今週の週刊少年マガジン(12号)に「聲の形」という漫画が読み切り掲載されました。
以前に別マガに掲載された作品なんですが、週マガでも掲載である。「マガジンでしか読めない、何よりも純粋な青春がここに!」という煽り文も納得の珠玉の読み切りであります。
「聲の形」
もうマガジンの煽り文句も凄い!
「すばらしい!」「でも載せていいのか!?」
編集部に激論を巻き起こした、余りにみずみずしい青春!
確かにメジャー週刊少年誌に掲載されるよりは、アフタヌーンとかのほうがフィットするような気もする。
だけど、あえてこれをマガジンに掲載さるのに意味があったのだろう。
「聲の形」はろう者、いわゆる音が聞こえない女の子・西宮硝子(ガラスと書いて『しょうこ』と読みます)とクラスの問題児・石田ショーヤのみずみずしい青春であります。
聲の形
4月17日、小学校のクラスに硝子が転入してくる。
いきなりノートに「はじめまして西宮硝子といいます」「わたしは皆さんとこのノートを通して仲良くなりたいと思っています」と書きだし、クラス中がざわつく。なにこの子…と。
自己紹介する硝子
「耳が聞こえません」
こうしてクラスに耳が聞こえない硝子が入るわけですが、当然浮くわけです。特に小学生ですので、耳が聞こえない硝子は格好の的となる。イジメの。
とは言っても、最初からイジメられたというわけでもなく、最初はそれなりにクラスメイトの一員ではありました。
硝子のノート(クラスメイトと筆記でやり取りしたもの)にも春先は「よろしく」「仲良くしよう」「またね」と楽しそうに過ごす様子が書かれています。
それが6月になると「ありがとう」「わかった」「気をつけるね」となり、秋には「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめんなさい」と綴られていく。これがリアルに残酷!
最初は耳が聞こえない子としてクラスに受け入れたのに、段々と真綿を締めるようにウザがられていく様子が強烈です。
決定的となったのは学校の合唱コンクールである。もちろん耳が聞こえない硝子が上手く歌えるはずもなく、クラスの足を引っ張りまくる。担任すら「ったく、誰だよこんな荷物寄越したの…」悪態を吐く始末である。というか普通にクズ教師っすね!
合唱コンクールの入賞を逃したのは硝子のせい…
というのがクラス中の認識になったわけです。それを黒板で堂々と悪口を書かれるのである。これを境に硝子は笑わなくなる。
西宮は笑わなくなった
硝子は笑わなくなり、ノートでクラスメイトに話しかける事もしなくなる。
ずーっと席に座ってじっと固まるように過ごす。
完全なる孤立である。そして孤立した硝子は、もう見るに堪えないイジメの的となるのでした。
これがね、もうすげっぇ胸クソ悪くなるの。しかも何かとあれば硝子はノートに「ごめんなさい」と書くのが切なさに輪をかける。界王様が「見ちゃおれん!」って目を逸らすレベル。
しかもさ、クラスで段々と浮いてく様子から孤立してイジメのターゲットになるまでを丁寧に丁寧にリアルに描くから、凄まじい現実的なリアリティなんですよ。読んでて胸が締め付けられていくっつーの!もう最悪の気分ですよ。胸クソの悪さが半端じゃない!
そのイジメの中心人物こそ「聲の形」の主人公・ショーヤであります。
イジメの中心人物であります
この漫画、は基本ショーヤの視点から見た硝子という形式で描かれています。
ナレーションも「俺は彼女が嫌いだった」「俺達は西宮という人種に疲れていた」とか注釈されるわけ。普通、少年漫画の主人公ならイジメをかっこよく止める側だろうに、イジメの中心人物だというのだから読んでて胸クソ悪さが留まる事を知りません!
硝子をイジメる日々が充実していたとかナレーションされたら、もはや読んでて不快のレベルです。もうねマガジン叩きつけたくなる衝動に何度も駆られました。読んでると不快指数がグングン上がる。「気分悪い!気持ち悪い!きのこの山食べたい!」の3Kです。
そんな硝子イジメで充実した日々に終わりがくる。
硝子が補聴器が5ヵ月で8個(損害170万円)も紛失または破損したので、母親が学校側へイジメがあるのではないかと訴える。で、当然クラス全員がイジメる側なんだけど、ショーヤ1人だけが悪い事にしてエスケープするの。担任含め、こいつらクズすぎるだろ。もうこの時点で不快指数MAXである。
で、胸糞悪いクラスはショーヤ1人が悪い事にして切り捨てて、今度はイジメのターゲットがショーヤに向けられる。なんなのこの漫画の不快指数は。読むのが苦痛だよママン。そして、イジメのターゲットになってショーヤは色々と考えるわけです。
色々と考える
「最近よく考えるのは西宮のこと。あいつが俺にこんなことされてる時、あいつは何を思っていたかだ。『ごめんなさい』、それだけ?それだけ?」
今まで硝子をイジメていてノートに「ごめんなさい」と書かれたのはそれだけじゃない、と。何考えてた?現にイジメられる側になった自分は色々考えているのに…。何を考えてたんだ!その疑問の答えは無し。だって2人はお互いの声が聞こえないから。
殴り合いの大喧嘩した末に硝子は転校してしまいました。
何も言わずに、結局何の会話もしないまま。転校した翌日から、硝子がイジメられて机に落書きされてるのを毎朝消してたのは、本当はショーヤの机を拭いていた事が判明し、「あいつマジムッカつく…」と言いつつ感動して泣くのであった。硝子まじいい娘すぎるだろ。
61ページの大作読み切りの「聲の形」ですが、ラスト7ページ以外読むのも苦痛な不快になるドギツイ内容です。
ですけど、この漫画が面白かったのはラスト7ページの感動です。「はじめの一歩」は休載ですけど、「聲の形」は最後の展開に救済されました!すごく綺麗なんだ。泣きそうになるんだ。みずみずしい青春はラスト7ページに有り!
