『べしゃり暮らし』最終巻なり。
噛みしめるように読破しましたとも。
もともとは学校の爆笑王・上妻圭右の高校青春物語…が、実はそれが前振りでお笑い養成所に入り、ライバルも出そろいM-1のような大会MNCを勝ち抜いていく。終盤の展開がね。いいんだ。めったくそ泣けるんだ。
泣きましたわー。
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大感動である
『ろくでなしブルース』『ルーキズ』もそうなんですけど、森田先生って「人情」とか「男気」を描くのが本当に上手い。『べしゃり暮らし』もカープの黒田選手ばりに「人情」や「男気」が溢れていた。ラストの潤三さんの「にしし」は胸に熱いものが込み上げてくるでしょう。
潤三さんが最期に見せた笑顔はいつかの相方のようだった―ってナレーション入れたくなるぐらいの笑顔だった。
『べしゃり暮らし』の最萌えキャラは辻本の父・中西富美男さんで満場一致なんですけど、病院での潤三さんとのやり取りは涙無しでは読めないね。めったくそ泣いた。
おっさんを描かせたら随一の実力の森田先生の力を拝見できました。魅力的だけどダメなおっさんキャラが素敵すぎる。富美男さんの人としてかなりダメな感じはトキメキざるを得なかった。おっさん萌えの極地を見ましたね。
この作品の最大のテーマは「相方とは?」という問い。
漫才のコンビだけなく、夫婦にしても、親友にしても…。
結論はとってもシンプルで普遍的なもの。
そこへ向けて「べしゃり暮らし」の2人だけでなく、他のコンビも辿りつく…というラストだった。グッときたね。
しかし、読み返してみると「相方とは?」という問いは随分早い段階で答えが描かれていたような気がする。藤川と金本のデジきんのエピソードで。それを自分で見つける紆余曲折が人生なのかもしれない。
また、『べしゃり暮らし』って名言や至言が多かったけど、格別に胸を打つのは凡人の悲痛な叫びでしょう。
「天才」と才能の無い「凡人」をきっちりと分けて描いていた。悲しくなるほどに。デジきんの藤川もそうだったけど。
特にるのあーる梵の「もし才能が売ってるなら借金してでも買いたい」と涙ながらの苦悩の描写は何度読んでも胸が詰まる。べしゃりの辻本も圭右の天才ぶりを目の当たりにするうちに自分の凡人っぷりに悩む。
こちらも辿りついた答えはとってもシンプルで普遍的なもの。
努力と覚悟。
世の中には天才(無くても強運)はいる。自分には無い。
じゃあどうするか。そこで腐らず、覚悟を決めて努力する。やるしかない。やり続けるしかない。努力できる才能を持っている人こそ本当の天才。という結論は王道ながらも正道でリアルだと思う。
これも早い段階で答え出てるんですよね。10巻の「売れるための絶対の方法がある。それは売れるまで絶対にやめないこと」(ただし売れるとは言ってない)。これはお笑い芸人だけでなく何にでも通じているでしょう。
改めて見返すと、『べしゃり暮らし』ってどう見ても天才&天然で突っ走る圭右じゃなくて何度も壁にぶつかって悩んで答えを見出し突破する辻本が主人公だったよな。
しかし、改めて『べしゃり暮らし』の構成の上手さは舌を巻く。
1話冒頭のシーンを覚えているだろうか。
漫才師2人が「ひとみちゃん」ネタで会場の爆笑を誘っているシーン。
実は『べしゃり暮らし』はここに到達するために用意周到に描かれた作品であった。
最終巻のカバー折りで森田先生は以下のようにコメント。
連載漫画は、全体の流れよりも。その週その週の面白さの方を優先させるべきで、多少の矛盾には目をつぶり、作者自信もこの先どうなるんだろうと、あまりはっきり先が見えないほうがいいというのが、これまでの僕の作品作りのスタンスでした。でも、この作品においては、ものすごく綿密にキャラ設定をしたり、エピソード等があとづけにならないように、年表を作ったりして気を配り、おおまかではありますが、最初から最後までの流れも決め、ラストのコマも決めて連載に臨みました。
これがまったくその通りなのだから恐れ入ります。
1話冒頭の2人の芸人の「ひとみちゃん」ネタ。
それがラストに繋がるんだからブルっと震えるってもの。
「いやー思い出すな、高3の秋に俺ひとみちゃんに告られたんだよ」と始まったネタですが、実際に高校時代に沢尻ひとみちゃんに告白され付き合ったり、勘のいい読者なら気付いた事でしょう。冒頭の2人はべしゃりの2人だって。辻本の母親もひとみですしおすし。
あれ?でもそうすると、ボケと突っ込みが逆じゃね?
そこが圭右の記憶喪失を使って本当にボケと突っ込みを本当に入れ替えてしまうってんだからね。そうか、記憶喪失も最初から計算してたのか。ラストの漫才は鳥肌ものだよ!
1話の冒頭と同じネタ
即興でアドリブで1話冒頭のシーンと同じネタに繋がった。
漫才後に「このくだり今度は台本に入れて行くぞ」と、即興のネタが「べしゃり暮らし」の持ちネタになる事が伺える。1話1ページ目のあの漫才は、2人のこれから先の未来の姿だったのであろう。連載開始前から決めてたというラストのコマ。未来へ向かっていた。まる。
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コメント
熱い感想でした。まだ読んでいなかったのですが、読んでみたくなりました。