「鳴かぬなら殺してしまえ時鳥」織田信長
「鳴かぬなら鳴かせてみよう時鳥」豊臣秀吉
「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」徳川家康
作者不明の句であるが、3人の性格を極端によく表現したものとして有名である。他にも「織田がつき、羽柴がこねし天下餅、座して食らうは徳川家康」と言った歌も有名かな。どうも僕らには、徳川家康といえばタヌキ親父というイメージがあるね。まあ、私の中では『戦国ランス』の徳川家康の印象が強烈なんですけど。
タヌキの妖怪というのが徳川家康が脳内で出来上がってしまっていた。
これが先入観というやつだろうか。
センゴクの徳川家康
しかし、情けない武将の代名詞だった今川義元をめったくそかっこよく描き、裏切り者の明智光秀の謀反を斬新な理由で驚かせてくれた宮下英樹先生が徳川家康をタヌキのように描くだろうか?否である!
センゴクの徳川家康
めがっさかっこいいな!
『センゴク一統記』13巻はちょっとセンチメタルブルーになる賤ヶ岳の後始末も終わり、羽柴秀吉が天下人へ向けて着々と土台を固める。そこへ、いよいよ徳川家康が動き出す。小牧長久手の合戦編である。
『センゴク』の徳川家康といえば、若かりし頃は結構、後先考えない男として描かれていた。若さ故なのか初期の博打好き。また『センゴク外伝桶狭間戦記』では、今川義元と織田信長に比べれば一枚も二枚も滲み出るオーラが劣っていた感じである。。
ところがどっこい!
今の家康から溢れる「格」よ。めったくそかっこいい。明らかな成長が見てとれるね。家康の精神的な成長が1コマ1コマの何気ないやり取りからハッキリと伝わってきます。顔立ちから立ち振る舞いまで「家康は強くなった」「家康は人間として成長した」というのが一目で分かる。これは小説ではなかなか難しく、漫画だからこその可能な表現なんだなと思いますね。
大物キャラと化した家康、そして配下達の覚悟が素晴らしいの一言。
北条との停戦から羽柴に牙を向くまで、サラッと描くんですけど、そのテンポの良さから家臣達(特に酒井忠次と榊原康政と本多忠勝)の強さを描き、一気に徳川勢の存在感を見せつけてくれます。
家康の配下
描かれたのは6人。後に徳川四天王と呼ばれる4人と、家康裏切って秀吉の配下になる石川数正や熱心な一向宗で以前に三河一向一揆で家康に背いた渡辺守綱が興味深いですね。今回は先鋒を務めるし。数正なんて羽柴に相対すると聞き汗流してるし。今後も徳川家には面白いイベント目白押しやね。まあ描かれるか分からんし、そもセンゴクが歴史上でどこまでやるのか知らんけど。
羽柴へ反旗を翻すシーンが鳥肌もの。家康自体は凄く冷静にしてるの。「事ここに至り、羽柴勢と決戦と相なった」と淡々と述べ、配下達がワーと一気に盛り上げる。戦いの時が来たーって感じで。ボルテージが一気に上がるね。
で、家康は冷静かっつーと全然違う。
この辺りの描き方が上手過ぎる。ズバリ「影」である。
影
隋風とのやり取りで「(戦国大名としての)その野心、現にては隠し得ようと幽玄界でそうはまいりませぬ」と言われて家康の影がクローズアップされるんですけど、まさに家康の影こそ冷静に見える家康の中の情熱なり。情熱や野心のメタファーとして「影」を描いている。
織田信雄との会談も、勝手に盛り上がる信雄とは対照的にめっちゃ冷静な家康。でも家康の影は?圧倒的存在感で蠢いている!同じ灯なのに信雄には影は一切描かれず家康の影だけが有る。静かに、だけど確かに燃えている。冷静に情熱。徳川家康ここに有り!
対するは織田家を簒奪した羽柴秀吉!
羽柴秀吉
めちゃくちゃビビって悩んでいた。
これぞ秀吉の面白いところ。初期から主人公の権兵衛と近い立場だった事もあるんですけど、秀吉は人間くさいんですよね。織田信長や明智光秀は、はっきり言って人間を超えた神々しさというか天才というか怪物でしたけど、秀吉は今でも非常に人間くさいキャラとして描かれる。
天下人寸前なのに、小物というかカッコ悪いシーンが普通に描かれるからね。周りにはそこを見せないで天才ぶるんだけど。秀吉は普通の人の枠内で上り詰めてきたように感じる。明智光秀にも柴田勝家にも勝った。で、新怪物となった徳川家康と相反するのである。まあ、史実ではボロ敗けなんだけど。どう描くか興味深いですね。
徳川家康VS羽柴秀吉!
燃えるぜ!そして、もう1人忘れてはならないのが織田信雄。
信雄ちゃん
ダメだコイツ…。
笑えるのは信雄を見る家康の面でしょう。
冷静にまるでゴミムシを見るようなシニカルな目線。でも最高にコミカル!
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