『らんま1/2』なぜ久遠寺右京と響良牙のカップリングは成立しなかったのか…？

 

『らんま1/2』は傑作である。

私が世代ど真ん中だったので、『うる星やつら』『犬夜叉』よりも好きな作品です。

 

ラブコメ・ギャグ・格闘漫画として間違いなく面白い。面白いし名作なのだが不満が無くはない。それは「久遠寺右京×響良牙」が終盤で崩れたことです。

 

乱馬に横恋慕する右京。あかねに横恋慕する良牙。そんな2人は途中まではフラグ立ちまくりでカップリング間違いなし！と思われた。

 

しかし、終盤で良牙には雲竜あかり、ウッちゃんには小夏が取って付けたように充てがわれる。多くの読者が「そのカップリングは違うだろ！」と思ったものです。ファンの中でも小骨が喉に刺さったような感覚になったわけ。

 

二次創作や同人誌のカップリングに切れる面倒くさいオタクでなく、公式のカップリングに切れた面倒くさいオタクが生まれたのです。

 

 

『らんま1/2』ファンでこの認識を持つものは少なくない（と思う）。

そんなわけで「良牙×右京」を語りたいと思います！

 

※サンデーうぇぶりなら基本無料で読めます。

 

『らんま1/2』良牙×右京

出会い

（9巻7話、チャプター88）

 

右京と良牙の出会いは、乱馬にもうひとり許嫁がいると知りボコしにきて相まみえる。妄想でヤベーもうひとりの許嫁を想像（土偶や埴輪）してウッちゃんが「ふざけんな！」とバトルに発展。

 

ウッちゃんは前作『うる星』の藤波竜之介に近いキャラだけど、学生服以外は普通に女の子の格好をしてるので、登下校だけサラシ巻いて男装してます。

 

で、そんな登校時で良牙に男と勘違いされバトルしたわけです。乱馬がお胸を見せて女の子だったと証明されました。

 

余談ですが、右京は「VS乱馬」「VS良牙」もお胸がはだけるまではほぼ互角に戦っており、シャンプー相手でも全然余裕でいなしてる。「シャンプー＞あかねちゃん」って明確な戦闘力差が描写されており、ウッちゃんは女キャラ最強候補と思ったり思わなかったり。

 

ウッちゃんつぇぇぇぇ！ヒロインズの中じゃ最強！である。

右良同盟

（9巻7話、チャプター88）

 

そんな最悪の出会いの2人であるが隠れて同盟を結ぶのである。ウッちゃんから「良牙→あかね」に気付き提案した形で右良同盟が結成されたのである。薩土密約を超える歴史的偉業である。

 

 

2人の利害が完全に一致！

読者の多くは思ったものです。この2人くっ付くなと。

 

『美味しんぼ』で例えれば横恋慕同士の「近城勇と二木まり子」のようなポジションですよ。裏で同盟結んだのに結局うまくいかなかったけど、なんやかんやでくっ付いちゃった横恋慕ズカップルみたいな。

 

右京と良牙もそうなる道筋を辿っていたのです。

遠慮無しで話せる仲良し

（9巻10話、チャプター90）

 

良牙はモンスター童貞である。

 

女性相手には上手く喋れない。緊張してどもっちゃう。素を出せないし、まともなコミュニケーションが取れない。

 

それなのに乱馬も認める「可愛い」ルックスである右京にだけはどもらない！素で喋れる！ボディタッチもする！遠慮なくさらけ出して会話できるのです。

 

ホワルバ2における千晶ルートのような関係を構築できたのがウッちゃんだったわけです。

 

 

良牙が「おい」「お前」「ばか」なんて言葉遣いできる異性は右京だけなのです。ラブコメ脳のフィルターを通して見れば強固な絆があるとしか言いようがない。

 

さらに他のヒロインズ（シャンプー＆小太刀）は「あかね嫌い・殺す」だったのに、右京だけはあかねと普通に親友になってるのも横恋慕キャラで一線を画す。

 

