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『僕だけがいない街』総括 堂々の完結!最高のラストだった件


僕だけがいない街(8)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)
 

表紙に誰もいない!

 

『僕だけがいない街』8巻読了。

これが最終巻です。感想はズバリ最高だったの一言です。

 

ダラダラ続くことなく人気絶頂のまま綺麗に終わりました。最後まで緊迫感のあるスリルを味わいながら迎えた大団円はとても感動的でしたね。最終8巻は今までの伏線の怒涛の回収がみごと。

 

<関連記事>

『僕だけがいない街』7巻 アイリは始まりと終わり
...

https://yamakamu.net/post-696

 

『僕だけがいない街』の特徴はくどい説明などほとんどなく、練り込まれた設定や伏線&回収を簡潔に魅せる描写の数々が挙げられます。何も考えずにボケーっと読んだり斜め読みだと隅々まで堪能できません。

 

例えば、41話「待たせたね 2005.08」で悟は記憶が戻ったことをケンヤに電話で報告する過去回想があります。これは39話で描かれたシーンを別角度で描いたものなんですが、読者によっては何で同じ事をやるのかと思う人もいれば、「うおお!そういうことか!」と納得する人もいるでしょう。


1
41話「待たせたね 2005.08」の過去回想
 

ケンヤと澤田のやり取り。

 

悟から記憶が戻った電話を貰ったケンヤは「『記憶のフタ』は開かないようすね…」と澤田に述べ、澤田は「じゃあ、『僕の顔も思い出せない』って事か…」と外にコーヒーを飲みに行きます。そして外に出たらケンヤと澤田はグータッチ

 

言葉でいちいち説明していませんが、これは凄い攻防である。

39話にもほぼ同じシーンが描かれますけど、

 

この時は2人のグータッチが描かれていません


2
39話「愛梨 2005.08」の同じシーン
 

 

39話の時点では、悟は記憶が戻ったはずなのにケンヤは澤田に記憶が戻ったと伝えないのは何故なのか?というね。

 

仲間であるはずの澤田に悟の記憶が戻ったことを教えないなんて、ケンヤか澤田には何かあるのではないか…と思いきや、実際は41話で八代に盗聴されていることを踏まえていたと分かるわけです。八代を出し抜いてやったぜ!みたいな。

描写で魅せるのがこの漫画

状況をわざわざ言葉で説明しないで描写だけで魅せる。

これが『僕だけがいない街』の真骨頂なり。何気ない描写が意味がある。
1コマ単位でじっくり読めます。

 

 

(※ここから核心的なネタバレ有り)

 

 

そんなわけで8巻の「悟VS八代」はものすごい攻防でした。
種を巻いて、そこから発展していく最後の攻防は手に汗握りまくり。きちんと読者にもヒントを提示して、ミステリー漫画の極みを見ましたね。


3
41話
 

久美ちゃんは携帯メールで佐和子から「お弁当配るから手伝いに来てくれる?」とメールを貰っい実際に行ってみれば佐和子は弁当が多すぎて一回では運べないと困っていました。

 

久美ちゃんが来れば「ナイスタイミング」と偶然久美ちゃんが来た反応。

佐和子は久美ちゃんに携帯メールなど送っていない事が分かります。

 

佐和子は携帯電話をすでに八代に盗まれているのでした。
読み返すと40話で八代が佐和子のバッグを受け取っているのが


4
上40話 / 下41話
 

つまり、実際にメールを送っていたのは八代で、佐和子の携帯から久美ちゃん送れるか実験をしたのでしょう。

 

メール通りに動く久美ちゃんを確認した八代は最後の勝負の計画を実行します。普通なら携帯盗むシーンを描くものですが、そこを描かずリアルタイムで読者に推理させる余地があるのがいいね。

 

また、久美ちゃんだけ八代が手渡しでスケジュール表を渡しています。後に久美ちゃんのスケジュール表が細工されていたことも判明します。後で読み返すと「うおおおお!」となるのが面白いところ。

 

一方の悟は八代に佐和子の携帯が盗まれているのを踏まえて行動します。

久美ちゃんへのメールをj必ず自分経由するようにし、ケンヤに久美ちゃんの居場所を逐一報告し、佐和子を偽る八代が送ったメール「やまぶき荘に来て」「りんどう荘に来て」と書き換えて転送。


5
書き換えて転送する悟
 

やまぶき荘を訪れた八代ですが、悟にしてやられたので誰もいません。

凄い攻防である。読者にヒントを見せてつつ、尚且つ悟と八代の攻防戦を描く。

 

ミステリー漫画の最終対決に相応しい一進一退の戦い。それも以前に八代にやられた携帯偽りメール(悟を装ってアイリに送った)の経験があったからですから。使った読んでて震えたね。

 

これぞ最後の戦い。いままでの集大成って感じでしょうか。実際に佐和子が八代に気付くシーンもデジャブなような描写でしたし。「八代に会う→ネギ折る」は5話とまったく同じ流れだし。

 

熱い攻防の末に相対する悟と八代。


6
悟と八代
 

 

うおおおおお!

