サンデー読み切り『空をわたる生き物』（コノシマルカ）が素晴らしかった件

今週のサンデー（26号）の読み切り『空をわたる生き物』（コノシマルカ）が素晴らしかった。

物語のテーマがあって、きちんと魅せて、ニヤニヤさせて、感動させるってほぼ完ぺきな1話完結の漫画である。それでいて続きが読みたくもなる仕様。傑作だ！！

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『空をわたる生き物』レビュー

テーマがある

クラスで浮いてる見た目派手な佐々木優子が主人公。陰キャ男子の田中邦男と「生き物係」になってグッピーの世話を通じて「何か」を見つける濃厚な青春ドラマです。

その「何か」ってのは「踏み出すこと・人生・夢・生きること」である（と思う）。それを佐々木さんと田中くんとグッピーでドラマチックに描いていく。

佐々木さんはピアスをやめる

主人公の佐々木さんは派手なピアスをして見た目的にはギャル。浮いてて友達もいない。クラスメイトから援交してるんじゃないかって噂されるぐらい。彼女が学校を休んだ日に勝手に「生き物係」に任命されてました。

「生き物係」の男子はグピ男と呼ばれる田中邦男。グッピーの世話ばかりしてるからグピ男と呼ばれる陰キャでクラスで浮いた存在。

そんな2人が「生き物係」でグッピーの世話をする。初日から衝突が凄まじい。「グッピーしか友達いないグピ男と呼ばれてる」「佐々木さんだって色々言われてるくせにさ…援交してるとかさ！」ですよ。

そこで佐々木さんは自分が援交してるなんて言われてるってはじめて聞いてショックを受けるのです。翌日からピアスをつけなくなります。傷つくくらいなら…って心情が印象的。

ここで、彼女は「好きなもの」「好きなこと」をやめちゃうわけです。まわりの目を気にしちゃうって感じですね。

自分の好きなものを否定され辞める佐々木さん。

一方でグピ男こと田中くんは好きなものを否定されようがグッピーの世話を全力でしてる。

モノローグは無いけど佐々木さんには思うところがあってグッピーのお世話をきちんと手伝うようになります。この辺の変化・葛藤がすごく良いんだ。

夢

第1志望が書けない佐々木さん

佐々木さんは東京の服飾学校へ行ってオシャレの最先端を学んでデザイン関係の仕事をしたいって夢があります。

しかし、自分は田舎者なんでそんな東京のシャレオツどもが集う中で出て勝負するなんて大それた夢であるって負い目を感じてるわけです。

ギャルというかパリピ系のフレンズからは東京行っても無駄だと全否定されてしまう。自分の本当にやりたいことや夢は堂々と表に出せないネガティブな気持ちがあるわけ。「自分なんて所詮…」って思想なのが佐々木さん。

このネガティブモード思想はやっかいなもので、ある意味では一生引きずるものです。そうなると人生は楽しくないわけです。無気力になっちゃうわけです。

そんな彼女が勇気ある一歩を踏むってのがこの漫画のメインテーマであり、彼女が再びピアス全開になるまでを克明に描くのがミソ。田中くんからピアスを肯定されてピアスアゲインになる。

好きなこと・やりたいこと

ふふっ

たくさんピアスを装備すること…援交してそうな子ってまわりの声を超える、田中くんからピアスがかっこいいって感想を貰って再びピアス装備になった佐々木さんである。

佐々木さんにとっては「多数の声…ピアスたくさんなんて遊んでそう」よりも紆余曲折を得て確かな絆がある「田中の声…ピアスかっこいい」のほうが優先された瞬間でありラブコメ的にニヤリングローリングになった瞬間です。

ラストとは鮮やかな感動がある。いつのまにやら佐々木さんに感情移入している自分に気が付いた。そう、夢・希望はいくつになっても荒唐無稽なもの。まわりに言うの恥ずかしい。大笑いされたりバカにされるかもしれない。それでも…と。前向きになれる読了感。

ラブコメとしても最高な「かっこいい」

何度かニヤリングしたけど個人的に「かっこいい」は含みがある。

前から、ピアスもかっこいいなって思ってからさ…

ピアスを辞めた佐々木さんにピアス「かっこいい」と宣言した田中くんである。翌日からまわりの大多数の「パパ活してそう」を討ちばぶってまたピアスするようになった佐々木さん。

また、ピアス全開するようになった乙女表情で驚いてる佐々木さんこそヒロインの仕事をまっとうしてる。

「ピアスもかっこいい」は田中くんの一世一代の告白でもある（ような気がする）。ほぼ9割は主人公・佐々木さんで、ちょっとだけ田中くんのモノローグが描かれるんだけど、田中は「かっこいい」と佐々木にんに言ったのが全てよ。

あんまり…みんなから、必要とされる子たちじゃなかったけど。でもそれでも生きてるのが、かっこいいと思ったから…

グッピーへの愛を語りつつ、実質佐々木さんへの愛の告白である（ように見える）。最高の二やリングを叩き出したわけです。

綺麗にまとまってるようで連載でも読みたいと思わせるし、コノシマルカ先生の次回作がとても楽しみにもなる。まる。

週刊少年サンデー2022年26号感想

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yamakamu.net

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