ご存知のように(?)僕はあだち充作品が大好きである。
超スローペースに話を転げる絶妙の「間」、ツボにハマると頬を緩めてニヤニヤしてしまうラブのコメりっぷり、野球やボクシングの試合中なのに唐突に繰り広げられる水着などのお色気シーン。
不定期連載と銘打った「-浅丘高校野球部日誌- オーバーフェンス」は無かった事になった状態ですけど、あだち充先生は現在ゲッサンで「MIX」という野球漫画を連載中である。
「クロスゲーム」で野球漫画はラストになるような事をインタビューで述べてたので、実に嬉しい限りである。そしてコレが最高なんだ。だってさ「タッチ」の26年後、舞台は明青学園。
MIXはタッチのそんぼ後…
主な登場人物は以下の通りである。
立花投馬
「MIX」の主人公である。明青中2年生。走一朗の義理の弟で、義妹である音美をほのかに異性として意識している感じ。驚くほどの豪速球を投げるんだけどポジションはサード。
立花走一郎
「MIX」の主人公2である。投馬の義兄にあたる。明青中2年生。投手への未練がある様子が伺える?ポジションはキャッチャー。いつか車に撥ねられる可能性が微レ存?
立花音美
「MIX」のヒロイン。明青中1年生。投馬の義理の弟で、走一郎の実妹。マネージャーでなく吹奏楽部に所属しているようだ。いつか音美を甲子園に連れて行ってという可能性が微レ存。
ふむ、なかなか面白い立ち位置ですね。
立花兄妹は、親の連れ子同士の再婚で走一朗と音美は実の兄妹で投馬とは血が繋がっていません。なるほど、ヒロインは義妹か。オーケー、オーケー。「みゆき」でも義妹最高となったしね。しかも実の兄・走一郎が恋のライバルになる事は無いしね。
で、この「MIX」はめがっさ僕の心の琴線に触れる。
まだまだ序盤で中学時代なんだけど、既に僕の中で傑作確定です。
実力無く練習もしないエースで四番の嫌な先輩のせいで、投手になれない投馬という図式もいい。今後投手になれるのかという興味が湧く。
何よりも「MIX」はやっぱりあだち漫画なのである。
あだち漫画の真髄はその「手抜きっぷり」が挙げられる。
それが絶妙な「間」を演出してしまうのだ。特に意味も必要性もないのにやたらと「背景」のワンカットをこれでもかと挿入する。
背景ばっかだよ!
ひたすらシーンの間に「背景」を描きまくる。
おいおい、これ絶対アシが描いてるだろ。月刊になっても相変わらずの手抜きっぷりだなと思うのが通常である。しかし、あだち充先生がこの背景ばっか描く演出をすると絶妙の「間」が生まれているのである。
特に物語性に必要があるとも思えませんが、あだち漫画ではこの背景が絶妙な演出をするのです。青い空、木々、町並み…1シーンを何度も挟む事でじつにマッタリした雰囲気にさせてくれる。事実、背景挟みすぎてストーリーが進むの超遅いんだけどな!
またコピーの多様も外せません。
どう見てもコピーです。本当にありがとう御座いました。
どこかで見たことあるぞこのコマ。
作中でも「コマの使い回しはほどほどに…」と自虐ネタを挟む程である。コピーなど使えば叩かれるのが通常である。
しかし、あだち漫画ではコピーの多用も許されるどころが、以前に見たコマを再度使う事で、まるで「時が動いていない」かのような演出となってしまうのだ。
物語は進んでも「同じコマ」を使うことで、時が動いてないかのように思える。これが話の進み方がゆっくりになるのです。シナリオがスローペースに思える。まあ、実際にスローペースなんだけどな!
