素晴らしい!
『あまんちゅ』9巻(AA) がとにかく素晴らしかった。
あまりに素晴らしく地獄(社畜)から生還してしまった。
もうね、読後はちょっと鳥肌立ちましたもん。余韻が気持ちいいこと。気持ちいいこと。頬がニヤニヤと緩む甘さ。だけどセンチメタルブルーなね。ああ、素晴らしい。これだから漫画を読むのはやめられません。
始まりと終わりを告げる、約束の場所へ…。
9巻のオビより。
え、なに、この壮大な煽り文句。FF7の約束の地もびっくりの壮大さです。『あまんちゅ!』って「日常、ときどきダイビング」じゃないですか。まあ、最近はプラスしてときどきファンタジーだったんだけど。
私は、日常とダイビング回は好きだなんですけど、たまに炸裂するファンタジー回がどうもね。イマイチというか。心の琴線に触れませんでした。
で、9巻読後に思ったわけですよ。まいりました、と。白旗を上げたわけです。何度も言うけど、本当に素晴らしい。
何が凄いって、ストーリー構成と伏線の回収と完成度の高さ。もう完璧っすわ。9巻読んだ後に、6巻から読み直したのはオレだけじゃないでしょう。9巻だけでも、1つの名作映画を観たような感動と完成度である。
(ここから壮絶なネタバレです。自己責任でどうぞ)
9巻は最高です!
9巻1話目に収録されているのは49話「あったか注意報」。
真斗ちゃん先生と姉ちゃん先輩の担任(永久野先生)が飲みに行く話である。
永遠野先生がボーっとしてるので、真斗ちゃん先生が飲みに誘い、永遠野先生の悩みを聞くというもの。何だか最近難しい顔をしている永遠野先生の悩みというのが、「ずっと気になってる人がいまして、最近その人が自分の好きな人だったって発覚しちゃったんですよ」だとか。で、その永遠野先生の好きな人を問い詰めてたら、俺の好きな人は―
49話、あったか注意報
なにこのラブロマンス。
永遠野先生の好きな人は、真斗ちゃん先生だったわけである。
いきなり告白された真斗ちゃん先生の赤面っぷりをニヤニヤと楽しむエピソードであった。
というか、W主人公のてこもぴかりも1コマも登場しないのな。何の前触れもなく始まった、教師同士のラブロマンス。この唐突にはじまった教師同士のラブロマンスが、実は9巻に収録されている53話「迷い人」から55話「ピーターパンの帰還」に繋がり、見事に収束するというね。単行本漫画というものの完成度を極めていた。
読み進めよう。
53話「迷い人」から始まる流れが本当に本当に素晴らしい。胸が暑くなったんだ。
ネバーランド
ピーター再び!
6巻収録の34話「前夜祭」、35話「永遠の国」で登場したピーターが再登場しました。しかも若い頃の真斗ちゃん先生まで。着てる制服がまんま『浪漫倶楽部』の夢ヶ丘中学校の制服です。
このネバーランドは、神社に捨てられた赤子が見ている夢の世界。赤子が現実世界に見ている人の夢を通して伝えられた情報や記憶を見聞して成長したのが今のピーターなんだとか。もう完全にピーターパンの世界である。
まあ天野こずえ先生はピーターパンが大好きなのでしょう。『あまんちゅ』をはじめ、過去作でもピーターパンを題材に扱ったエピソードは数多くあります。そして『あまんちゅ!』9巻は、天野版真説ピーターパンだったのである。
ピーターパンのラストってご存知でしょうか。
ピーターは、ウェンディの誘い(養子になること)を断り、ネバーランドから離れない永遠の子供で居続けるのである。大人になんかなりたくない!ウェンディはピーターパンを説得できなかったのである。
そして、ウェンディが大人になり、娘のジェーンがピーターパンに連れられネバーランドへ。ウェンディがお祖母ちゃんになり、孫娘のマーガレットがネバーランドへ。マーガレットが大人になれば、娘ができて、順番でピーターのお母さんになるでしょう。それはいつまでも続いて行くことでしょう。子ども達が陽気でむじゃきで残酷であるかぎり。
だ・け・ど!
『あまんちゅ!』のウェンディは一味違うぜ!
