やっぱあだち充先生って最高だわ!
サンデー35号にあだち充先生の読み切り『夏のらくがき』が掲載されてました。あだち先生がサンデーに帰還するのも含め6年振りの新作読み切りとのことですが…。しかし私達は忘れてはならない!『-浅丘高校野球部日誌-オーバーフェンス』は読み切りとしてでなく不定期連載と謳われたことを!
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もう『オーバーフェンス』は短編集のコミックにも収録されてしまったので、今となっては完全に読み切り扱いになってしまったけど、6年前の2011年は新連載って言ってたじゃないか!不定期連載って言ってたじゃないか!何の説明もしないで新連載を無かったことにしおって。
で、なになに?『夏のらくがき』か。今度はちゃんと読み切りとアナウンスしてるので続きを楽しみ待つって無駄な行為をしないで良さそうですが。そんな斜めに構えて読んでみたらあら不思議。どんどん夢中になってました。あ、これ傑作ですわ!(断言)
読切『夏のらくがき』
夏のらくがき
漫画家としてのあだち充先生を野球で例えるなよう三振をするホームランバッターなんですよ。盟友の高橋留美子先生は読切も連載も空振りゼロで上手い事バットコントロールしボールに当てるのに。逆にあだち充先生は、連載にしろ読切にしろ清々しいぐらい空振り三振をかまします。
しかし、次かその次の打席に立てば以前の「なんじゃそりゃ?」ってアレな三振が記憶から消えてしまうぐらい、たやすく悠然と平然と見事な場外ホームランをかっ飛ばすのである。その場外ホームラン級が今回の『夏のらくがき』である。くっそ!面白すぎるんだよ!
簡単にストーリーを説明すると埼玉県じゃなくて…東京都の足立区と思われるとこに住む打水光くんが夏休みは祖母の家に預けられて、そこで同じ歳の剣道少女(夏川鈴)に幼いころから剣道でボコボコにされていました。光くんは剣道部に入って彼女を倒すことを終生の目標としているのです。
そんなわけで2人が16歳の夏!
今年こそ夏川鈴を倒すと燃えに燃えている光くん。鈴は去年も圧勝しており、光は雑魚だと思っていました。しかし、実は光は剣道部で実力を磨いて去年は中学日本一の実力者だったのです。では何故負けたのか。そして今年は…。
いやぁ。余韻が最高に気持ち良いラブコメでした。
個人的にあだち充短編ラブコメは「チェンジ」(ショートプログラム1収録)が最高傑作だと思ってましたが、それに勝るとも劣らない。つまり、最高傑作のあだち充短編ラブコメである!
なんつーか、あだち充ラブコメの真髄がギュッギュとつまってました。
あだち充ラブコメの真髄
これぞあだち充流!
あだち充ワールドの魅力は沢山あり、無意味なようでいて絶妙な「間」を演出する手抜きや背景のみのシーン、随所に挿入される水着などのサービスシーン…と、挙げれば色々ありますが、最大のキモは心の声を一切描かないことでしょう。
ラブコメや恋愛モノでは最高にニヤニヤできて最大の見せ場のはずなのに心情がまったくありません。今作「夏のらくがき」もナレとキャラの台詞しかありません。心の声ゼロ!(過去の想い出は有り)
いま何を思っているのか、何を考えているのか、どう感じているのか。心の声を描かないことこそあだち充ラブコメの特長であり真骨頂よ。なぜなら、モノローグ無くて何を考えているか読者が想像するしかない構成なのに読者には見えるのです。分かるのです。感じるのです。キャラがどう思っているのかが!
心情スケスケスルーだぜ
例えば光が剣道で中学日本一だったと知った時、鈴は無言で無表情でした。しかし、天気はどんどん悪くなっていき雨がザーザー降りカミナリが!ひぃぃぃ!怒ってる!絶対に鈴ちゃん怒り狂ってる!
