少女漫画であった。それも120%の。
私が子供の頃は、クラスの女子は見えない壁で二分されていた。
りぼん派となかよし派である。うっかり、りぼん派がなかよ派に『ママレードボーイ』や『ときめきトゥナイト』の話題を出そうものなら、ダイヤモンドダストのように凍りついた。逆に、なかよ派がりぼん派に『ミラクルガールズ』や『セーラームーン』の話題をすれば、絶対零度となった。
この二派は決して相容れず、さながらソ連とアメリカの冷戦状態であった。雪解けは谷川史子先生だった。
なかよし派も「谷川史子だけは認める」(←何を?)と一定の譲歩をし、双方は歩みよった。冷戦は終結したのだ。クラスの女子は一つの時代を克服し新たな時代へ進んだ。我がクラスのマルタ会談である。
読むと幸福になれる!
そう、谷川史子作品は誰が読んでも柔らかくポカポカと幸せな気持ちにさせてくれたのだ。それは青年誌やレディース誌に移っても健在であり、『清々と』は超ピュアピュアで超キュンキュンし超ポカポカと幸せな気持ちになる。これが堂々の完結である。足掛け7年、3&4巻同時発売。
もうね、本当に素晴らしかった。
清々と
乙女であった。
本八幡先生に恋する少女・田中清ちゃんの片想いの物語。
青年誌で連載してたんですけど、完全無欠の少女漫画でした。
めちゃくちゃ胸キュンするというものです。
田中清ちゃんの不器用なジタバタした恋愛模様。
これ究極なり。
不器用だけど真っ直ぐだから気持ちが良いのである。本八幡先生が好きだという真っ直ぐさ。何よりも温かさの感じさせてくれる、微笑ましいぐらいの人間関係が素晴らしい。実に素晴らしい。
3巻では文化祭を成功させ、進路を決める話から物語は一気に加速する。横恋慕の星野くん、そして不穏な雰囲気になる友人同士。ああ、これは真っ直ぐ純粋なピュアピュアな少女の成長物語なんだ。
微笑ましい不器用なジタバタ感が、後半の感情がぶちまけられるぐらい溢れ出す流れに、ただただめり込むし、胸がキュンとなるってもの。
何よりも、全てが田中清の世界だけしか描かれない。
最近流行りの鉄板の青春群像ではない。
もちろん、清ちゃんの周りの人は与り知らない所で動いてるんだけど会話だけ。
心情の吐露は清ちゃん1人しかしない。
本八幡先生
だから本八幡先生は本当はどう思ってたのかは謎。
毎回、清ちゃんの心情は一杯一杯で溢れ出してるんだけど、他の人は分からない。
本八幡先生も同様で心情を見せぬようにしている。
だから言葉で述べた部分と仕草や表情でしか知る術がない。
読み手の解釈に任されている
秘すれば花とういうやつか。モチのロンで本八幡先生は清ちゃんのことを、好きだろうし、大事だろうし、特別な人なんだろうけど、「生徒」としてか「異性」としてかは曖昧なままなのである。だからこれは片想いの話なのである。
本八幡先生の語り
終盤、天然で何を考えてるか分からない本八幡が色々と語る。
心情を推し量るような微妙な距離感というか仮面が外れる。
ああ、これは清ちゃんだけでなく、本八幡先生の成長譚でもあったのかと分かる。
でも、結局肝心な所は描かない。見せずに魅せるのだ。
故に、解釈は多様である。
読後の気持ちよさはスゴイ。
ラストは本当に素晴らしかったよ。
王道のど真ん中のストレート。過程を丁寧に丁寧に描いたからこそ万感のラストにグッとくるね。甘酸っぱい青春であった。読後に、心がポカポカと温かくなり大変気持ちが良い。心が浄化される。今日は良い夢が見れそうだ。まる。
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