「さよならフットボール」が完結しました。
全二巻というのはちょっと短いような気もしますが、非常に素晴らしかった!収録された試合はたったの1試合。新人戦の1回戦だけ。
それだけに、主人公・恩田希がその1試合にかける情熱がビシビシ伝わってきました。公式サイトの説明は以下の通り。
体格に勝る男子と混ざりながらも、少女の夢は色褪せない。誰よりも速く、誰よりも強く、誰よりも上手になりたい――14歳。恩田希の青春は、加速する!!
希はテクニック抜群のサッカー少女。小学生の頃からサッカーを一緒にしてきた仲間が中学生となり、置いてかれていると感じるようになります。
女子が性別の壁にブチ当たるというのは、「パワプロ」の葵に始まり、「童夢くん」のメロディ、「クロスゲーム」の青葉…と野球作品にはよくありました。
希はサッカーの試合に出たいと思いつつも出して貰えません。監督もサッカーの実力は認めているものの試合には出してくれません。なぜ出れないのかと言えば…。
試合には出れない
女の子だから。
性別という大前提。女子が男子の試合に出れないのは、フィジカルの違い。「ファンタジスタ」の近藤もフィジカルの重要性を述べていましたが、サッカーにおいてフィジカルは重要な要素。希もフィジカルの重要性は理解しています。
「どうしても骨格が許さない。筋肉の蓄積量も違ってくる」「ただね、それ(フィジカル)だけで『男の方がレベルが高い』って顔されると、『違うよ』って大声で言いたくなるの」「フィジカルは全てじゃない…でも、全ての中の一つなのよね」男女でフィジカルが違うから試合に出られない。
そして、新人戦1回戦の相手には自分がサッカーを教えた幼馴染がキャプテンを務める強豪校。久々に再開すれば希よりも上手くなったと言い切られ…。
「サッカーはフィジカルだ」
「体のデカイ俺に女のお前が、敵うわけがない」
「その身体で何が出来る?」
サッカーを教えた幼馴染に再会して
ヘタレで泣き虫だった幼馴染はデカイ体に成長して堂々と宣言。新人戦1回戦で当たる事になりどうしても試合に出たいのに出れない希は、弟になり変わって試合に出場。
さあ、雌雄を決しようじゃない!
「見せてあげるよ。女の私が男のあんたに、何ができるのか」と、女子の希が男子の試合に出て、フィジカルだけではないと証明しようとしますが、何度も当たり負けをして吹っ飛ばされます。そして、途中からサッカーを楽しむようになり…。
途中で挟まれる回想シーンから、サッカーをしている時の楽しさ、動きの躍動感や迫力…と、半端じゃない面白さ。個人的に、希の幼馴染でサッカー部のマネージャー佐和ちゃんの台詞が光ります。
佐和ちゃんの言葉(1巻)
「ノンちゃんのフットボールには夢がある」
いやぁ良い言葉ですね。フィジカルゴリ押しのサッカーはつまらないと言った後の台詞。この後「本気になったノンちゃんを止められる人なんかいないんだからね」と希を励ましていました。
これと同じ台詞を、試合中に再び。三人に囲まれた希ですがヒールを使って華麗に交わし抜き去ります。
佐和ちゃんの言葉(2巻)
「ノンちゃんのフットボールには夢がある。だから、みんなを魅了しちゃうんだ」
1巻では希のフットボールには夢があると述べられていましたが、2巻では続きとして「だから、みんなを魅了しちゃうんだ」と続いていました。
圧巻なのはその描写。今まで声援や選手の声や激しい音などが一切掻き消えて、ただただ静かに希の華麗なプレーだけが描写されていました。希のプレーだけが淡々と描かれ、文字通り誰もが魅了されている感じ。そしてナメックが見とれながら「すげぇ…」と。
また3話で描かれた「俺達はこのままずっと一緒なのかな」という疑問。導き出された解答は「俺達はずっと一緒で、俺達はまた―始まるんだ」というもの。
2巻で終わって、もっと続いて欲しいとも思いましたが2巻で終わり一気読みするには丁度いいのかもしれません。
「さよならフットボール」というタイトルは文字通り、女の子の希がフットボールにさよならという意味合いかと思いましたが、「また始まる」と作中で述べられているので、今後の希がどうなるか読んでみたいような。
サッカー漫画としても、青春成長漫画としてもマーベラスでした。とにかく荒川直司先生の次回作に期待したいところ。
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