わたしを好きな、わたしの先輩。
女の子同士の百合漫画です。まあ、ご存じのように(?)、僕は百合漫画のコーヒーに甘い甘い砂糖ドバドバ入れたシュガーたっぷりなのが好きである。
とはいえ、逆に思わず胃がキリキリしてしまうノンシュガーな苦いのもいける口です。「胸キュン」も「胸イタ」も好きなのだ。でだ。この「やがて君になる」は甘いのか苦いのか、「胸キュン」なのか「胸イタ」なのかっつーと、どっちでもない!
好きを知らない少女が出会う、一筋縄ではいかない―女の子同士の恋愛。恋する気持ちがわからず悩みを抱える侑は、先輩・燈子が告白を受ける場面に出会う。誰からの告白にも心を動かされないという燈子に共感を覚える侑だが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。「君のことが好き」
人を好きになる気持ちが分からない主人公・侑と、自分と同じで人を好きになる気持ちを知らないと思っていた先輩・七海燈子に惚れられてしまうというもの。
丁寧にキャラを掘り下げる
起伏の幅はあまりないけど、キャラの内面をゆっくり丁寧に描く百合漫画なり。
ジャンル分けすると女性向け百合漫画かな(俺の独断と偏見で男性向け百合はキャキャウフフ、女性向け百合は身体的接触より内面重視)。
だって私君のこと好きになりそう
まず上げるべき点は雰囲気というか空気感。
淡々と静かに話は展開していく。
2話まで読んでほとんど味がしなかった。僕は恋愛漫画はどっぷり感情移入しながら読むクチなので感情を乗せられなかった。萌え萌えもニヤニヤもキュンキュンもイタイタもできなかったわけ。雰囲気を楽しむ作品かなと思ったものです。
1話で侑は、友達と昼食取ってると1人だけ机が離れたり、移動中の廊下でも距離を感じたり、中学の卒業式で男子に告白されると動いてないのに2人が遠くなったり…と、心の距離のようなものを物理的に表現される。
「人に恋する気持ち」が分からない侑の内面が出てた。この辺りの繊細な心情の雰囲気や空気感は素晴らしい。でも、感情が乗せられなかった。あんま可愛いと思わなかった。
ところが3話で自分の中の侑の評価が一変する。
3話
燈子先輩に対して「ずるい」と思った侑。
確かに燈子先輩はずるいのです。
好きだけど付き合ってとは言わないから好きでいさせてとか断れないような事言っちゃう「ずるい」である。
言葉にしなくても侑が燈子先輩を思い浮かべたり、やり取りする時には、「ずるい」という枕詞がある。燈子先輩の相棒沙弥香先輩も「ずるいんだから」と言っていた。
ずるいんですよ燈子先輩は!ただ、この「ずるい」はいい意味。「もうしょうがないな」という意味の「ずるい」。思わず許しちゃう「ずるい」。
が、3話で燈子先輩が「人に恋する気持ち」を分からないと言っていたのに、手を握ったくらいで赤面してしまう様に「ずるい」と言った時は明らかに意味合いが違った。
「羨ましい」「妬ましい」という意味の「ずるい」である。
嫉妬や怨嗟。ヤキモチみたいなもの。許さない「ずるい」。
ここで考えを改めたね。感情表現少ない、恋愛不感症、無気力…と思っていた侑は恋する乙女なのではないかと。
人じゃなくて、「人に恋する事」に片想いしている。憧れてるのでなく本気で恋してる。恋い焦がれていると。そう考えると自分の中の侑のキャラが一段高まった。可愛いやん。
そして『やがて君になる』のキモは燈子先輩の可愛さに尽きる。
燈子先輩
めったくそ可愛いな!
なにこの娘!
可愛い。やばい。
可愛すぎる。
はじめて恋をした燈子先輩の一挙一動の手さぐりな不器用さ。照れ照れですよ。この破壊力はヤバイ。
ジュースの回し飲みで、1人ふと関節キスを意識する。可愛すぎ。それをサラッと描くのがまたニクイね。とっくにデレてんのに「デレデレ」ではなく「テレテレ」なのだ。
濁点1つ違うだけでまったく違う。
ポルトガル語とスペイン語ぐらい違う。似てるけど通じるけど違うのだ!
凄い逸材がいたものだ。最初こそ見た目で大人なクールビューティーかと思ったものの。その実、恋に関しちゃてんでお子様なの。
全然上手に出来ないの。超可愛いの。
普段はキリッとした出来る女性なのに、こと恋に関しちゃ全然ダメダメなの。ギャップに打ち抜かれたね。私のハートを鷲掴みです。また、燈子先輩は単体でも最上なのに、他キャラまで光らせるってんだから。
燈子先輩と侑
例えるなら侑は水なんです。
あんま味とか無いわけ。水単体で飲んでも美味しくないっしょ?
で、燈子先輩はラーメンなんです。
その心は!ラーメン食ってる時に飲む水は凄く美味いじゃん!ラーメンの燈子先輩は単体でも美味いのですが、水を美味しくさせる効果がある。水と一緒だと熱々ラーメンの食も進む進む。これ相乗効果なり!両者の魅力を引き立てる引き立てる。
燈子先輩は味の無いキャラを輝かす太陽。
これの使い手はあだち充先生かな。
無味無臭の味のないキャラをまわりで美味い味にする。
いまいちパンチの弱い主人公がまわりのおかげで光る。そして自身も輝く。月と太陽です。燈子先輩は太陽拳のように光輝いてるよ。眩しすぎ!
燈子先輩は太陽なんです
燈子先輩は光り輝くな!
おそらく作者は意図して恋を知った燈子先輩を夜空の星、恋を知らない侑は地球から星を眺めるような比喩を使って描いている。
地球から見える星はなぜ光り輝いて見えるかといえば恒星だから。ぶっちゃければ、地球から見える星はほぼ全て太陽のようなものだ。
この輝きに照らされればね。アレフガルドのような暗闇の侑だって光を照らしてくれる事でしょう(今後どうなるか知らんけど)。だから燈子先輩は太陽なのだ。
つまり何が言いたいかと言えば…。
燈子先輩は神々しく輝く可愛さ(←これが言いたかった)
しかし『やがて君になる』ってタイトル意味深すぎ。
やがて「好き」になるじゃなくて「君」って…。1巻読んだ感じだと、侑を「君」と呼ぶ燈子先輩の為のタイトルに思えるけど辻褄が合わん。
君とは燈子先輩から侑でなく、侑から燈子先輩をみた「君」なのだろうか。謎である。
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