※注意、この作品は女性向け(腐)です。
かの小説家の乙一先生はファンの間で白乙一、黒乙一と言われている。
前者はグロテスクだったり偏った人間真理だとかのダーク系、後者は切なくもあるがほんわか甘酸っぱい感動系。同じ人が書いたのに作品の雰囲気が真逆で白黒言われています。漫画界の乙一こと中村明日美子先生も作品によって実に極端である。
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中村明日美子作品
で、楽園で連載してる作品は白明日美子でしょう。
『おはよう楽園くん(仮)』が実に上手いなぁ、と。
私、男だけど胸きゅんしちゃったもん。
『おはよう楽園くん(仮)』は、いわゆるギャルゲ的フォーマットを見事に漫画に落とし込んだもの。ぶっちゃければ、「読者=主人公」をさらに発展させたものである。
おはよう楽園くん(仮)
ギャルゲ、エロゲを漫画にしたらこうなりましたみたいな。
まあ、男同士なんだけどな!
楽園くんと語るものは名前すらなく、読者が、楽園くん(仮)と喋り、甘い雰囲気になってニヤニヤするものである。ただの楽園くん(仮)の親友で、どう見ても両思いの甘さ全開で進んでいく。これが凄まじい破壊力を生んでいると思う。
もし、私が腐の傾向があれば悶死していたであろう事は容易に想像できる。ここまで見事に読む者をギャルゲ視点で漫画に埋め込むとは。
ラストへ至るまでの流れは芸術的ともいえます。
最後のゴールまでの過程の描き方が見事というほかない。
2人のやり取りから、一挙一動、雰囲気の全てが恋愛の真髄を見た気がしますね。男同士だけどな!天才か!と唸るレベル。
この天才を読まないのはもったいない。
そこで、男性にも薦められるのが『君曜日』である。
まさに、ラブコメ好きの諸兄も大満足の一品である。
鉄道大好き少女のアコと、空気読まない小平のドッキドキ初恋物語であります。頬を緩めてニヤニヤしながら、胸キュンを起こすのみである。
んで、2巻が4ヶ月程前に発売されました。
これがね、いいんだ。季節は夏~秋に。
夏は夏祭りに行き、秋は一緒に小平のお祖母ちゃんの墓参りへ(泊まりがけ)。イベント盛りだくさんであり、牛歩のように徐々に進んでいく2人の関係が最高すぎる。もうね、頬をニヤニヤと緩めて胸キュン度MAXなのです。
もうね、どう見ても両思いです。
本当にありがとうございました状態である。
あれ?いつの間に両思いになってたのっていうね。
それも両思いになってる事に何の不自然さもなく妙に納得できるというのが凄い。様々な恋愛漫画があれど、ここまで自然と気づいてたら両思いになっているものは無いんじゃないかな、かな。
アコと小平のラブロマンス、初恋模様を最高と断ずるに些かの躊躇もありません。
ええ、ここまで私の心臓をドキドキさせるのは、ロッテの守護神・西野が1点差で登板する時ぐらいですよ。「ニヤニヤ、胸キュン、切ない」という、恋愛漫画の3大要素がこれでもかと詰まってる。まさに隙なしである。
「ニヤニヤ」と「胸キュン」というのはメインの2人。
文句無しの両思いなんだけど、この付かず離れずの絶妙の間がとんでもない。
中学生の甘酸っぱい初恋をこれでもかと醸しだす。神、いわゆるゴッド!プラスして「切なさ」を醸し出す当て馬の持田の存在こそ光り輝くののである。線香花火のように。
持田という超ド級な乙女
圧倒的な乙女力である。
しかも、持田は小平と幼なじみという約束された勝利のポジションでありながら、まったく相手にされません。
ラブコメ、恋愛漫画のキモといえば「恋の駆け引き」である。ゴールは決まってるだろうけど、当て馬にもワンチャンあるでって思わせる事が大事なのですよ。
メインはこの娘だろ?まあ、それでも騙されてやるか、と読者に思わせるのが恋愛作品の面白さで大事な所なのです。それがなきゃ、切なさは消える。ギャグとなる。その、駆け引きを一切放棄し可愛さ一点突破と化した『ニセコイ』が現在ラブコメの王座に君臨してるのも、個人的には有りっちゃ有りですけどね。
んで、この『君曜日』の持田。
一切の恋の駆け引きが無い。
全く相手にされないモッチー
なんというか、小平の気を引こうと色々するんですが尽く上手くいかない。
パスをしようろしてもパスカットされるし、ドリブルしようとしても即効で止められる。ゴールが遠い…というかゴールがはなっから用意されていません。持田が可哀想すぎる。それ以前に、ボールすら持たせて貰えない。
恋愛モノのキモである「恋の駆け引き」を最初から完全に放棄している。読者も、この娘勝ち目ゼロやんと分かる。にも関わらず、恋愛モノので大事な「切なさ」が半端ない。ギャグではない。本気でセンチメタルブルーになる。
何故かっていえば、持田の仕草、やり取り、言動…全てが最初から勝ち目はないと分かってるのに、切なくなるさせるように描かれているからに他ならないでしょう。
切ないモッチーのアレコレの一部
この、ストーリーの本筋には一見すると意味なさげな「間」こそが大事。
上記に載せたコマに前と次のコマがあって、いちいち詳細に描く仕草が繋がり初めて分かる切なさ。ボールにすら触らせて貰えない持田で、センチメタルブルーにさせてくれるのは、全ての流れがあるからこそである。
これが「漫画を読む」という事である。
どっかの書評やレビューやネタバレを見てその作品を「読んだ」気になってないですか。
それは間違いである。
私もたまに超展開に「ネタバレ注意」とわざわざ入れる事があるが、ぶっちゃけ不要だと思ってる。シナリオを知る事は漫画を読んだ事に非ず!何が描かれた事を知るのではなく、どうのように描かれたか、これが漫画を読むというこです。
コマとコマの間、台詞と台詞の妙、一見すると何の意味もない「間」、そこへ至るまでの積み重ね、描かれるカメラアングル…これら全てが一連の流れで繋がって初めて「その漫画を読んだ」と言うのでしょうよ。シナリオを知ることは、漫画を読んだって言わねーの。
そして、中村明日美子作品を読むと、まさに「漫画を読んだ」という満足度がある。
細かい仕草や、カメラアングル、コマ割り、キャラの心情、自然と積み重なってる関係…、それらを通して読んで、はじめて本当の意味で分かる。ああ、アコちゃん可愛い。
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