今週のマガジン(50号)から『聲の形』の大今良時先生が新連載スタート。
タイトルは『不滅のあなたへ』である。前作で大ヒットを飛ばした次の連載とならばどんな作品を描くのか当然注目ですしおすし。
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1話を読んだ感想としては面白い面白くないでなく「凄くなりそう…」ってもの。
というのも1話は完全に物語の序章でした。これから始まる壮大なスケールの物語へのプロローグ。プロローグだけど実に読ませる読ませる。見所満載の1話だったと思います。はい。
『不滅のあなたへ』はSF作品なのでしょうか。『火の鳥』(手塚治虫)のテイストにも似ている。まだ1話なので何とも言えませんけど。とにかく凄そう。
『不滅のあなたへ』1話 最後のひとり
1話のあらすじを簡単に説明すると、地球外生命体(?)の「それ」と呼ばれる何かが姿を変えてオオカミになり、そして集落にひとり残された人間の少年と過ごし、最後に「それ」が少年に変わって旅に出るという話。冒頭のナレーションはこうである。
それははじめ球だった。ただの球ではない。ありとあらゆるものの姿を写しとり変化することができる。私は“それ”をこの地に投げ入れ観察することにした。
それはしばらく石の形になってすごした。暖かくなると今度はコケを写しとった。やがてこの地に雪が降り始めた。
一匹のレッシオオカミが南方から現れ力尽きると――。
それはオオカミの姿になった。
なんだこの意味深なナレーションは?
「それ」と呼ばれる姿を変化するものと、それを観察する「私」がいます。
宇宙人なのかでしょうか。よく分かりませんが、1話で「私」は「それ」をリアルタイムで観察してナレーションしていました。「私」はそれの実況ナレーションをする声しか出てませんし、オオカミとなった「それ」に感情があるのか生物なのかも分かりません。
とはいえだ。
「私」(ナレーション担当)は「それ」の気持ちを代弁するような描写や、むしろ「それ」が感じているものを把握している様子も伺えるので意味深っぷりはさらに深まる。
口がきけるなら「ずっとここにいたい」と言っているだろう
最初は宇宙人が地球に「それ」を投げ入れて宇宙船で映像を通して観察しているのかなって思ったんですけど、どーもそうではないらしい(いやその可能性も捨てきれんけど)。「それ」が感じる傷の痛みや不快感、外の冷たさや体温の上がる気持ちよさ、さらに臭いまで把握しています。
オオカミの姿になった「それ」には感情の揺れ幅がある様子。
観察している「私」はそれの感情を正確に理解しつつも、あくまで「言っているだろう」など第三者視点でもある。さらに集落の様子など「私」は「それ」を通してでしか状況が見れない様子。うーむ。「私」と「それ」は一体何なのか。
それの観察をする「私」とは何者なのか。そもそもちゃんとしたキャラクターなのかも分からん。「私」を「それ」を通じて地球を観察している宇宙人という考えもできるし、この漫画を見ている読者と掛け合わせることも可能だし、アカシックレコードに触れているとも取れるし、「私」は作者の大今良時先生というオチもあり得る。
「それ」が見せた感情
はじめは球だった姿をコピーできる「それ」。意識もありませんでした。
知識もゼロのようで、オオカミの姿になっても餌の食べ方も分かりませんでした。少年と過ごし、少年に何から何まで色々と教えてもらう。例えば餌の食べ方も少年にレクチャーされてそっくりそのままリボンを付けて真似して見せます。
食べる行為をそのまんま真似る
「ホラ」じゃねーよwww
少年が食事の取り方を「ホラ」とオオカミのそれに示せば、そのまんま真似して「ホラ」と喋るオオカミであった。少年はビックリ仰天するも「なんだ、食べれるじゃないか」と…。それでいいのか少年!オオカミが喋ったんだぞ。シリアスなシナリオの中に笑える要素を入れてくるのすこ。
んで、何の知識も無い「それ」は少年と過ごして色々と学ぶ(?)のです。「私」は「それ」を観察しているけど、「それ」は人間の少年を観察する。ただ喋らないオオカミが少年に付いて見ているだけなんだけど、オオカミの表情で「それ」は何か色々と思っていることが手に取るように分かります。
オオカミは表情で語る
台詞も最初の「ホラ」以外は一言も喋らないし、モノローグも一切無いです。でも、真顔しかしてなかったオオカミの表情が、少年が息絶える寸前には悲しそうになったり、優しく微笑んでいるようだったりと見える(気がする)。
「それ」には感情があり、「私」のナレーションで状況が語られなくても何となく理解できてしまう。弱っている少年を見て悲しいとか頑張れと言っているようでもある。いや実際には何を考えていたのかは分かりませんけどね。でも、とても人間らしい行動を取って見せました。
椅子
死期の間近、少年は椅子にこだわっていました。
集落のみんなが帰ってきたときに、寝てたらみっともないと。椅子に座って待つのがこだりであると。そんな話を聞いた「それ」は、少年がこと切れたあと、床で倒れてしまった少年のしかばねをこだわりの椅子に座らせてあげました。「それ」が見せた行動はとても人間らしいと言えるでしょう。
とはいえ、「それ」が姿を変えたオオカミは少年の飼っていたジョアンで2ヶ月ぶりの帰還を果たしてもいるので、ひょっとするとコピー元がやりたかった事を本能的にするのかもしれない可能性もあるけど。
「それ」は未来へ向けて歩き出した
特に「うおおおお!」となったのは、それが少年の姿に変わって歩み出すシーン。
息絶えた少年に変わって外の世界に旅出る「それ」を象徴する見開き。
この見開きは見惚れるぐらいすごい。
よう言われるけど、漫画は右から左へ向かって読むものであり、右から左へ動作は展開します。同時に、時間も右から左へ向かって流れるわけでそれを象徴するかのようでもある。右側に息絶えた少年という過去と「それ」が左側の未来へ向かって歩む。
時が止まったような白い2人。死んでしまった少年と少年に生まれ変わったそれ。死亡と誕生が同居している神秘的な空間でもある。何よりね、1話ラストが息絶えた少年が微笑んで安らかな表情だったんですよ。笑ってたの。てことは、「それ」は少年が微笑んで顔を向けていた未来を歩む。そんな感じです。
歩き出した今後、「少年がそうしたかったように」色んな人に会って色んなことを感じるそうな。冒頭であてもなく「歩きはじめた」のが少年と過ごした後には更なる刺激を求めて「歩き出した」という「私」のナレーションも興味深い。「それ」は着実に成長をしているようでもあります。
タイトルの『不滅のあなたへ』のあなたというのは誰を指しているんだろ。
また、最後まで少年の名前を出さなかったのも気になるとこです。「それ」は人間の姿になったけど名前が無い状態です。なんとも期待感を煽る1話でした。まだまだ謎だらけだけど今後が楽しみです。まる。
週刊少年マガジン 2016年50号[2016年11月9日発売] [雑誌]
コメント
こいついつも期待大してんな
いかんのか?(原辰則風に)
面白かったけど絶対連載向きじゃないゾ。短編でこそ活きる話ゾ
これは読み切りにすべきだったよ。マジで。尻すぼみにしないか怖い。
力はある作家なんだからやり方を間違えないでくれ。
連載するにしても、毎週20ページでやれる話ではないよね。
描き切るんならアフタヌーンにでも移籍させた方がいい。
じゃないと前作みたいに、途中でテーマ変わっちゃってグダグダになりそう。
ホラー映画「遊星からの物体X」を連想して困るな。
こういう話は月刊誌とかでじっくりやって欲しいんだけどなぁ…