頼れるフレンズ

（13巻8話、チャプター132）

 

乱馬が八宝斎のせいで弱くなった！飛竜昇天破を覚える！って時に、乱馬の味方をしてくれたのは親父とコロンと同年代ではあかねと右京と良牙でした。

 

修行時に飛竜昇天破を食らった良牙を看病してあげたのは右京である（とどめを刺して安らかに眠らせたともいえるが…）。

 

なんのかんので良牙の看病してあげたウッちゃん。ええやん（カップリング的な意味で）！

温泉アスレチック編

誤爆誘い

（16巻1話、チャプター158）

 

「温泉アスレチック」を優勝すれば世界各国の温泉へ行ける。良牙はあかねを誘いたかったけど誘えず、練習のように一人芝居で「お願いだ！おれと一緒に、温泉に行ってくれ！！」とやったら目の前に右京がいたわけです。

 

いまでいう誤爆告白のようなものです。

我々の業界ではフラグが立ったと言い換えることができます。

 

 

そんなわけで良牙と右京は2人で行くことになる。この温泉アスレチック編は「右京×良牙」をより高めてくれる。

めちゃくちゃお似合いコンビ

（16巻2話、チャプター159）

 

繰り返しますが良牙はモンスター童貞である。あかねの前では緊張してどもってまともに喋れません。対してウッちゃん相手には仲睦まじい夫婦のような漫才劇場や会話の応酬撃が可能。

 

どう見てもお似合いで素でいられる右京と良牙のコンビよ。まあ、異性として別段意識してないという見方もできますが…。しかし「お？これは…？」と思わせる含みがあったのも事実。

 

 

右京と呼び捨てになる。

 

ここまでなんのかんので絡んで来た2人だが良牙は右京を「お前」「てめぇ」としか呼んでなかった。以降は「良牙」「右京」である。しかも、あかねの前でどもり喋れないのに、右京とは普通に手を繋げるし、コンビを組める。

 

誰もが思ったものです。「この2人お似合いじゃないか？」と。フラグも立ちまくりやん！

 

温泉アスレチックは序盤・中盤は男女入り混じってペアがよく変わったけど中盤からはずっと良牙＆右京のペアでした。良牙が方向音痴故に「その頃、良牙、右京ペアは…迷子になっていた」が様式美。

 

2人はずーっとペアを組み続けて本編にからまず迷子になってました。シレッと優勝までしちゃいました。呪泉郷には行けなかったけど（方向音痴で）熱海に2人で旅行したという事実。

破恋洞

最期のフラグイベント

アニメでは原作にはない「右京×良牙」のフラグが半端なかったけど原作では2人の絡みは少ない。

 

最初の「出会い＆乱馬とあかねを邪魔したろ」「飛竜昇天破編」「温泉アスレチック編」に続く「破恋洞編」が最期である。漫画では4つのエピソードでしか絡んでないわけです。

 

そして事実上2人の絡みのラストになる「破恋洞編」はとても尊かった！

 

（27巻9話、チャプター287）

 

肝試しとして乱馬とあかねを誘い出した右京には作戦があったのです。それが破恋洞。実は破局デートスポットで2人を別れさせたいウッちゃんにとって迷子で突然現れた良牙は救世主のような存在だったのです。

 

良牙の突然の登場で、自然と「乱馬＆あかね」が破恋洞に2人で入れるシチュエーションとなったわけです。背景を良牙に説明して絶対に破局する破恋洞のおぜん立ては完了である。

 

しかもゴールでは必ず別れさせる呪いがあった。

乱馬＆あかねを別れさせたい同盟

（27巻10話、チャプター288）

 

そんなこんなで再び右良同盟が結ばれたのでした。しかし、良牙はバカ（素直）なので、あかねにどうしてもフラフラしちゃうのです。作戦がパーじゃないかとキレる右京と、謝罪する良牙。

