『善悪の屑』の第二部としてスタートした『外道の歌』(渡邊ダイスケ)(一部にあたる『善悪の屑』を知らなくても『外道の歌』単体でも楽しめる仕様ではあります)。最近まとめて一気に読んだんですけど、これはなんとも言えない読後感ですね…。確かに黒い意味でカタルシス満載ではある。人を選ぶけど、私はスカッとしてしまった。遺憾ながら。
書店も電子書籍も超話題の売れ筋コミック「善悪の屑」の第2部!法で裁けない屑には屑による直接制裁を!復讐代行人の一人「カモ」の過去が遂に明らかに!?残酷でも読み終えた後にスッキリする本当の「正義」の意味を問う問題作!
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簡単にストーリーを説明すれば、実際にあった胸クソの事件を題材にした法では捌けなかった(&軽すぎる刑)の加害者を「復讐代行人」の2人が被害者に代わって復讐を実行するというもの。
雰囲気は『闇金ウシジマくん』に近いかな。ウシジマくん好きなら気に入ることでしょう。グロくバイオレンスで猟奇系です。それで読後の爽快感はウシジマくんの「ギャル男くん」「洗脳くん」のようにザマーミロ!って思う事も請け合い。
しかも、誰もが目を背けたくなるような、おざましい実際の事件をモチーフにしてるからね。加害者が私刑されると納得してしまうのも事実である。これは確かに問題作なのかもしれない。ちなみに「残虐性が強い」「私刑を正当化している」という理由で東京都に不健全指定にされています。
>http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/668/668siryou2.pdf
でも、これほど人間の本性や弱さや悍ましさを感じるのはないと思う。
復讐代行人・カモ
外道の歌
『外道の歌』になってからは、主人公のカモこと鴨ノ目武の4年前のエピソード。なぜ復讐代行人をするようになったかが描かれます。妻と娘が殺害され、犯人は警察官僚の息子で不問になりそうだと刑事の叔父に聞かされ自ら復讐する。下地は「光市母子殺害事件」かな。
カモのバックボーンは予想の範疇だったけど、きっちり描かれたことでより一層カモのキャラクターとしての細部や心情が理解できましたね。どこにでもいるただの父親でリーマンだった男が「復讐代行人」となるシーンは素直にかっこよかったし、これからもどんどんやっちゃって下さいと思いました。はい。
復讐代行人・カモ誕生
刑事の叔父(色々と揉み消してくれます)に向かって、何の為に代わりに復讐するのかと問われれば「誰もやろうとしないから」「他の誰にもできないことだから」と宣言したのはうおおおおお!となります。
クズをさばく外道。決して良い意味で正義ではないけど、道徳的にもまずいけど、褒められたことではないけど…。それでも、まぎれもなく「正義」である。
読了後のスッキリ感よ
法で捌けない加害者をガシガシ私刑するのがこの漫画の特長。「被害者から依頼」→「法で捌けない(軽い)加害者を拉致監禁」→拷問イエーイ!というのが基本パターン。これが妙にスッキリするんだ。
例えば、「神戸連続児童殺傷事件」の酒鬼薔薇聖斗。鬼畜の所業で死刑になってしかるべきですが未成年だったので今では社会復帰してしかも小説まで出しました。「うわぁ…」って思う人も多かったけど、そういう加害者を被害者の無念の代わりに依頼を受けて私刑にしてしまうのが『善悪の屑』『外道の歌』である。まだこの事件は作中で描かれてないけど、そのうち描かれそう。
特に第一部にあたる『善悪の屑』はダークな爽快感が半端じゃありません。
ダークな爽快感
読めば一発で分かるモデルとなった胸クソ事件を漫画でフィクションでとはいえ、被害者の無念を晴らすように復讐する様は綺麗事抜きに誰もが共感してしまうのではないでしょうか。少なくとも僕は共感しまくってスッキリしていいましたね。独特とか法律ではまずいんでしょうが…。
リアルの「大津市中2いじめ自殺事件」「女子高生コンクリート詰め殺人事件」「尼崎事件」「世田谷一家殺害事件」「スーパーフリー事件」「附属池田小事件」…等々をモチーフとして加害者のクズ野郎にそれ相応の報いを与えていく。これが元ネタを知ってれば知ってるだけ「ザマーミロ!外道が!」と読みながら黒くスカッとしてしまうんですわ。
「復讐は何も生まない」ってのは本当か?って、ど真ん中に問うてるようでもある。理不尽な目に合された被害者の気持ちは当事者しか分からんしね。目には目を、歯には歯を、悪人には外道を!である。これに共感する人は道徳的にはおかしいだろうけど、共感できないのは人としておかしい気もする。人の内面にある本質やダークな部分を掘り起こしてきます。
『外道の歌』はどこへ向かう?
『外道の歌』
路線を変更したのか『外道の歌』は読んでてスカッとしないんですよね。というのも加害者にもスポットを当てて犯行に及ぶまでを詳細に描き、どっちつかずでモヤモヤしてしまう。加害者も刑期後で人生投げやりで「ザ・外道」じゃないし。
意識高い系といいますか、「許す事が人間として正しい事なんだとしたら…許せない私は…人として間違ってるの?」と深く提唱してくる。これはこれで「加害者」「被害者」の観点では大きなテーマなんでしょう。色々と考えさせられます。しかし、自分はこの作品にそんなの求めてないんだよなぁ。
クズを成敗する外道でスッキリと黒い本音を掘り起こして欲しいわけで。どうも『外道の歌』はモヤモヤが晴れん。まあ、ド畜生の園田夢二が控えてるので今後に期待したいところです…。
ド畜生・園田夢二
園田夢二
『善悪の屑』でカモたちから逃れ『外道の歌』でも健在の園田夢二である。漫画雑誌「ゴアゴアコミック」の編集者で自身も隠れて漫画家を目指してます。リアリティのある人の気持ちを知りたいと作中でもかなりの殺人事件をしてるまじもんのキチ。
まさに畜生畜生アンド畜生っぷりを存分に見せているので、はやくカモたちに捕まって拷問受けないかなぁって期待してる男。狡猾でなかなか捕まりません。『金田一少年の事件簿』でいえば高遠みたいなポジションです。まじもんのサイコ野郎。
こいつが捕まると今までで一番のスカッとした気持ちよさを味わえそうです(ゲス顔)。
『善悪の屑』『外道の歌』は人を選ぶがいいぞ!
正義の反対は悪ではなくもう一つの正義である。裏を返せば悪の反対はもう一つの悪である。綺麗事や理想では通用しない人の身の毛のよだつ汚いとこをさらけ出してくれる。同時に、美しいとすら感じてしまう。道徳や法律では計れないドス黒い共感がある。これは人間賛歌のようでもあります。
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コメント
読んでた
山田さんが読んでるのはまだしも感想まで書いてくれたのは正直意外な感じ
彼の教師も、己の都合の悪い時丈、綺麗事言ってますから、益々、善人面為る連中が信用出来ませんね
善悪の屑は最高です。
ファンが増えていけばうれしいです。
そうじゃないんだよな。
虚無感でしか救えない心ってあるのよ。