光が女友達を連れて来てあからさまに面白く無さそうだったり。心の声はないけど雄弁に語ってるんですよ。誤解が解け真相に迫るシーンも無表情なのに動揺しまくりって表情。心情を見せないからこそ、言葉や仕草や顔色で魅せるし、それが最高に上手い。
あと、あだち充ラブコメって赤面一切しないのも凄いところ。
ラブコメ漫画の面白さって「心情」と「赤面」だと思うんですよ。モノローグでキュンキュンさせて、照れた赤面でニヤニヤさせてくれる。それが可愛さに直結するわけです。でも、あだち充ヒロインは心の声を出さなきゃ赤面もしません。なのに最高の可愛さを叩き出すから恐ろしい。
お約束!
オーッ!
あんたが勝ったらお嫁さんになってやるぞォ。
光に彼女が出来たなどのもろもろが勘違いだったと判明し、なぜ鈴との剣道勝負にここまでこだわっていたのか。そういえば幼い日に光が剣道で鈴に勝ったら「お嫁さんになってやるぞ」と約束していたことを思い出すのであった。なんてベッタベタな展開なんだ。だがそれが良い!
あだち充メゾットって、結局のところ「お約束」をいかに魅せるかなんですよね。例えるなら、食パン加えた転校生の美少女と交差点でぶつかる話でしかない。完全無欠のお約束である。これ至高なり。
しかし、それが実に心地よい。「夏のらくがき」は、ずっと両想いだった2人が今も両想いだっただけですよ。それだけなのに。読了後の幸福感と余韻が半端ねー!何よりも特筆すべきは結末が無いこと!これがあだち充ワールドの十八番「結末描かぬハッピーエンド」である。
結末描かぬハッピーエンド
結末は…?
光に彼女がいたことが誤解で、鈴を倒そうと必死だったのは幼き日に剣道で勝ったら「勝ったらお嫁さんになってやる」と言ったからと思い出し、旅行に行くつもりだったのを急遽キャンセルして剣道勝負の場へ居た鈴。ちなみに光は熱を出してしまう…。
おー!なんてことでしょう!結末が無いのである!
しかし、これこそあだち充ラブコメよ。よく恋愛作品やラブコメでのラストは結婚ENDや幸せな家庭ENDこそ名作だとか言われます。私もその通りだと思いますが、ことあだち充ラブコメにおいては結末の無さこそ醍醐味になっている。
エンディング無し!2人の関係が結局どうなってしまうのか想像するしかない。『タッチ』だって達也が告白して付き合ったかどうか描かれなきゃ、『ラフ』だってウォークマン越しの告白誰も聞いちゃいないし、『じんべえ』だって義理娘が食事に誘ってどーなったのか。2人のそれからは…?って絶妙なところで終わるのね。
でも、読者は分かる。この2人両想いだと。
それを上手く描くのがあだち充ラブコメだと僕は思いますね。だからエンディングは読者が想像するしかないんだけど、今年の勝敗はともかく、なんのかんので最後には最高のハッピーエンドしか想像できない仕様。やっぱ、あだち充先生はすげーわ。
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コメント
ワイも好きだけど、今の子達だとこの心情とか読み方分からない人いそう
今回の読み切りは最の高だった
エンディングの後は何故か鈴ちゃんにも風邪がうつっちゃうんですねわかります
ヤマカムさんのあだち充評に少し異議あり
確かに2000年代に入り、あだち充作品が空振りしたのがあるのは否めないけど、よく三振するホームラン打者っていうより
一時的にスランプ(00年代初頭)に陥っていた大打者がスランプ抜けて復活したというのが正しい気がする
QあんどAは三振
あだち先生は虹色とうがらしで江戸時代のマンガも描いてるんだから
いっそ「鉄腕ガール」をあだち先生でリメイクしませんか(暴論)
>鈴を倒そうと必死だったのは幼き日に剣道で勝ったら「勝ったらお嫁さんになってやる」と言ったからと思い出し
ここですが、鈴はこれ忘れてないんじゃないかと思いました。
覚えているからこそ
「剣道中学日本一なのに負けた?」→「わざと?」→「私と結婚したくないのか?」
なのかなと。