「私の父は、ピョン吉に殺され、ピョン吉に救われた。」(オビより)
大ヒット漫画『ど根性ガエル』の著者・吉沢やすみ先生を父に持つ大月悠祐子先生の描くほぼノンフィクション漫画なり。娘から見た実録・吉沢やすみってところか。
読めば衝撃メガショック!週刊少年ジャンプで『ど根性ガエル』を大ヒットさせた後はまったく当たらず大スランプに陥り、ついに全てすっぽかして失踪し家庭が崩壊していく…。ひえぇ。
日本のすべての家族に贈る、感動の一家再生物語。
アニメ化もされ、日本のお茶の間をにぎわせた名作漫画「ど根性ガエル」。その著者・吉沢やすみの実娘が描く、家族の再生物語――。「ど根性ガエル」の連載終了後、極度のスランプに陥った著者の父・吉沢やすみ。仕事を放棄し、ギャンブルにのめり込む父によって、家族は崩壊していく。―だが、妻の文子だけは夫を信じていた。愛する妻の支えを得て、すこしずつ、一歩ずつ、ドン底から再生していく家族の姿を、実の娘・大月悠祐子が描きだす。
<レッツ試し読み>
・『ど根性ガエルの娘』(週刊アスキー)
人気漫画家から一転、どん底にまで落ちた吉沢やすみ先生が再び這い上がるって物語なり。
吾妻ひでお先生の『失踪日記(AA)』に近いけど、こっちは実の娘から見た父親なのでより客観性があるのかな。
衝撃のエッセイ漫画なり
まあ、率直に言って吉沢やすみ先生って人間のクズだなって思いました(小並)。いやーひでぇよ。マジで。
極度のスランプに陥り、物に当たり、ギャンブルに狂い、稼いだお金をほとんど突っ込み、家にはお金を入れずひたすらギャンブルを繰り返す様はダメ人間そのもの。
鬱々しいエピソード満載なんですけど、大月先生の可愛らしい絵柄と、時系列がバラバラで「今の幸せの家族」が描かれる為にマイルドに仕上がっております。ユーモアを交えながら語られるので面白く読める。
だめんず好きな聖母のママ、駅の清掃員として社会復帰する吉沢先生のエピソードなどはグッとくる。これは感動的な家族愛の話ですよ。キャッチコピー通り「感動の一家再生物語」なんですけど、家族愛の他にも随所に見所がある。
時系列があっちに飛んだりこっちに飛んだりするんですけど、それぞれを拾い集め時系列を整理すると吉沢やすみ先生のまんが道も見えてくる。
18歳で上京し、ジャンプの人気漫画家・貝塚ひろし先生のもとで住み込みアシスタントをしながら『ど根性ガエル』が連載するまでの紆余曲折は手に汗握るね。
あと貝塚先生が超良い師匠すぎる。一生ボクのアシスタントやるわけじゃないでしょ。
さっさと自分の漫画描いてプロになんなさい。「我々の生きるこの世界は自分の漫画を描いて世に出した者が勝つんだ」と奮起させ、はじめてストーリー漫画描かせた『ど根性ガエル』をジャンプ編集長に紹介するとか面倒見良すぎ。そして完成した『ど根性ガエル』。
読み切り『ど根性ガエル』がアンケート3位で、当時のジャンプ編集長に10本描け、描きだめでき次第に連載を開始させると言われ、経験不足を理由にビビってガクガク震える吉沢先生。
そこへ「…吉沢くん。キミまだだろう」「連載準備ができたらねご褒美に…」「大人のそういうお店に連れてってあげよう」と特大のエサにパクッと食いつき死ぬほどやる気を出して頑張り男になった話は笑える上にある噂が信実だった事を示す。
昔からネット上ではジャンプ編集部は高級なお風呂屋さんに作家を連れていくって噂がまことしやかに言われていましたが、どうやら信実だったようです。
あの都市伝説まじだったんだ!今は知らんが、少なくとも当時は本当に連れて行ってた模様。いやバクマン読む感じ今でも…。静河流が連れて行ってもらったのは本当にただのキャバクラなんですかねぇ(ゲス顔)。
しかし、父親への取材でそんな話まで聞き漫画にするとか凄いな。
田舎から夢見て上京した少年はプロになるのでした。
『ど根性ガエル』は大ヒットする。漫画は飛ぶように売れアニメも大ヒット。
素敵過ぎる奥さんと結婚。式では手塚治虫先生に平面ガエルを絶賛。
吉沢やすみ先生はこの果てしなく続くまんが坂を駆け上がる。そして登った後は落ちるだけー。初連載が大当たりで国民的漫画にまでなり、若くして頂点を極めてしまった故なのか、大スランプになり全てブン投げて失踪。32歳にして漫画家としては完全に終わった。すげぇ人生だぜ。
今作『ど根性ガエルの娘』は勿論家族の再生物語がメインですけど、吉沢やすみ先生のまんが道としても楽しめるように様々な見所がある。時系列がバラバラならば、各話で語り手の視点も変わる。吉沢やすみ先生が「オレは~」と語るので鬼気迫るものがある。
娘から見た父親のルポで留まらず、家族群像劇となっている。面白かったです。非常にお勧め!
コメント