人の脳内には様々な世界があると思うのである。
かくいう私にも、一におしっこ我慢する女の子可愛い、二にニセコイの小野寺さん可愛い、三四が無くて、五にペロペロ。
あとラーメン食べたいということばかり考えています。まあ、ようするにカオス、混沌としているのである。そしてこの「蟹に誘われて」のpanpanya先生のワールドは一際カオスである。
蟹に誘われて
そも、もともと楽園の連載で読んでたんですけど、タイトルあったのかこの漫画って思いました。いやだって、いまだに楽園ではタイトル付いてないからね。
それがコミック化してタイトルどうすんだろうと思ってたらWEBでやった4Pの、この単行本の1話目に収録されてる「カニに誘われて」のサブタイをそのままコミックのタイトルにしているのである。
いかに、「蟹に誘われて」というタイトルに意味が特に無いか分かるだろう。というかもともとコミティアで出してた同人誌がそのまま楽園連載となったようなものですし。
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とても味がある
んで、この「蟹に誘われて」。
独特の味わい深さがあるのである。
クセになってしまうのである。
あえて例えれば、ラーメン二郎。一回食べると、また食べたくなっちゃうからね。中毒性がありますよ。あ、でもラーメン二郎のようなこってりではないかな。「蟹に誘われて」はあっさり風味ですし。つまり、あっさりしたラーメン二郎ってところかな(なんのこっちゃ)。
独特の味わい深さである
鉛筆の落書きのような登場人物と、やたらとリアリティのある背景のアンバランスなのが特徴的。一読した雰囲気としては、同じく楽園連載の「てるみな」に近いかな。「てるみな」同様に、どこか昔懐かしいノスタルジックであり、少し奇妙で、まるで夢を見ているかのような不思議な気分にさせてくれます。
全18編のボリュームであり、4Pのショートショートから長めの話まで様々。どれも非常に味があるっていうか、なんか深いんですよね。何気ない日常のちょっとした疑問や風景を見事に不思議な世界観へ具現化させているというか。
「innovation」では、主人公が発電所でバイトして、その仕事内容はココナッツを棒でたたいて割るだけ。で、ココナッツを棒で叩いて割るのと発電に何の関係があるのかと疑問に思ってしまうというもの。
こでがどう電気になるのだろう…
なんだろう。
すごく分かるというか、妙に共感できるというか。独特の切り口で日常の見落としがちの疑問にスポットを当てたりするわけである。それがそのまんま味のあるエピソードへ昇華させている。
昔、ドラえもんで江戸時代の殿様が現代へやってきてテレビを初めて見て「中に人が入ってる」と勘違いした話があった。で、「蟹に誘われて」ならば、本当にテレビの中に人が入ってるように描く世界観なのである。実際にそんなエピソードはないけど。「鍋」では、闇鍋をしようとしてホタルイカが蛍のように光っていたりしました。そういう発想が凄い。
特に秀逸なのは「計算機のこころ」である。
計算機のこころ
イルカの姿をした昔の計算機。なんかイルカの頭脳を演算処理装置とかそれらしい説明ありますが、これはちょっと前のエクセルで出てきたイルカのメタファであろう。あまりにも邪魔なので「何について調べますか?」と聞かれたら「イルカを消す方法」と入力するのがある意味お約束となっていました。
今のエクセルはユーザーからの要望なのか、邪魔なイルカは消えてしまいました。しかし、邪魔だったイルカも出てこなきゃ出てこないで少しさみしくなってしまうのである。またイルカ見たいなぁ。そんなエクセル使う時に沸き起こる、ちょっと懐かしさと切なさが入り混じった感情を見事に具現化させたのがこの「計算機のこころ」である。素晴らしい。
コミック一冊丸々読んで思いました。
冒頭で「蟹に誘われて」というタイトルに意味ないと言いましたが、まったくそんな事なかった。まさに1話通りの「蟹に誘われて」というタイトルがシックリくる。この漫画を表している。この漫画の真髄である。
カニに誘われて
主人公の女の子が蟹に誘われて、いつもの通学路で通らない道を行くのですが、この時の「初めて来る道だ」「近所ではあるが、カニのせいか、新鮮に感じる」という台詞が、そのまんまコミック「蟹に誘われて」を読み進める読者の声である。
「蟹に誘われて」を読むことによって、なんて事無い日常のあれやこれやを、角度を変え、新たな着眼点で描かれ新鮮に感じるのである。「蟹に誘われて」で不思議ワールドに誘われてしまいました。まる。
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