素晴らしきマッタリ加減である。
スローペースでマッタリです。ジックリ味わうには適している。ゆっくり時が進むのがあだち充先生の真骨頂です。「MIX」はそういう意味ではまさにあだち漫画なのです。
でだ。
「MIX」ではやっぱり「タッチ」の正統派続編であるとうシーンがあるのがいい。往年のファンを何度もニヤニヤさせてくれる。例えば5話では明青学園高等部の紹介があるんですけど、そこでの1シーンがね、いいんだ。
ニヤニヤさせてくれるぜ
明青学園高等部、その昔たった一度の甲子園…
そして「日本一」というナレーションで甲子園優勝皿が描かれる。
そこには「1、上杉達也」「2、松平孝太郎」とか書かれてるわけですよ。
グッときますね。
「MIX」の設定上では大昔(26年前)に明青学園高校はたった1回だけ甲子園に出場して優勝して、以降は甲子園出場に至っていないというのだ。
ん、まあ、「KATSU!」というボクシング漫画で「剛腕、上杉を擁し全国制覇して以来、じつに16年ぶりの甲子園出場は一塁側、東東京代表明青学園」(4巻)とあった気がするけど。
あだち充ワールドは全部同じ世界観がウリだった気がするけど。細けぇ事はいいだよ!誕生日ミスも「おっと、エラーだ!」でサラッと流すのがあだち漫画である。
相変わらずのスローペースにヤキモキもしつつ、先が楽しみすぎるのですよ。2巻では、さらににくい演出のオンパレードです。飼い殺しにされてる投馬を西条高校がスカウトに来るっていう。ご存知、上杉兄弟1年時の最大のライバル校です。
さらにだ。幸運にも恵まれなんとか、どうにか、こうにか…ブロック代表を勝ち進んで都大会出場。その都大会一回戦で当たった水神のエースがね、胸が熱くなるんだ。
水神中のエース
早いストレート、そして超一級のカーブを駆使する西村拓味。
どう見ても西村勇の息子です!本当にありがとうございました!こいつは燃えるぜ。
中学2年、初対決は屈辱のコールド負けを食らってしまった。
西村Jrが登板してからは1点も取れなかった。西村Jr、立花兄弟と同じ年である。
これは今後もライバルとして登場するのだろう。熱いぜ!高校は親父と同じ勢南高校に進学するのだろうか。親父が果たせなかった甲子園出場を叶えて欲しいもですね。
しかも、親父と同じ三枚目顔なのに三枚目キャラじゃねぇ!
西村Jrなのに三枚目キャラじゃねぇ
なんだこの大物の風格は!
完全にボスキャラなんですけど。
大物の風格をまざまざと見せつけてくれた。
親父は顔もキャラも三枚目だったのに、息子はキャラだけは大物である。西村のくせにカッコイイです。
何よりもキモはラブがコメる雰囲気です。
やっぱり僕はあだち充先生が描くラブがコメり出す流れが大好きなんですよね。
投馬と音美の義理の兄妹のラブコメ…大期待です。
期待大である
義妹・音美は今では明るく愛想いい誰からも好かれる性格ですけど、それは投馬のおかげ。子供の頃は人見知りだったけど、胸温まる出来事でそれを克服。ふむ、既に惚れてる可能性高しである。
どっちもハッキリ好意を示さない。
この「煮え切らなさ」が絶妙なのです。
これこそあだちラブコメなのです。
昨今の直ぐ惚れるちょろいヒロインとは一味違うぜ(それはそれで大好きだが)。
まあ、あだち作品のヒロインも基本ちょろいんですけど、特筆すべきはちょろさを見せないのである。
ぶっちゃければ、ヒロインが「赤面」しないのだ。
「赤面を制する者がラブコメを制する」と言われるのがラブコメのフィールドです。女の子が最も輝くのは赤面です。にも関わらず、ヒロインの赤面無しでラブコメを制し続けていたのがあだち充先生なのである。
一読で分かる。
どう見ても惚れてるよねっていうのが。
義兄の投球を見守るの図
音美は絶対に義兄・投馬が子供の頃から好きだったというのが手に取るように分かるよ。
赤面を描かなくても最高の好感っぷりを描く。あだち充先生はまじで天才だと思うわけです。
また、子供の頃と性格変わったのも「投ちゃんのおかげだね」と述べた後の後ろ姿を見つめる表情が素晴らしい。グッとくる。
そして何よりもヒロイン・音美の可愛さよ。
あだち充作品のヒロインは可愛い。くそ可愛い。
この「可愛い」というのは、今風のブヒるとか萌えるとは違うのです。
80年から変わらない「可愛さ」を提供してくれる。
あだち漫画ヒロインの「可愛さ」を語源化させるのは難しい。あえて述べるなら…。
あだち漫画ヒロインの可愛さを語源化させるとなると…
ムフッ
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コメント
ないないないありえない。
タッチが名作だったのは弟の死が衝撃的だったからだから。
今の読者はそれ意識して読んでるから兄弟のどっちか死んでも予想済みだし、二番煎じだし。
今のままなら名作にはならない。
あえて死なすなら妹のほうかな?