 

この展開にうおおおお!と熱く叫ばずにはいられません。

ついに相対した2人。うおおおお!ですよ。

 

久美ちゃんを巡る戦いは、悟の勝利である。

がしかし!久美ちゃんを巡る攻防はこれで終わりでも、相対した2人の会話の数々は真の意味で最後の戦いって感じですね。はい。

 

今までの集大成です。

2人が語り合うだけで震えるぞハート!ですよ。

 

43話「告白 2005.08」ではサブタイトル通り、小学5年生が3度あったと告白する悟は告白をします。それを聞いた八代はケンヤですら信じなかった悟のリバイバルをあっさり信じます。


7
あっさり信じる
 

「世界中で唯一人、僕だけが信じられる話だ」

悟のリバイバルを世界中で自分だけが信じると言う八代。

鳥肌が立って震えましたね。お互いが相手だったらこうすると信じた末の久美ちゃんを巡る攻防戦の後だけにね。もちろん合点がいく事象が多かったのもあるんでしょうけど。

 

「ケンヤでさえ信じなかったよ…」と言いつつ、信じると言われた時の悟の面も実に良いね。驚きも何もなく八代なら絶対に信じるという確信があったのか、不敵な笑みのような安堵したかのような笑顔。もうね、こいつら互いに通じ合ってるなと。

 

八代の「僕たちは似た者同士なんだ」に全てが収束されていた。

やっていることは真逆だけど行動原理が同じなんだもん。


8

心の中に空いた穴を埋めたい

 

悟の行動の原動力になった言葉。

「足りない何かを埋めていくのが人生」というもの。

 

この言葉は悟を前に進ませる魔法の言葉であります。

17年前の事件、目覚めてからのリハビリ、「足りない何かを埋めていくのが人生」を胸に不屈の闘志で頑張った悟。何度も悟が回想したり口に出しました。勇気付けられました人生哲学。

 

記憶を失っても忘れなかったしっくりくる言葉である。

悟の心の中に空いた穴を埋めたいという行動原理。

 

「その言葉」をはじめて聞いたのは小学校卒業式の日。

八代が卒業式に卒業生へ送った言葉でした。


9
贈る言葉
 

「小学校は今日で卒業だけどみんなまだまだ足りないことだらけだ。それはこの僕もだ。だけどその足りない『何か』を埋めていくのが『人生』だと僕は考える」

 

この言葉は最初の人生で心にポッカリ穴が開いていた悟の心に刺さりました。

悟の中の人生哲学ともなった八代の言葉ではじまったわけです。

 

「勇気ある行動の結末が悲劇であっていいハズがない」もそうですけど、いまの悟を形成させたのは八代が発した言葉だったわけである。ピッコロの言葉を借りるならば、将来最も恐ろしい敵になるかも知れん奴を育てようとしている!ですよ。まあ八代は最も歓喜を貰ってたけど。

 

八代自身はこの人生哲学をはじめて悟ったのは兄を冷めた目で見ていた時です。

八代は兄を見ながら「足りない何かを埋めていくのが人生」と理解するのでした。


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心に空いた穴を埋める代償行為
 

また、八代がよく使う「代償行為」というワードも兄を冷めた目で見ていた時ですね。

兄が自分の中に居ると述べる八代にとっての人生とは、心に空いた穴を埋める「何か」の代償行為(女児殺害)だったのでしょう。

 

 

本人が「スパイスの存在を感じる事」の代償行為と述べてますし(40話)

しかし、八代は代償行為などもうしなくなりました。

心の穴を埋めてくれる「何か」を見つけたのです。それが悟です

 

「スパイスの存在を感じる事」以上の喜び。スパイス及び代償行為は「生」を実感できたけど、悟は「生」の喜びを与えてくれたのでした。

 

心の穴を埋めるためにお互い歩んで来た人生。
そりゃ燃えるっつーの。やってることは真逆でも似た者同士。宿命の対決だもんね。

 

ところで、クモの糸はなんだったんだろうか。

 

八代にだけ見えるクモの糸。これが見えた相手は「何をすべきなのか」とか「答えは決まっていた」とクモの糸を切断(殺害)していました。


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クモの糸
 

悟の頭上を見上げて「何も無いよ」「『無い』んだ。あの頃(小5)の頃も今もそれは変わっていない」と言う八代。悟の頭上にはクモの糸が無い。そして悟と心中をしようとするのでした。

