐先生の立場を考えると風当たりがきつそうで不安になります。
ちなみに三五は彼女のひろみとそのまま結婚しておりました。
不甲斐ないオリンピックの成績を世間から叩かれた鬱屈を妻にぶつけ、子沢山のパパになっているのも、「格闘探偵団」で描かれておりました。
この作者は続編で前作の登場人物を落ちぶれさせるってパターンをいい加減止めてほしいな