さて、「ワンピース」742話。
前回に引き続きキュロスの過去編となっております。
キュロスといえば20年前まで闘技場で活躍したコリーダコロシアムの歴史上最強の剣闘士であります。その全貌が明かされるわけです。
ずーっと気になっていたのが「3000戦全勝無敗の男―その内、敵の攻撃を受けたのはたったの一太刀だけ」という何気ない台詞でしょう。
巨人や魚人と海中戦でも勝ち続けたキュロスに一太刀を浴びせた相手。
一体どんな強者なのかといえば…。
一太刀受けたらしい
リッキーことリク王であった。
なるほどね。
リク王の戦闘方法がキュロスやレベッカと同じなのは「お前に教えを乞うて」というように、直接教えて貰ったわけだ。
とはいえ、どんな強者に一太刀食らったのかと思ったら油断だったとは。
そして以前からと気になりまくっていたラブロマンス。
スカーレット姫とキュロスは王宮から離れて暮らしていました。
キュロスの過去の犯罪のせいだと思いましたが、まったくその通り。
というかスカーレット姫様とキュロスのラブがコメる様子がなかなかどうしてよ。
スカーレット
ラブがコメる
ちょろーい!
だがそれがいいー!
なんというチョロさ。
スカーレット姫「ずいぶんおモテになられるのね!」「私はダマされない!」とツンツンモードで登場して、その2ページ後にはもうデレていた。
とはいえ、そのたった数ページのラブロマンスが素晴らしいね。
第一印象最悪から命を救われ恋に落ち結婚するために自ら死んだ事にする流れが芸術的ですらある。
たったの4ページで見事に描かれているわけです。
そこらのラブコメ漫画も裸足で逃げ出す恋はいつでもハリケーンっぷりである。
そして生まれるレベッカ。
幸せそうで誰からも祝福を受けてるのがまたグッとくるよね。
特筆すべきはキュロスのレベッカに対する扱いでしょう。
レベッカとキュロス
「そんなに純粋なものに…触れないっ!私の手は汚れた手だ!汚したくない…!天使のようだなぁ…レベッカ――私は見てる…いつでもキミのそばにいる…!!」
泣ける。
この後の展開は以前にレベッカの回想は人間だった頃のキュロスの存在を忘れてると述べたように、予想通りだったのですがキュロスの「私は見てる…いつでもキミのそばにいる」という台詞には涙がチョチョ切れちゃうよね。
今回の742話のサブタイトルは"いつでもキミのそばにいる"ときたものだ。
だって、キュロスは誰からも忘れ去られても、この時の台詞を忠実に守ってきたんだから。
忠実にね
「兵隊さんは~勇敢で~♪」
「いつでもキミのそばにいる~♪」
初出は720話でしょうか。
しばしばレベッカが思い出す兵隊さんとの想い出。
その中でいつも一緒にいてくれる兵隊さんは何度も歌ってくれていました。
「いつでもキミのそばにいる~♪」と。
胸が熱くなるね。
この歌は、レベッカが生まれた時に立てた誓を忠実に守ってるのであったのだ。
自分の存在を忘れられても。
しかし、キュロスは悲しくなるよねぇ。
741話のラストでは「みんな、おれの事…忘れてくれねェかな…」と号泣していたのに、実際にみんなキュロスを忘れてしまったら、虚無とも言える孤独を1人でずーっと味わい続けるっていうね。
今までの「ワンピース」の作中で初めてっていうぐらい物悲しいよね。
何故かって、キュロスは「ワンピ」的にまじもんで死んだからだよね。
ワンピ的にいえば死に体だよ
だってですよ。
私が「ワンピ」で一番好きなシーンつったら、死に際の笑顔なんだもん。
ロジャーが笑って処刑されたのが「ワンピース」という物語の始まりだったのですけど、その後も重要キャラの死に際の笑顔の安らかなこと。
彼らは笑って逝ったんです。
ベルメールさんも、Dr.ヒルルクも、エースも、タイガーも、オトヒメも…。
死ななかったけどペルも
死に際に笑顔である
敵だけどモネもヴェルゴさんも最期は安らかに笑って死んでいくんですよね。
これがワンピの美学である。
なぜ、こうまで安らかに、笑顔を見せて死ぬのか。
生き抜いたというのもあるでしょう。
しかし「ワンピース」的には結論は一つしかありませんよ。
そりゃねぇ…。
だって彼ら、彼女らは死なないからだ。
ロジャーはレイリーに「俺は死なねェぜ?相棒」と言っていた。
Dr.ヒルルクは追い詰められながら「俺は殺せねェよ」と言っていた。
人はいつ死ぬのか…?