 

そんな2人のやり取りを目撃して、右京と良牙は付き合ってるんじゃないかと誤解する乱馬＆あかねである。2人が隠れカップルだと勘違いして仲睦まじくゴールまで行ってくれたのであった。

 

作戦が成就！？

 

やったね！ウッちゃん＆良牙大勝利！

 

からの破恋洞の呪い「乱馬＆あかね」でなく「良牙＆右京」に降りかかってしまったのである。

 

 

(´・ω・`)

 

呪い曰く「おまえらの方が仲がいい～」である。この原作エピソードこそが強固な、いまだに成仏できない「良牙×右京」のカップリングを尊いと思わせたのでした。

 

あかねちゃんの「ケンカするほど仲がいいんじゃない？」が全てです。いや、あんたと乱馬も顔を合わせれば喧嘩してたよね。ケンカするほど仲が良い。悪口前回。素を出し合える。「乱馬×あかね」の合わせ鏡のような関係だったのでが「良牙×右京」だったのです。

 

こんなん見せられたらサンデー読者の約8割は勘違いしますって！

 

でも、この2人の絡みはこれでお終い。終盤にはそれぞれ、良牙にはあかりちゃん、右京には小夏がとって付けたように当てがわれるのである。「いや誰やねん？お前ら！」「良牙×右京のカップリングこそ大正義やろ！」と思った諸兄が多いはず。

 

なぜ終盤に登場したポッと出キャラが「良牙×右京」をぶち壊したのか？高橋留美子先生の美学だよ！としかアンサーはない。

高橋留美子先生の美学

今のラブコメではメジャーじゃないが昭和後期～平成初期のラブコメは余り者同士をくっ付けるのがデフォでありました。それこそ盟友のあだち充ラブコメが顕著ですね。

 

しかし、留美子先生はそれをしない美学がある。らんまでなくうる星だけど「留美子本（AA）」で語ってるのが納得っちゃ納得なんですよね。しのぶの心ばかり考えてたと。抽象的だけで心を大事にするってのがストンと落ちる。

 

個人的な解釈でいえば『うる星やつら』のしのぶはラムちゃんの恋恋慕ライバル。あたるが好きだったわけです。中盤・後半で面堂はじめフラグ（と読めるもの）はたくさんあった。でも既存キャラとくっ付けることなく、終盤でポッと出の兎耳男の因幡くんとくっ付けたのです。

 

深読みすれば、あたるが好きだったしのぶの心（気持ち）があるから、既存キャラとフラグ立てようが、あたる好き時はガチのマジなので既存キャラとの安易なカップリングはしない。新規でポッと出の専用キャラを当てる！という矜持のようなものがあったわけ（多分）。

 

『うる星』に限らず『めぞん一刻』にも言える。五代に横恋慕してたこずえちゃんは、一刻館の住人の大学生・二階堂望とめちゃくちゃフラグ立ててた。五代と響子さんが結ばれたら余り者の「こずえちゃん×二階堂」は鉄板ではないかと思わせた。

 

だけど、こずえちゃんはポッと出の同僚と結ばれて「いやいや！お前誰やねん！」と読者は突っ込んだものです。しかし、これこそがるーみっくワールドの哲学。

 

高橋留美子ラブコメで余り者同士は結ばれない！ポッと出の相手が出る！片想いしてた心は本物だから。故に終盤に（とってつけたような）その人だけの伴侶が出てきて当てるのである。

 

そのロジックを踏まえると「良牙→あかね」「右京→乱馬」があったからこそ、フラグ立てようが既存キャラ同士をくっ付けるのは違ったのだろうと。それぞれ理想的な相手を終盤で出したんだろうと。

 

まとめると「良牙×右京」のカップリングはなぜ無かったか？

高橋留美子先生の恋愛群像劇の美学だよ！というアンサーになる。まる。

 

 

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