ピーターを誘いもしません。
このウェンディは一味違う
このウェンディ(真斗ちゃん先生)はピーターに対して「ずっと私だけは、お前の傍にいてやるっ!」とか言い出すわけです。
ほうっとね。確かに、ピーターパンもきっとウェンディからこのセリフを言われたかったことでしょう。『あまんちゅ!』のピーターも噛みしめるように「ありがとう」と。でも、「さよなら」である。
プラスして、ほぼ確実に真斗ちゃん先生は『浪漫倶楽部』の真斗姉ちゃんだったわけである。高校生の火鳥真斗である。ピーターと出会うの2年ぶりで高校生。てことは、どう考えても『浪漫倶楽部』の真斗姉ちゃんはピーターと出会っていたわけである。
『浪漫倶楽部』の真斗ちゃん
弟が、不思議なモノが見える第2の瞳(セカンドサイト)を持ち、妙な現象や謎を解明する浪漫倶楽部をやっていたけど、弟にピーターの事を何の相談もしなかった。
この頃の真斗姉ちゃんは本音は隠しているという設定だったけど、こんな秘密があったとはね。ピーターの事は自分で解決させるってところか。胸熱だよね。
んで、『あまんちゅ!』版ピーターパン完結…では、なかった!
ウェンディはもう1人いた。姉ちゃん先輩である。
もう1人のウェンディ
「ねぇ、一緒に目を覚まそうよピーター!
ほほうっとね。
確かに、ピーターパンはウェンディから同じ解釈のようなセリフを言われた。でも、ピーターパンはいつまでも子供でいる事を選んだ。
「下がって、だれもぼくをつかまえて大人になんてできないんだ」である。ネバーランドから離れなかった。ウェンディの説得も虚しく、永遠の子供でいる事を選んだ。
だ・け・ど!
このウェンディ2号は説得を成功させたのである。
説得成功です!
ピーターパンは起きた。
「完」である。素晴らしいラストと言っていいでしょう。
だがしかーし!
まだだ、まだ終わらんよ!と畳み掛けるように、その後の結末が描かれた。
第55話「ピーターパンの帰還」。不思議な夢の世界、ネバーランドにいたピーターパンの正体は、永遠野先生だったわけだ。
おっさんになったピーターパン
すんばらしいぃぃぃぃ!
声を大にして叫んだものです。
まさかのピーターパンの正体。ここまで読んで、9巻1話目の「あったか注意報(49話)」からの流れが見事に繋がったわけです。いやはや、感動的ですらありますね。真斗ちゃん先生と永遠野先生のやり取りに、ラブコメハンターの私も大満足です。
特に、お互いがネバーランドを思い出し再会した後のやり取りな。
真斗ちゃん先生が「何ですぐに話してくれなかったー!」と永遠野先生のヒゲをぶちっと抜くのがね。いいんだ。
いかに天野こずえ先生が原作のピーターパンが好きだったかというのが伝わってきます。というのもピーターパンはウェンディの両親の養子になる事を拒んだシーンがヒゲだったからだよね。
ピーターパン「すぐに大人になる?」
ウェンディママ「ええ、すぐにね」
ピーターパン「学校に行って、かしこまって勉強なんかしたくないね。大人になんてなりたくない。もし僕が朝起きてヒゲがあったりしたら!」
ウェンディ「ピーター…ヒゲのあなたも好きよ」
そしてママは、両手をピーターの方に伸ばしましたが、ピーターは拒否しました。
これな。
ヒゲになったピーターパンとウェンディの天野こずえ版真説ピーターパンの結末が僕の心の琴線を鷲掴みにしました。微笑ましくニヤニヤしちゃうじゃないの。ヒゲになったピーターパンも素敵だったね。
僕は思うのですよ。
真斗ちゃん先生はどうしてだいダイビングやってるんでしょうね。真斗ちゃん先生が何時からダイビングやってるかは、作中で描かれてません。『浪漫倶楽部』の真斗姉ちゃんもダイビングやってる感じは見受けられないしね。ネバーランドはこのままでは水没するらしい…。
このままでは水没するらしい
真斗ちゃんは、水没したネバーランドでもピーターに会えるように、ダイビングをはじめたという可能性が微粒子レベルで存在する?
