『破格の家賃』(カワサキ)
今週のジャンプ(12号)に掲載された読み切り漫画『破格の家賃』(カワサキ)がとてもハートに響きました。
『破格の家賃』の作者さんは手塚賞準入選の作品で、投稿時に記された電話番号が間違ってって現在使用されてなかったって素敵なエピソードがあるそうな。正直、自分はアフタヌーンの四季賞に応募しようとして間違ってジャンプに応募してしまったとすら思いましたね。
だけど最高だったと声を大にして叫びたい!
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ガチのマジでジャンプはよう賞取って載せたなぁってビックリです。
それぐらいジャンプの作風ではない。完全にアフタ向けの作風です。
それが何をどう間違ったのかジャンプに投稿して、ジャンプで賞まで取って、週刊少年ジャンプにアフタヌーン四季賞に掲載されてるような作品が載ってる。どういう平行世界なんだと焦るものの、この作品をジャンプで賞を送り掲載したのは評価したい(謎の上から目線)。
それほど容易く、一読で私の心を掴んでしまったのが『破格の家賃』なのです。
ええ読み切りやったで!
『破格の家賃』
『破格の家賃』
簡単にどんな話だったかを説明すれば、自分の家を購入したいのでお金を貯めるために節約するタチバナはタイトル通り「破格の家賃」の借家に引っ越してきます。そこには幽霊が取り憑いていたのでした。
私はこの家の幽霊です
今日からこの家に住むあなたにさまざまないやがらせをすることでしょう
それがいやなら今すぐこの家から出ていくことです
こうして借家に取り憑く幽霊に嫌がらせをされることに。
幽霊は元々この家に住んでいた人間で思い出がたくさん詰まった大切な場所。タチバナに住んで欲しくないって理由で嫌がらせをする。
「嫌がらせ」というのが、見ててほのぼのしちゃう可愛いレベルなんです。一緒に暮らすようになったタチバナと幽霊。幽霊にはほっこりしちゃうね。で、2人で過ごすうちに幽霊の心境が変化していくのが分かります。
タチバナと幽霊
タチバナが嫌いで出てってくれと言ってたのに、「タチバナさんのこと好きです」「今は楽しいです。タチバナさんのおかげです!」とまで。
いやー、良いお話しですね。一方のタチバナは心情など一切無く無表情で幽霊と接していました。タチバナがなにを考えてるか分からないのもミソです。
そんな読んでてほのぼのしちゃう生活でしたが終わりが来ます…。この過程がすこぶる泣けます。グッときます。『みなみけ』もビックリな背景も少ない、人物ばかりの描写なものの、逆にそれが良い。とんでもない人間劇場でした。
「表現力」と「手抜き」が融合し、白と黒の感情の機微が分かりやすく、むしろこれぞって雰囲気だと思うようになりました。グイグイ引き込まれる。最初は一定の距離のようなものがあったのに、いつの間にか気持ちが一つに重なったことによって、そんな距離も無くなったようです。
何より終盤のタチバナには心に染みわたるものがあります。
非情であり、それでいながら優しく…。
単純であり、それでいながら斬新に…。
簡易であり、それでいながら克明に…。
タチバナの「本音」が描かれているのです。
クールだったタチバナの感情がまっすぐに伝わってくる。ドーンと彼の心情が読者に伝わってきて打ち震えましたね。タチバナが欲しかった「新しい家」なんて途中からどーでも良かったのである。な、泣ける…。
というか、二人のやり取りを見てるだけでも十分に感動してしまうところがまた良いのう。故にタチバナの優しさは言葉の重みのようなものがありました。
しんみりしちゃうし、これは「めでたしめでたし」なのか考えさせられる。さわやかな読後感では決してないが、心に染みわたる美しいお話でした。何度も何度も読み返してしまう。
連載で読んでみたいような、読み切りだからこそのような。
素晴らしい読み切りでした!まる。
コメント
たしかに、ジャンプっぽくない作風でしたが、読み切りの完成度は凄いレベルでしたね。
連載向けの題材ではなさそうですが、この作者の作品はまた読みたいと思いました。
連載したらどーなるって気にもなる
そういえば今後単行本にならない場合があるわけか
絵柄を見て昔の吾妻ひでおを思い出した。影響を受けてるんだろうか。
すごくすごく良かったんだけども、ジャンプ周辺にこの作風を受け入れる土壌があるかと不安に思う。
後々、この結末に私は満足しているのだ、それでも時々あのとき素直に講談社行っとけば良かったと感じることがある、とならないことを祈る。
ギャグでもバトルでもスポーツでもラブコメでもない、しんみりしたドラマの新人読み切りってジャンプは珍しいですよねえ。絵も決してうまくはないけど幽霊のデザインが目を引いちゃって立ち読みなのについ読んじゃいました。
幽霊の行動を女の子の姿に変換するとめっちゃ萌えるなあとか思ってのは俺だけでいい
決して連載向きではないが
たまにこんな話があると嬉しい