『ナナメにナナミちゃん』(吉谷光平)読了。
表紙のコメントは各方面に喧嘩を売ってるかの仕様ですね(褒めてます)。何事も斜めに構えるナナミちゃんと親友ジュンちゃんの日常のアレコレにまつわるショートコメディ漫画なり。
『ワ○ピース』だけでマンガ好きを語るな! 「みんなで頑張ろう」の「みんな」はイカしたやつだけ! 誕生日プレゼントは、相手にお返しをしなければならない押し付け契約! そう! 彼女は、斜に構えたガールのナナミちゃん! 彼女の三白眼を通せば、世の中は「裏」だらけ! Twitterで話題の漫画家・吉谷光平が贈る鋭角こじらせコメディ! 素直じゃないないけれど、そこが可愛い!
<試し読みできます>
吉谷光平先生というとWEB界じゃ、30秒で泣ける漫画「女、男ってやつは」が特に有名ですね。よくツイッターで見かけるショート漫画作品の作者でもあります。ツイッターをやってない方も見た事ある方は多いのではないでしょうか。
ショート漫画「女、男ってやつは」 あるカップルの一生の漫画です。 pic.twitter.com/L13WgjUeKG
— 吉谷光平 1月20日ナナミちゃん発売! (@kakikurage) 2016年3月26日
ショート漫画「それでも君が好き」まとめ。 あるカップルのあるある話です。 pic.twitter.com/5qvDFTyRc8
— 吉谷光平 1月20日ナナミちゃん発売! (@kakikurage) 2016年3月26日
時に感動させたり、ニヤニヤさせたり、ほっこりさせたり、物事の本質を付くショートコメディを描く。そんな吉谷光平先生の初コミックが『ナナメにナナミちゃん』である。味わい深いショートコメディは健在です。笑える、グッとくる、共感する、考えさせる…とエピソードによって受ける印象は様々。
何事もナナメに捉えるナナミちゃん
何事もナナメに捉え意見するナナミちゃん
募金活動を偽善と言い出すにはじまり、カラオケは拷問、「全然勉強してない」なんて言う奴は絶対勉強してる、海外行けば何となく価値観が広がる建前で~…等々、日常のアレコレを斜めに捉えて皮肉るのがナナミちゃんです。下を向いて堂々と生きています。まあ、ほとんど強がりなんですが。
ナナミちゃんはリアルで本当にいそうな「典型的な面倒くさい人」なんですよ。触るな!危険!みたいな。しかも、クラスのヒエラルキー下層からの皮肉だからね。下からリア充どもに物申す。
例えるならナナミちゃんは、はてなブックマーカーぐらい捻くれた根性の持ち主なんです。うわ…この娘、めんどうすぎ!世間への意見も強がりだったり、八つ当たりだったり。ナナミちゃんは一体何と戦ってるんだとやるせなくなること多数。
ナナミちゃんは見えない敵と戦っている
ここまでふっきれていると、それはそれで「格好いい」と感心しなくもないですけどね。でも、本質は「嫉妬、羨ましい、強がり」などのアレな感情からくるものなんです。格好良くはんは無い。断じて無い。むしろダサい。
しかしながら、流行や世間的に清い&正しいなんて価値観をとにかく否定するナナミちゃんの生き方にはシンパシーみたいなものを感じてしまうのも事実なんですよ。その気持ちはよく分かっちゃうんです。まことに悲しい事に。大変遺憾ながらも。誰もが持つ感情でもあるんだよなぁ。
言い換えればナナミちゃんは大多数の集団行動の闇と戦う勇者である。また、物事をただ斜めに捉えるだけはありません。結構深いテーマまで切り込んだりします。
ナナミちゃんはコラムニスト!
ほめられた時の対応は難しい(#26)
吉谷光平先生の描くツイッターなどで出回ってるショートコメディはショート漫画でありコラムニストとしての一面もあります。そういう側面があるのが26話「ナナメにスポーツテスト」や29話「ナナメに新商品」などかな。
エピソードによっては当たり外れがあるかも。1話完結形式で「日常のあるあるネタ」から深いテーマを掘り下げるコラム的なものまで様々。27話「ナナメに友達の友達」が一番笑った。あるあるすぎて。
全体的な傾向として、個人的にミクロに日常の出来事を斜めにニヒルに構える話よりも、マクロに「人生とは?」「友情とは?」「大切なものとは?」と大々的に訴えかけるようなテーマのほうが心の琴線に触れるかな。心にズシンと響きます。
ある意味では哲学的なのが『ナナメにナナミちゃん』の吉谷光平先生の魅力でしょう。哲学とは考えることである。26話「ほめられた時の対応は難しい」ではサブタイそのまま内容で色々と考えてしまう。
以外と深いぞ…
深いぞ…
ナナミちゃんが何でこんな性格なのかといえば、たまに描かれる過去エピソードで把握で読者は推測することができます。若者が新商品・流行モノに飛びつくことを否定したナナミちゃんですが、実は家が貧乏だった過去エピソードがあります。
随所に挟まるナナミちゃんの過去話がなかなかどうして。キャラを掘り下げるし良い話が多い。こういう描写はナナミちゃんをより細かく理解できるし、ナナミちゃんの親友ジュンちゃんも身近に感じられます。積み重ねがある。
最初は、面倒くさいナナミちゃんに付き合うジュンちゃんはただ良い子って印象だったけど、それ以上に2人には絆のようなものがあると分かり胸が熱くなります。ナナミちゃんとジュンちゃんはいいぞ。ナナミちゃんを一番分かってるのはジュンちゃんで、逆も然り。2人の友情に乾杯。
ナナミちゃんとジュンちゃん2人は仲良し!
ナナミちゃんとジュンちゃん
( ;∀;)イイハナシダナー
特にお気に入りは特別読み切り「ナナメに夏休み」。2人でツーリングに行く話なんですがほっこりしてとても良い話。『ナナメにナナミちゃん』は、日常のあるあるネタをテーマに、笑ったり、共感したり、様々な楽しみ方ができるけど一番はナナミちゃんとジュンちゃんの友情なり。
読んでて心温まるエピソードばかりです。2人が並んで歩くシーンは特に綺麗でマーベラス。幸福感が半端じゃない。ナナミちゃんは、何事もナナメに捉えて捻くれてるしヒエラルキーも下なんだけど、なんのかんのでジュンちゃんと一緒で幸せそうなんです。
人が幸せそうにしているところを見ると自分も幸せな気持ちになる「ほっこりした」を味わえる。ナナミちゃんとジュンちゃんの仲良しは心の底からほこほこします。まる。
コメント
アンテナが広いというかよくいろんなマンガ見つけてきますねぇ