話は飛んで5年後。
高校生になったショーヤと硝子が再開する。
これがね…いいんだ。
5年後に再会した2人
5年後に再会した2人はなんともいえない緊張感ある空気。
そりゃイジメた側とイジメられた側で最後は大喧嘩して別れましたしね。緊張感漂うピリピリした空気の中で、ショーヤは「やっと見つけた」と言いつつ手話を使って話しかける。
もうこれには硝子もビックリ仰天で頭に「?」マークです。
「なんで手話出来るの?」と聞けば一言文句言う為に覚えた、と。小学生の頃にお互いの声が聞こえればどんなに良かったのか、と。そんなわけでショーヤは手話を覚えて再開したのだ。
「最近よく考えるのは西宮のこと。あいつが俺にこんなことされてる時、あいつは何を思っていたかだ。『ごめんなさい』、それだけ?それだけ?」の解答を求めて。5年前にイジメていた時に、硝子は身振り手振りで意味不明な行動をしていた。
5年前に硝子が取った謎の行動
あの時は意味が分からなかった。
気味悪いとすら思った。
でも、これは手話だったのだ。
手話を覚えたショーヤは5年越しの答え合わせをする。
もうね、ヤバイ。僕の涙腺が!
5年越しの言いたかった事
俺と、お前、友達に…なれるか?
なんすかこれ。
すげぇ僕の瞳の琴線を刺激する。泣ける!
しかもさ、5年越しの答え合わせをする時の2人の表情がいい。恐る恐るしてるショーヤに対して、驚き赤面してる硝子。この時のシーンは一旦「間」を開けるコマを挟んでの2人の表情のドアップで、あまりにも見事で綺麗で清々しい青春を見ました。
しかも硝子の取った行動がもうね…。
これまた5年前にイジメられてた時にとったアクションと完全に一致だよ!
それはやっぱり5年前とデジャブるなって
友達になったのですか!それ以上ですか!
甘酸っぱいです!青春です!最高である!
やばいですね。この時の俺の頬の筋肉が。
ニヤニヤするっちゅーの!ラブコメ漫画が主食の僕は今まで何度となく頬を緩ませてニヤニヤさせてきました。
ですけど、この時の俺のニヤニヤは今までしてきたラブがコメってするニヤニヤとは一味も二味も違いました。だってさ、俺泣いてるんだよ。
泣きながらニヤニヤしてた。
信じられん。ドキツイ展開のオンパレードで胸糞悪くしたら最後の展開に感動して泣く。ここまではいい。でもさ、この2人のあまりにピュアなラブがコメりっぷりにさニヤニヤしないわけにはいかないじゃん。そりゃ泣きながらニヤニヤするっちゅーの。
感動とニヤニヤという融合ですよ。
終始「聲の形」はショーヤの視点でナレーションされてたんだけど、全て過去形だったんだよね。
つまり、5年後の高校生の時の時間軸から小学校時代を振り返る形のナレーションだったわけだ。「俺は彼女が嫌いだった」「あいつのことを嫌いだったか」とか、「嫌いだった」って過去形で。じゃあ今は?ニヤニヤが止まらねぇ!
しかもさ、ラストのコマがまたくそいい。
「あの頃の西宮と話せた気がした」と締める。結局、小学生の頃は会話が出来なかったけど、散々5年前とデジャブるニヤニヤ&感動の再開を果たした現在は?っていう余韻と感動の最後。でさ、この漫画の苦痛部分の小学生パートは、前述の通りショーヤの視点とナレーションなわけ。
5年前4月17日
ショーヤ視点じゃ前の席に座る不気味な奴ですよ!
この硝子の後ろ向きの姿が強烈に印象に残る。実際に後にノートで話しかけられても「知らん!」とまともに会話しなかったし。
席は前後だけど話さない、後姿が鮮明なのが4月17日のショーヤ視点の硝子である。このコマ(マガジン147ページ)を踏まえよう。
んでもって最後のコマ。
手話を習得したショーヤはあの頃の硝子と話せた気がしたんだ。
あの頃の西宮と話せた気がした
4月17日、日直は岩田と奥村。
あの強烈な壁すら感じる後姿の硝子がこっちを向いて話しかけた!クラスの背景も完全にマガジン147ページの硝子の後姿と一致である。あの日、硝子が後ろの席のショーヤに笑顔で話した「IF」。たとえばこんなメルヘン!
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