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『この靴しりませんか? 完全版』、素晴らしき百合物語


この靴しりませんか? 完全版 (書籍扱い楽園コミックス)
 

『この靴しりませんか?』完全版が出たぞー!

『14歳の恋』の水谷フーカ先生の百合作品集なり。これめっちゃ好きなんですよ。旧版も紹介しましたけど、新たに描き下ろしもあるので、無印版を持っている人も買いじゃないでしょうか。改めて読み返しても素晴らしいの一言です。

 

童話をモチーフに描いた5本のガールズラブ作品集が描きおろし12pを加え完全版で登場。ほんのりふんわかな水谷ワールド全開!な物語の数々をお楽しみください。

 

収録されているのは「この靴しりませんか?」「オオカミの憂鬱」「あたしのアヒルの子」「雪のお姫さま」「はみだし音楽隊」「その後の音楽隊」「金の靴
銀の靴」「curtain call」の8作品収録。イチャラブする系の百合というよりはほんのり染みるソフト百合作品なり。

 

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ニヤニヤが止まらない!

■「この靴しりませんか?」「金の靴 銀の靴」

表題作にもなっている「この靴しりませんか?」と「金の靴 銀の靴」は対になっています。別々の女の子を主人公にして、それぞれの視点で同じ結末へ向かう過程を楽しむものなり。おとぎ話をモチーフにしているようなので『シンデレラ』ですな。

 

簡単に説明すると、歯医者さんで靴が片方入れ替わってしまい、靴の持ち主を探すうちにどんな人だろうと想像するように。いつの間にか、顔も知らない靴の持ち主に会いたいと思うようになる。それはさながら片想いのようであった。そして出会う2人…というもの。「この靴しりませんか?」と「金の靴 銀の靴」で、両者が相手に「会いたい」と思う想いは同じでニヤニヤしてしまう。


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 この靴しりませんか?

 

ようやく出会えた2人。まさに運命の恋い焦がれてた人に出会う様子が実に良い。「運命の糸、運命の人」というオビの通り。靴の描写から水谷フーカラスト(1ページ丸々使った2人きり)と見所満載です。「この靴しりませんか?」と「金の靴 銀の靴」を2つの視点で読み比べると倍愛おし。出会えた奇跡を堪能するのみ。

 

■「オオカミの憂鬱」

モチーフは『赤ずきん』。エレベーターガールの桜井さんは女性を落とすプロフェッショナル。桜井さんが微笑みかければエレベーターに乗ってる女の子たちはみんなときめくのである。そこへゴスロリ女の子が現れ、桜井さんの魔性の微笑みが一切通用せず。絶対に落とすと頑張り気付けば自分が落ちてた…というね。はい、基本プロットは『GAME
OVER』のほとんどそのまんまです。

 

『GAME OVER』のオマージュ的な作品。桜井さんの造詣も美人OLの朱美さんそっくりですし。何が素晴らしいって、いい年した大人の女性が幼い女の子に振り回されて赤面する姿がどツボに嵌るというものですよ!もう最高にニヤニヤするっちゅーの。


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最高にニヤニヤする
 

一見クールビューティーの大人な女性に見えて、ギャップ萌えを際立たせる可愛い一面よ。『14歳の恋』の日野原先生もそうだけど、水谷フーカ先生の描く、年下にハワハワする大人の女性はどうして俺の心の琴線を鷲掴みにするんですか!ラストはニヤリング&ローリングで身悶え3回転半を記録する。

 

■「あたしのアヒルの子」

モチーフは『みにくいアヒルの子』。自分に懐いていた、幼なじみは地味な冴えない女の子だけど、本当は可愛い女の子だった…というもの。

 

自分がいないとダメだから守って上げないとと思ってた地味な幼なじみですが、白鳥となって飛び立つ時に気付くのでした。本当は「飛び立てなかったのは私のせいかもしれない」「ただ自分の元に留めておきたかっただけ」であると。それに気付いてからの葛藤からのハッピーエンドは控えめに言って最高でしたね。

 

個人的キモは3つの握手かな。


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握手
 

幼少の頃にずっと側にいると約束した握手、実は偉ぶって自分の元に留めておきたいだけだと気付き、手を放す描写、そしてもう一度握手…と作中で3回の握手がある。今までは手を引いてたんだけど、ラストの握手が手をきちんと握り合ってんだから最高だよ。うん。

 

■「雪のお姫さま」

看板女優だけど愛想がよくない人見知りの河合マナと客演の広木翔子。役作りの為にしばらく一緒に行動する事になり、マナは翔子に段々と惹かれて好きになってしまう。しかし、翔子はメガネ屋さんの店員に一目惚れしてしまう…というもの。

 

モチーフである『雪の女王』を演劇でやるんですけど、まあ見事に漫画とシンクロしてします。仲良しのカイ役の翔子が取られてしまい、取り戻そうとするゲルダ役のマナ。立ち位置から台詞から展開までリンクして身震いしました。特に演劇中のマナの台詞はどこまで演技なのか本当に分からなかったです。


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どこまで演技なんだ? 
 

演じるのは役、でも感情は本物、台詞は言わされるものじゃなくて言うもの。もう最高だよ。役を演じているんだけど、感情も台詞も間違いなく本物である。でも、本当に素晴らしいのはラストかな。ここまでモチーフの『雪の女王』とシンクロさせて最後の最後は違う顛末なり。水谷フーカラスト(1ページ丸々使った2人きり)なんだけど、2人だけの世界なんだけど…!そうきたかーっ!

 

■「はみだし音楽隊」「その後の音楽隊」

『ブレーメン音楽隊』をモチーフにしたもの。吹奏楽部の落ちこぼれ4人衆が、お世話になった先生が寿退社するので演奏して恩返しようとする話。また、登場キャラが見事なまでに愛情が横滑りするオール片想いである。

 

ラブがコメる描写はないけど好きな作品です。

水谷フーカ先生の描くキャラ…とりわけ表情は本当に素晴らしい。可愛く活き活きしている。豊かな表情には味わいがあります。そんな表情を余すことなく楽しめたのが今作なり。演奏時の表情がツボですよ。


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この表情よ
 

顔芸も良いんですけど、楽しそうな表情が格別。

読んでるこっちまで楽しい気分にさせてくれる楽しい表情なんですよね。もうね、表情だけで幸福度を跳ね上がらせてくれる。そんなすばらな表情!それが水谷フーコ表情

■「curtain call」

 

どのエピソードも満足なんですけど、満腹なんですけど!それでも飢餓状態になってしまう。続きを読んでみたい!

 

この先の2人はどーなったのかと思うんです。そんな願望を叶えてくれたのが、今回描きおろされた「curtain call」なり。

 

その後のエピソードと、この短編集が全て同じ街の出来事だったと分かる物語を繋ぐものでした。でも、さらに飢餓状態になる仕様なんだが…。
今日もこの街のどこかで、童話のように女の子たちの物語がはじまる事でしょう。素晴らしい短編集でした。まる。

 

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