踏切漫画…そういうのもあるのか!
『踏切時間』(里好)を読了しました。基本的に踏切でダベるだけの作品です。それなのにこれがなかなかどうして。面白かったです。オムニバス形式で青春としてもギャグとしてもニヤリングとしても素晴らしい。
【踏切】とそこで足止めされる女の子たちを描くオムニバス日常ショート。カンカンをBGMに繰り広げられる小宇宙なドラマの数々。女子高生同士の甘酸っぱいやりとりや、小学生たちの間で噂されるオカルト話、踏み切りに佇む色っぽいお姉さんに憧れる男心など、踏切好きにはたまらないシチュエーションで贈る、オール踏切!!
<試し読みできます>
タイトル『踏切時間』の通り、カンカンと鳴り響く踏切で待ってる人にスポットを当てたショートオムニバス漫画(シリーズ続編もあるけど)。
踏切を待つ時間のシーンのみなんて…ニッチすぎる。範囲が狭いと思って舐めてたらビックリです。女子高生2人の甘酸っぱい(?)青春…かと思えば、男子目線でクラスの色気ムンムン女子を眺めたり…話によって楽しむベクトルが違っておりバリエーション豊か。それでいて各話が良い味出してる。すごい。
『踏切時間』は青春
「二人の青春」
「二人の青春」は女子高生の先輩&後輩が踏切を待つ間に超ド級の青春をする。先輩が踏切をただ待つだけでいいのだろうかと疑問を投げかけ、踏切の待ち時間を青春の1ページとして有効活用すべきだと主張します。
踏切を待つ間にできる青春とは何か。今ここで出来る熱い青春叫ぶことである。何を叫ぶかといえば「好きな人の名前」です。電車が通った時に叫べば、電車の音で叫ぶ声が掻き消えるって寸法である。で、一緒に好きな人の名前を叫ぶことになります。
って、待て待て。電車の通過音ぐらいじゃ声を消えないだろ。案の定、叫び声は丸聞こえだったのでした。しかも先輩は叫ばないで後輩ちゃんだけ叫ぶ格好になってしまうし。お前は『幕張』の塩田かよ!ひとりだけ好きな人の名前を告げた、先っぽクロマティ…じゃない、後輩ちゃんが可哀相すぎる。
そして自体は思わぬ方向へ…。
ていうか君、私の名前叫んだね
さあ!盛り上がってまいりました!
先輩の狙いは一緒に叫ぶと言っといて、自分は叫ばず後輩ちゃんの好きな人を聞き出すという小学生もビックリのおちゃめなイタズラである。しかし、後輩ちゃんが叫んだのは先輩の名前だったのです。軽いジャブのつもりが、強烈なカウンターを食らったようなものである。
この2人の行く末が楽しみすぎる。1巻は1話「二人の青春」の続編として「二人の青春②」も収録されており、とても甘酸っぱい青春であった。それでいてクスっと笑えるってんだからスゴイ。
先輩の軽快で軽妙なと後輩ちゃんの見事なボケ。出来の良い漫才コンビみたいです。良いコンビでお似合いだと思います?(何故か疑問形)
『踏切時間』のキモはテキストの面白さ
文章が面白い
お前…もしかして泣い…
それはお前のキャラじゃないだろう…ハシビロコウ(あだ名)なのにっ
ていうか、涙かくすなら、もっといい本えらぼうよ!
ダメだろボー太朗は!