人は…いつ死ぬと思う?
人に忘れられた時さ…
これが「ワンピース」なんだよなぁ。
人に忘れらられない限り死なない。
逆に言えば、人に忘れられれば死ぬんだよね。
だから敵味方問わず、受け継がれる意志があって死に際に笑顔を見せて息絶えるのである。僕は死に際の笑顔のシーンこそが「ワンピース」の名シーンだと言う。
だからこそ、キュロスとスカーレット姫が切なすぎるというものです。
だって、スカーレット、死に際が笑顔じゃないんだもん。
そして、死にゆくスカーレットを抱きしめるキュロスこそ「ワンピ」的に死人なんだもん。
切なすぎるっつーの。
これは例えばの話だけど、キュロスがおもちゃにならずに忘れられていなければ、同じ結末だろうとスカーレットは笑って逝けたと思うわけですよ。
今回のドレスローザ編は「ワンピース」という物語の縮図ですらある気がしますね。
だって、作中で初めてでしょう。
人に忘れられた(=人が死ぬ)っていうのは。
いや、空白の100年、かつて栄えた王国以来である。
「ワンピース」的に死ぬってのは忘れられたってことだからね。
空白の100年とキュロス…なんか似てるよね。
ワンピ的に「死んだ」って事ですし。
死んだら終わりなのっつったらNOだね。
生き返る可能性がある。それがウソップである。
ウソップがやってくれました
まさかのギャグ落ちなんだけど、ウソップがボロボロの死ぬ寸前でやってくれました。
シュガーたそが驚き気絶しそうな感じだ。
これでシュガーたその能力が解けてキュロスが人間に戻る(=生き返る)のでしょうか。
ウソップは、前回舞い戻ってもうヤラれてるとは言うまい。
今回は過去編同様にかなり端折ってるというかスピーディに結末を描いてるようで、ウソップは100tハンマー(風船だろうが)まで駆使して闘った様子が伺える。最善は尽くしたのだろう。
キュロスが人間になる(=生き返る)ってのは興味深い。
誰もが忘れた&知らない、空白の100年も生き返る事が可能という示唆なのでしょうかね。
キモっていうか今回のハッピーエンドはキュロスがレベッカの温かさを直に感じることが大団円になることでしょう。
だってさ、キュロスは生の手でレベッカを触った事がないんだもんね。
手袋
人間だった頃は娘・レベッカを天使の様に純粋で、自分のような汚れた手で触って汚したくないと手袋をしてレベッカに触れていたのである。
そしてドフラミンゴの襲撃でオモチャになったキュロスは、体温を感じなくなってしまっていたのである。
何も感じない
ブリキのオモチャとなってしまったキュロスは寒さを感じなくなってしまっていた。
それどころか、死にゆく妻の体温すら感じない。
寒さも温かさも何も感じなくなってしまったキュロス。
そして、人間だった頃は、直にレベッカに触れた事がないのである。
そんな彼は、オモチャになって一つウソをついた事がある。
寒い日、レベッカと手を繋いで歩いていた時…。
ウソをついていた
レベッカ「えへへ、あったかい?」
キュロス「ああ、とても暖かい」
寒さも暖かさも何も感じないキュロスは、この時、ウソをついていたわけである。
それは優しいウソなのだが、これが本当になる時、私は号泣するのだろうな。
本当に、直に、レベッカの暖かさを触れたキュロス…そんな未来を夢見ると胸が熱くなるな。
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