でも、何よりも素晴らしかったのはウェンディ2号、姉ちゃん先輩であろう。
もうね、恋する乙女っぷりがヤバイ。可愛すぎる。
もうネバーランドはお終い。
ピーターが強制的に終わらせたネバーランド、夢の世界へ根性という名の愛で戻ってきた姉ちゃん先輩である。なんで戻って来れたかって?「んなの、あんたが好きだからに決まってるでしょ!」ときたものです。恋する乙女の奇跡です。普通のラブコメならフラグも立ちまくりで結ばれるものと思うでしょう。
あんたが好きだからに決まってるでしょ!!
か、ら、の~!
姉ちゃん先輩…(´;ω;`)ブワッ
泣けましたなぁ。
「絶対に忘れない!」「たとえおばあちゃんになっても私がピーターを探しだしてみせる」「約束だよ、絶対に、また逢おう!」と言って別れた後の再会。
もうね、どう考えても姉ちゃん先輩こそがピーターのフラグ立ちまくっていると思うじゃないですか。
「約束―…したでしょ!」って、約束したのは姉ちゃん先輩とピーターの再会で、真斗ちゃん先生は、別にこれといって約束なんてしてなかったでしょーが。それなのに、美味しい所を全て譲って去る姉ちゃん先輩に胸がね、熱くなったんだ。
僕の中の姉ちゃん先輩株が一気に跳ね上がったものです。
思い返せば15話「ラブレター」で、間違って姉ちゃん先輩がラブレターを貰った時は「自分の気持ちを誰かに伝えるのって、ものすごくパワーがいることよね偉いわ!」「私、がんばってる奴を見ると、つい嬉しくなっちゃうのよ!」と言ってたのに。自分が頑張ってパワーを使い、恋敗れるなんてね。
しかし、天野先生は話を作るのが本当に上手い。
私は、9巻読んでから、『あまんちゅ!』を1巻から読み返したわけですけど、その伏線の貼り方と回収の仕方にただただ脱帽するばかりです。
ピーターが初登場した34話『前夜祭』。
これは、天野こずえ先生のデビュー作『夢空界(AA)』に収録されている、『前夜祭』のセルフオマージュである。サブタイも一緒で、2人の幽霊の少女が普通に『あまんちゅ!』にも出ていたりする。
『前夜祭』 / 『あまんちゅ!』
デビュー作の幽霊の2人の少女を『あまんちゅ!』で、ピーターパンのエピソードで再登場させる。
僕は思うのですよ。
天野こずえ先生は、『あまんちゅ!』9巻収録の「迷い人」「始まりの場所」「天より降るもの」「ピーターパンの帰還」における一連のピーターパンのエピソードをずっとずっと、それこそデビュー当時から描きたかったのではないか、と。そして、見事な完成度で描き切ったピーターパンのお話。
きれいな伏線のはり方、完璧な回収っぷりを見て、脱帽するしかありません。いつから、このエピソードを考えていたかって?そんなん最初からに決まってんでしょーが。読み返して改めて気づく、鳥肌が立つような伏線&回収の見事なコンボ。
例えば、ピーターが目覚め、成長し永遠野先生が自分がピーターである事を思い出す、姉ちゃん先輩の鮮やかな水色ストライプおパンツ(縞パン)のエピソード46話「北風のイタズラ」。この時の永遠野先生は、確かに姉ちゃん先輩のおパンツを見て意味深な表情をしてました。いや、それ以前に46の扉絵よ。
34話「前夜祭」ラスト / 46話「北風のイタズラ」扉絵
あっ…(察し)!
今読み返すと分かる。
初めてピーターが登場した「前夜祭」のラストのピーターに手を引っ張られる姉ちゃん先輩。そして46話の扉絵、スカートを履き忘れ青白の縞パンを晒した姉ちゃん先輩を担任が引っ張る姿が瓜二つであるというね。
もうね、やられました。
天野こずえ先生は、ずっと前から姉ちゃん先輩の担任がピーターである事を考えていたことでしょう。そのヒントがそこら中に描かれていました。そして、9巻で点と点が繋がり、見事に線になるのであった。ただただ脱帽する素晴らしいエピソードであった。
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