こんなお姉ちゃん欲しかった!
「姉」と「妹」は似て非なるもの…。以前にも述べたけど、「姉道とは愛されること」である。妹道が妹を愛することならば、姉道とはお姉ちゃんに愛されることなり。お姉ちゃんに愛されたい!甘やかされたい!そんな願いを持つ人は多いでしょう。さあそこで『姉なるもの』(飯田ぽち。)だ。
天涯孤独な少年・夕はある日、美しくも冒涜的な何かと出会った。【千の仔孕む森の黒山羊】と呼ばれる「それ」に、夕は自分の姉になることを願う。すると「それ」は「千夜」と名を変えて、彼の姉になり――? クトゥルフ神話の最果てで、姉弟の愛を描く『姉なるもの』、第1巻堂々発売。
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もともとは18歳未満じゃ変えないおねショタの薄い本だった作品を(こっちも継続してます)、「電撃G'sコミック」で連載するのに合わせて全年齢対象にリライトしたのがこの『姉なるもの』です。だからとっても健全です。
『姉なるもの』とは
僕のお姉ちゃんは、悪魔だ。
幼い頃に両親を亡くした少年・夕は親戚中をたらい回しにされる生活をしていた。夕は霊感が強いせいか幽霊の類が見えてしまいそれが原因で親戚中から気味悪がられ受け入れられません。他人に興味が無い母の従弟の叔父に預かってもらい、それなりに快適に暮らしていましたが叔父が倒れてしまい入院。
家に1人残された夕は叔父から「追い出されたくなければ蔵には入らないことだ」と言いつけられていましたが、叔父の入院に必要なものを探すうちに蔵に入ってしまいます。そこで人から神とも悪魔とも呼ばれるもの【千の子孕む森の黒山羊】を呼び出してしまうのであった。それは尋ねるのです。
あなたの大事なものと引き換えに望むままを与えましょう
おしえて、あなたの願い事はなあに?
夕は死を覚悟して自分の人生に足りなかったもの、欲しかったもの…本当に欲しかったものは家族であると思い浮かべ無意識に呟くのででした。
僕の家族に―
お姉ちゃんになってください
「…へ?」と想定外の願いに面を食らった人ならざるもの。お姉ちゃんって具体的にどうすればいいのか聞けば夕は一緒にご飯食べたり家事したり本読んだりと述べつつ…「毎日一緒に暮らしてほしい……です」と。その願いは了承され、人ならざるものは「千夜」という名のお姉ちゃんとなったのです。
こうして、夕と千夜の姉弟関係がはじまるのでした。なるほど。『姉なるもの』とは、姉に成るものってわけか。温かい家族を家族愛を知らずに飢えていた少年と人間社会がよく分からない人ならざるもののお姉ちゃんによる心温まる家族もの…姉弟ものです。
温まってぽっかぽかです!
千夜のお姉ちゃんぶりが素晴らしいのです。姉道の基本であり奥義でもある「お姉ちゃんに愛される」がこれでもかと堪能できます。弟たるもの、お姉ちゃんに愛され甘やかされたいと願うのは自然の摂理です。千夜姉は最高のお姉ちゃんであります!
お姉ちゃんは弟のことを大事する
うむ。グッとくるじゃないですか。心温まるじゃないですか。夕も「本当のお姉ちゃんみたいだ…」と千夜のお姉ちゃんっぷりに家族愛や温かさを感じていました。
本当の家族愛を知らない孤独だった少年が千夜によって家族の絆ってものを知るのです。ハートフルで心がぽかぽかとなるってものです。胸の奥底がグッときますね。はじめて味わう家族の温かさを知る夕と不器用ながら一生懸命にお姉ちゃんする千夜は心の琴線に触れる。
血の繋がっていない、それどころか人間ですらない突然できた姉との2人暮らし。姉弟が一緒に暮らして「疑似家族」をすることで、「家族とは何なのか?」「姉弟とは何なのか?」「姉(弟)が好きとは?」って深い家族愛のテーマが問いかけてくる(ように見える)。
どんどんお互いが大事なんだってエピソードを積み重ねていき、絆を深めて本当の姉弟のようになっていく関係にほっこりしんみり心が温まります。あったけぇ話だ…。
そして、心と同時に体もぽっかぽかになります!
とても健全漫画です
健全です
もとが18歳未満が読めない薄い本だったとしても、全年齢向けに描き直した作品ですのでもちろん健全漫画です。千夜が触手を使って色々と敏感に攻めようとも何もおかしくない。おかしくないのだ。姉弟の戯れみたいなものです。
特筆すべきは第5夜(5話)の耳かきであろう。姉弟ならば家族ならば耳かきなんて家族間のコミュニケーションの一つですからね。誰だって母親に耳かきされたことあるでしょ。家族なら当たり前です。ただ、18歳じゃ読めない本のように断面図付きの詳細な耳かきだったけど。
いちいち千夜の弟へ対する愛情は扇情的でたぎらせてくるから困る。なんてお姉ちゃんなんだよ!ジンと心を温めるかと思えば身体のごく一部までホットにさせてくるんだから。千夜姉のおかげで心も身体もぽっかぽかに温かくなります!
意識は高い系(?)
千夜姉の怖いもの
一見すればすごく頭悪いですね(褒めてる)。お姉ちゃんにえっちぃことされる意識低い系漫画かと思いきや、同時に設定が凝ってるというかシリアスなラインを歩んでいるのも特徴です。
例えば千夜姉の怖いものは何かと聞かれて一瞬思い浮かべたもの。以前に召喚された際に人間の少女と何かあったのではないか?と読者に思わせる描写。どうやら昔なにかあったようです。またメインのストーリーラインとは別の夕のナレーションが意味深です。1話冒頭では…。
人生のうちのある時を、『姉』とともに暮らした。
彼女の優しい声が、甘い髪の匂いが、柔らかな肌の温もりが、今でもありありと思い出される。
とかなり先の未来から過去を振り返るように語られます。「ナレーションを語っている時間軸では千夜姉とは一緒に暮らしていない」「2人に何かあったのではないか」と読者が推測できるように描いてます。色々と気になります。
まあ、そんなん関係なく千夜姉はいいぞと満足しとけばOKです。
千夜姉はいいぞ
いいぞ
ふぅ…。
まだまだ人間界の常識を知らない千夜姉の言動にいても勃っても…失礼かみました。いても立ってもいられなくなる慌ただしいお姉ちゃんです。お姉ちゃんに振り回されてドキドキさせられっぱなしです。とても良いお姉ちゃんだと思いました。
弟たるものお姉ちゃんに甘やかさて愛されたいと願うものです。そういう旨味が存分に味わえます。また、千夜姉はだんだんとお姉ちゃんらしくなっていく様子もグッド。可愛い。着々と2人の絆が深まり本当の姉弟のようになる。心も体も温かくなる良いお姉ちゃん作品です。お勧め。
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス (2016-12-17)
コメント
これ最高や。
G,sコミックは大抵付録付きだから立ち読みしづらい
でも、この方ってどう考えてもヨグ…