めちゃくちゃ面白すぎる件。
「四月は君の嘘」3巻が発売されました。
もうね、最高すぎる。読んでて鳥肌立つってレベルできてる。
以前にも紹介しましたけど、3巻はさらに輪をかけて面白くなっている。
完全に覚醒しつつあるというか、これは名作になる臭いがプンプンしますね。月マガで音楽漫画というと「BECK」という偉大なる漫画がありますけど、「四月は君の嘘」も勝るとも劣らない素晴らしき音楽漫画である。青春っぷりがキラキラしまくって凄くいい。
ようやくピアノを弾き始めた有馬公生。
死亡フラグが立ってる気がする宮園かをりから「ピアノののコンクールに出て」「君の番だよ」と言われコンクール出場を目指す。
一般的には「ピアノは1日休んだら取り戻すのに3日かかる」などと言われているけど、公生のブランクは2年半ある。自分の演奏の録音を聞いても信じられないぐらいに腕が鈍っていた。それでも猛練習で完璧に譜面通りに弾けるようにした。それなのに納得がいきません。
「バッハとショパンが僕にささやくんだ」
「『ここのどこに君がいるんだい?』って」
どこに君がいるんだい?
「僕は完璧を超えるんだ」
(君のように―)
数々の賞を総なめにした天才少年・有馬公生の評価は一部では「譜面に忠実に弾くだけ」「デジタル時計のようにコンマ1の誤差もない」「余韻もない」「譜面の僕」というもの。完璧に譜面通りに弾くだけでつまらない演奏で自分がないのが公生。技術だけなのである。この手の演出は音楽漫画ではよくある手法ですよね。
例えば「ピアノの森」の幼少期のカイと雨宮でもありましたね。
演奏もテンポもメチャクチャだったのに観客を総立ちさせたカイと、譜面通りに完璧に弾くだけでコンクール優勝した雨宮。天才カイと秀才雨宮。
「四月は君の嘘」の公生は、「ピアノの森」における雨宮のような秀才タイプ。それが、かをりのバイオリンに当てられ「僕は完璧を超えるんだ」と言いだすのである。
譜面通りに完璧に弾く事以上の演奏を目指す。
だから悩みまくるし苦しむ。暗譜で弾けるようになっても「僕は深く理解できたのか?」「バッハやショパンを―自分のものに出来たのか?」「譜面をなぞった音楽の中に僕がいるのか?」と自問自答。夢では黒猫が問い詰めてくる。
黒猫
「君はバッハでもなければショパンでもない」
「君は誰だい?」
「君はどこにいるんだい?」
この黒猫の使い方が上手い。
そもそも公生は小さい頃に黒猫を飼っており、3話でも黒猫とジャレながら「こいつと同じ黒猫を飼っていたんだ」と述べて影を落としていました。
こういうさり気ない伏線も上手い。3巻では小さい頃に捨てられた黒猫について触れられていました。公生の手を引っ掻いて捨てられてしまい母親に捨てられてしまう。
見てる黒猫
黒猫を捨てた日から母親の影の中にいると言う公生。
「母親の操り人形」「言われた通りにやる機械」「あいつじゃなくていいじゃん、誰でも同じ」「あいつはどこにいるんだ」と言われていた時から、止まっている。公生は下を向いていた。
ある種ではトラウマのような存在。
「四月は君の嘘」で夢の中に出てくる黒猫は、「海辺のカフカ」(村上春樹)における"カラスと呼ばれる少年"のようなものだと思う。抽象的な自分というか、頭の中で創造したもう一人の自分というか。自分を客観的に見る事が出来るような第三者的な存在。それが公生の夢の中に出てくる黒猫。
そして子供の頃に捨てられた黒猫は母の影の中にいる公生を見続けていた。
「母親の影の中にいる公生」を見てた黒猫。それが根っこにあるから、公生は黒猫と目が合わせられない。3話で黒猫とジャレていた時も目が合ったら逸らした。
3話「黒猫」より
公生は黒猫と目が合わせられない。
11話では目が合って嘔吐した。「母親の影の中にいる公生」になった時を見続けていた黒猫とは目が合わせられない。
だから、目を逸らすし、目が合えば嘔吐する。「君はどこにいるんだい?」と囁くから。黒猫と対峙すれば下を向く。
悩み迷い苦しんだ公生が答えを見つけるのが、またいいんだ。
君はどうせ君だよ
「君はお母さんの影なんかじゃないよ」
「君は君だよ」
「君らしくなんて曖昧なものじゃない。何やったって変わったってカッケーない」
「君はどうせ君だよ」
凄くいい台詞だ。
見付けた答えはシンプルそのもの。自分は自分。この後、また夢の中で黒猫とやり取りするんだけど、何か吹っ切れたようで清々しい表情で前を向いていた。
しかし、公生を引っ張り導くのは常にかをりですね。白黒の景色をカラフルにしたのもそうだし。凄まじい死亡フラグに見えるのは俺だけかしら。そして幼馴染の椿もいいっすなぁ。公生とかをりにヤキモチのような感情を抱いてモヤモヤするもおんぶにはグッときました。
おんぶ
僕は新川先生って破天荒なおてんば娘しか描けないと思ってたんですけど、おんぶされていた時の椿は凄く乙女だった。思春期のボーイミーツガールっぷりが僕の心の琴線を鷲掴みにする。
椿の心情が胸熱すぎる。
斉藤先輩に告白された時は「心がキラキラしないんだろう」(8話)と疑問に思っていたのに、公生におんぶされた時は「最悪なのにどうして星がキラキラしてるんだろう」とか思っちゃうわけで。僕はニヤニヤするのみである。
また、物事に取り組む姿勢というか全力っぷりがいいんですよね。
4巻では椿のソフトボール部と亮太のサッカー部が中学最後の大会で敗れてしまうんですけど、2人とも泣くんだ。表情が本当に胸に突き刺さる。涙がグッとくる。いかに全力で打ち込んでいたか分かる。全力で青春している。
で、キモといえばライバル登場でしょう。
2人のライバルが登場し、めちゃんこキャラが立っている。魅力的である。3巻では公生の演奏はないんですけど、変わりにライバルの演奏があってこれが背筋をゾクっとする程響いてくる。音なき漫画でも、まるで音が聴こえてくるように。
ライバルの演奏
公生に語りかける心情と共に演奏されたんだけど、これが超いい。
もうね、超面白いわけですよ。1、2巻も十分楽しめたけど、それが序章だったとすら思えるぐらいの盛り上がり。「四月は君の嘘」は超お勧めである、と。
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