漫画ではあるが、文章がとにかく巧みで面白い。会話の応酬劇にしてもモノローグにしても。シュールなギャグとノリツッコミを駆使して畳みかけて笑わせてくる。ラノベで出してもいいんじゃないかってぐらい文章の秀逸さが光ります。テキストだけ抜擢しても楽しめると思う。
もちろん、テキストの面白さを補完するリアクション描写あってこそです。まるで洗礼されたボケとツッコミの漫才劇場のようでもある。「M-1グランプリ」でも上位を狙える冴えわたる切れ味。
しかも特筆すべきは、ボケ役はほとんど無自覚でボケてることでしょう。わざとらしさが無いといいましょうか。上手い具合に天然に見せて絶妙な突っ込み待ちのボケをかましています。だから自然の流れで、ツッコミが決まっている。
さらにテンポとリズムが良いのでサクサク読めます。言葉のキャッチボールにしても心情の一方的な投げ込みにしても素晴らしい。延々と掛け合い漫才する(一方的の場合も)だけなのに、それがいつまでも続いて欲しいとすら思える。限られた踏切待ち時間がとても貴重にすら感じるから不思議だ。
キャラクターメイキング能力の高さ
「真島さんはエロい」
会話シーンや心の声が面白いのは何よりもキャラクターメイキングがきちっとしてる由縁でしょう。ただ踏切で駄弁るだけが楽しいのは面白いキャラがいてこそ。
「二人の青春」の先輩と後輩ちゃんを筆頭に、どのエピソードの登場人物もめちゃめちゃ良いキャラしてます。良い性格してます(色んな意味で)。
オムニバス作品でも、きちっとキャラを立てて分かりやすいからこそ踏切待ち時間のリズムカルな漫才劇場が心地良さすら感じてしまいます。強烈なキャラクターたちの踏切劇場に心の琴線鷲掴みです。
「二人の青春」シリーズ同様に「真島さんはエロい」シリーズがお気に入り。いがぐり頭の男の子が毎日踏切でクラスメイトの真島さんをエロ目線で眺める。一方的な妄想と想像で真島さんはエロいと決めつける一人漫才劇場を繰り広げるのも可笑しいし、当の真島さんがめちゃめちゃ良い娘なのもツボなり。
何よりも「真島さんはエロい」シリーズは…いや、『踏切時間』全体にいえることなんですけど踏切を待っている時の希望がつまっています。ズバリ裏太ももなり!
踏切を待っている時の希望
「踏切と少々の怪談」
『踏切時間』は、百合あり、エロ目線あり、怪談あり、ラブコメあり…と踏切の待ち時間で青春のワンシーンを見事に落とし込み、様々なベクトルで楽しめる作品です。時に笑い、時にニヤリングし、時に冷や汗かいたり。それでも変わらない共通するものがある。それが拘りの裏太もも描写です。
どんなエピソードだろうと裏太ももだけは必須なり。確かに、リアルで踏切を待ってる時、前のミニズカやホットパンツの女性がいたらついつい目がいってしまうじゃないですか。それは男のサガです。ひと時の夢と希望でもある。
カメラアングル
「16:9の四角の中のA-part」
まるで、踏切待ち時間は可愛い女の子裏太もも鑑賞タイムだと言わんばかりです。「踏切待つ=裏太もも=人の夢」である。世界一裏太もも描写が多い漫画である(当社比)。女子高生から女子小学生まで。それも角度方向が色んなアングルだから恐れ入る。
そう!カメラアングルが絶妙なんです。踏切待ち時間の漫才劇場を、色んな角度のカメラアングルで描くので飽きさせない上に漫才をテキストだけでなく絵で楽しませる。それと同時に、太ももの良さを違うベクトルで楽しませる。ブラボー!
この漫画からは「俺は踏切待ってる時の後ろから見る女の子の裏太ももが大好きなんだ!」って作者の魂の叫びのようなものをビンビン感じます。しかも、楽しい踏切漫才劇をメインに据えて自然と描くってんだから心の底から感心しました。敬意の念すら湧くほど。
裏太もも鑑賞という煌めく瞬間に捕われて夢中でいたいである。
ふむ。『踏切時間』は至高の太もも漫画といって過言ではないな。まる。
哲学さんと詭弁くん(1)<哲学さんと詭弁くん> (ドラゴンコミックスエイジ)
KADOKAWA / 富士見書房 (2016-10-08)
コメント
里好先生の作品は昔きららに載ってた「うぃずりず」(といくつかのアニメ化したきらら作品のアンソロ)でしか読んだこと無いけどニッチなネタ描く人ですよね。
どっかで見た作者名だと思ったら、トランジスタ・ティーセットの人か!