 

八代は今まで殺害してきた女児からクモの糸が見えていたのかは分かりませんけど、クモの糸が見えた相手は絶対に切断していました。1度は失敗している、クモの糸が見えない悟を殺せるか挑戦したかったのでしょうか。

 

結果は、歩けるようになっていた悟に助けられる形で死ねませんでした。
ちなみに、八代自身にはクモの糸があります。八代の頭上には悟と相対する直前までクモの糸があることが確認できます。


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悟と相対する直前までクモの糸はあった
 

八代はクモの糸が見えない悟に対して37話で「過去、僕が唯一殺す事が出来なかった君だけが」と語っていました。37話は佐和子のモノローグから八代のモノローグに変わる衝撃的な回だったけど、特筆すべきは八代の「悟は必ず目を覚ます。」確信していることでしょう。

 

実際に、佐和子は40話で回復した悟とのピクニックを「こんな日が来るなんてね…」と感慨深く言ってるのに対して、八代は「この日が来た」と最初から分かってましたって感じだし。これは悟がクモの糸が見えてなかったからこそ由縁なのかな。

 

クモの糸が無い悟を殺害する。いや出来る。

 

なんたって八代自身にはクモの糸がありますから。狙った獲物は、クモの糸があれば100発100中でぶっこおす八代ですしおすし。

 

大魔王バーンの「知ってるか?大魔王からは逃げられない」をも超える「知ってるか?クモの糸からは逃げられない」ですよ!最後の勝負は自信のクモの糸の切断で、クモの糸がない悟まで殺せるかの運命の対決といったところか。

 

結果は殺せませんでした。

さらにクモの糸があった自分も殺せません。それどころか、悟に助けられて八代の頭上にあったクモの糸が消えていました


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さっきまであったクモの糸が消えた
 

悟がクモ糸の運命に打ち勝ったといったところでしょうかね。

うむ。「悟VS八代」の最終決戦とても満足度が高かった。

高田延彦風に言うならば、鳥肌立った!です。

 

そして迎えた大団円の最終回「僕だけがいない街 2012.01」。
とても読了後の余韻が素晴らしかった。悟が関わってきたキャラたちのいまが描かれます。どのキャラも幸せそうでした。くぅぅー!感無量という他ないです。

 

ラストは悟の成長っぷりが伺えますね。例えばいままでは佐和子の携帯登録が「藤沼佐知子
携帯」となっていましたが、リバイバルを繰り返して辿りついた最終話では「母
携帯」と登録名が変わってたり。悟の中での佐和子への変化が分かります。

 

特筆すべきは、やはり悟が踏み込むようになったことでしょう。


14
上1話 / 下最終話
 

そもそもこの『僕だけがいない街』の最初は、悟が漫画家としてダメ出しされるところからはじまります。ダメ出しされた「踏み込んでいない」は自分でも分かっていました。でも、悟自身は「踏み込むのが怖い」と踏み込むことに恐怖。自分には何も無いからと。

 

それが最終回で悟は漫画家として成功しています。

リバイバルを繰り返し、踏み込むことが出来るようになったのです。何も無い…からヒーローになったのです。悟の成長を感じられ、みんな幸せそうな大団円といえるラストで胸が熱くなりました。

 

ラストはアイリと結ばれるような描写でした


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2012年に再びアイリと出会う
 

最終回は2012年なのでアイリは23歳ってところでしょうか。

持ってる荷物からカメラマンになるという夢を叶えたんでしょう。

 

雪の足跡は2人が並んで歩む足跡を刻んでいくだろうことが伺えます。

なるほど、アイリと2人で歩むのか…と感慨深くなったのも事実です。

 

だがしかし!しかしである!
あえて声を大にして叫びたい!久美ちゃんはどうした!と。

 

2012年なら久美ちゃんは17歳ぐらいかな。久美ちゃんはどう見ても悟に惚れてたかからね。水筒の関節キスとか、超ニヤニヤしたのに。高校入学合格通知を悟に見せにくる様子からして絶対にまだ悟が好きだよ。間違いない(確信)。

 

16
久美ちゃん
 

このままアイリと足跡を刻む?

久美ちゃんどーすんだよ!これじゃ久美ちゃんだけいない最後ですよ!

 

報われなさ過ぎるでしょ。かわいそうでしょ。このままアイリと仲良くなったらヤキモチ焼きまくる久美ちゃんが見えるぜ。それはそれでニヤニヤできるが。久美ちゃんがどうなったか私気になります!

 

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ヤマカム

コメント

  1. 匿名 より:

    お母さんの名前は「佐和子」じゃなくて「佐知子」です。

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