『あんじゅう』(幾花にいろ)読了。めちゃくちゃ良い。特に山場とかなくダラダラ過ごす女性2人の作品。日常漫画の中でも最高傑作なのではないかってぐらい味わい深い。
女子ルームシェア二人暮らしを定点観測する「楽園」web増刊の人気連載がコミックスに♪先輩と後輩、二人の女子の魚焼き用グリルでピザを焼いたり、猫飼いたい欲を代替したり、買い物中の会話を楽しんだり。さあご一緒に。
女性2人の同居生活
基本的にルームシェアしてる女性2人がダベったりするだけの日常系なんですが味わいが深い。
1話
こんな感じで2人のやり取りをニヨニヨ楽しんできます。読み進めれば読み進めるほどスルメのように味わい深くなるんですよね。「うおー!面白れー!」とかそういう系統でなく「良いな…(しみじみ)」って感じ。
これが読めば読むほど良さが分かってくるし、話が進めば進むほどに世界が徐々に広がっていく。世界観や設定が理解できてくる。この味わいは何の説明もしないことに尽きる。
なんの説明もない
まず何の説明もなく2人が一緒に住んでること。2人は先輩後輩であること。おおよその年齢やフルネームが読み進めていくことで判明していきます。
0話
普通ならキャラの自己紹介のナレーションとか、もしくはそういう心の声(という名の実質自己紹介)からはじまって、読者にこういうキャラでこういうシチュだよって説明が入るもんじゃん。
それを一切せず、2人で外食したり一緒に住んでるところをいきなり読者にとりあえず見せてくるわけ。で「先パイ」「彩香」と呼び合って、先輩のほうは真面目系で後輩はズボラとか、それぞれの人となりが段々と分かっていくのです。
言葉で説明すると「それ面白いの?」って思うかもしれませんが、これが面白いんですよ。味わい深くどんどん魅力が出てくるのです。100%キャラクターが良い証左です。
キャラが良すぎる
お仕事モードの家城梢
作者の幾花にいろ先生は単行本の後書きで何も考えないで設定とか作らず行き当たりばったりで描いてるようなコメントしてましたけど、とても信じられない。
めちゃくちゃキャラ立ってるし、しっかり作り込まれてるって印象しか読む限りだと無いんよね。段々と2人の性格やどういうバックボーンなのかが分かって世界が広がっていく系統である。
スートーリーがどうとかそんなん一切無く、2人のアレコレを楽しんだり2人の設定が徐々に明かされてく。これを面白いと思わせて読者を引っ張るのは間違いなくキャラの魅力でしょう。
- 先パイ…家城梢
- 彩香…天花寺彩香
10話にしてフルネームが判明した時の謎の感無量感よ。先輩の家城梢は職場などが描かれており、そこで「家城くん」と呼ばれるなど小出しで判明していく情報。やっとフルネーム分かった時は小躍りしちゃったもん。
こんな感じで読んでく。これで面白いと思えるし、夢中になれるのはキャラが良いとしかいいようがない。個人的に家城梢がぶっ刺さりまくる。彼女のアレコレもっと知りたい…読み進めると分かってくるという読書体験がマジで良し。
世界が広がってく
2話
いきなり2人がルームシェアして一緒に暮らしてる日常からはじまり、なんの説明もなく2人のやり取りを見て少しずつ背景が分かってくる作品である。裏を返せば世界が徐々に広がっていくんです。
梢パイセンだと、最初はズボラ後輩の面倒見るしっかり者なのかと思ったら、ちょっとずつ抜けてるところや可愛らしい一面が見えてくるのです。
外面は完璧なのに、モノに話しかけたり、動物が好きとか、彩香と過ごすうちに段々と素を出したり柔らかくなっていくことが判明していきます。可愛すぎないか!
「間」の取り方が上手い
9話
「間」の取り方が絶品すぎる。
上手いなぁ…と100回ぐらい唸ったもん。
かの巨匠あだち充先生は意味があるかないか分からん背景や風景ぶっ込みまくって独特のスローテンポと味わい出すじゃん?ああいうのとはまた違った「間」の取り方するんよね。
それが前述した情報小出しに徐々に判明していく作風とマッチしてて、この漫画だからこそ味わい増す「間」になってる。幾花にいろの「間」である。
キャラの動作に「間」が使われてるので、買い物で変なぬいぐるみ見ての「間」にしろ、スイーツ食ってる彩香を見てる梢の「間」にしろ、よりキャラを読者が知れる情報解禁していくに近い「間」で、そのキャラをより理解できるわけよ。
そのコマいるかいらないかでいえばエピソードを俯瞰して言えばいらん。でもキャラをより掘り下げるには絶対必要な無駄でない「間」を多用して味わい深くさせる。
僅かにしっかり感じる百合成分
18話
ふーん、尊いじゃん!
2巻がより素晴らしかった。1巻と変わらず、なんか面白い2人の生活(=キャラが魅力的)だったし、世界観も徐々に広がっていく(彩香の職場)とか…1巻の面白く味わい深い要素は継続しつつ、2巻では僅かながらしかし確実に如実にソフト百合の尊さがあった。
彩香がパイセンのフレンドと仲良くしてるのを目の当たりにして、ちょっと面白いくないというか「先パイの独占権はウチにあるはず」とか言語化ミスったのか本音を吐露したのか…。この彩香に対する梢パイセンの反応がとても良かった。
マジで驚いて呆気に取られる「間」で溜めてから、まんざらでもない…いやむしろ嬉しそうな表情して「ふーん」ですよ。独占したいって聞かれて嬉しいという証明よな。
そして19話で尊さの極みが爆発するのです。梢の「それは、あんたが私の後輩やからやろ…」からのアレコレは「尊い」が具現化していた。
19話
尊い…。
彩香はダメな子でなく、出来る子だって最初から信じてたし分かってました。梢先輩の可愛い力(ぢから)を天元突破させてくれた。あまりにも至高なやり取りがあった。
1巻でも十分面白かったけど、2巻は尊さの極みトリプル役満でリーチですよ。あと、ドスケベ描写も跳ね上がってる。さらりと自然な形で直接エロいわけでないが、下着姿の「業」の深さや、アンダーヘアなどエロスも際立ってきてる。
よく考えれば「快楽天」も「楽園」も同じ意味ですよ。人の夢です!アヴァロン(理想郷)です!ならば、一般誌でもシコい描写が増えるのも自然の摂理だろう。
まあ、なんか永遠に変わらないサザエさん時空で山の手線グルグル回ってる日常漫画と思ったら、ちゃんと2人の関係が進展するのが尊くて最高すぎた。何度も読み返して噛みしめるスルメ的な美味も健在。いいっすよ!おすすめ!
「マンガPark」なら楽園作品が無料で読める
白泉社公式アプリ「マンガPark」なら楽園系作品が無料で読めます。今回紹介した『あんじゅう』は掲載されてませんけどそのうち掲載されると思われ。
楽園作品の他にもヤングアニマル作品や花とゆめ作品も基本無料で読めます。白泉社漫画がたくさんあります。
- 微熱空間
- ぱらのま
- あまあま
- 未必の恋
- 箱庭の行方
- お前は俺を殺す気か
- 14歳の恋
- 鉄道少女漫画
- spotted flower
- ディアティア
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- お尻触りたがる人なんなの
- 正しいスカートの使い方
- 日々是平坦
- 乙女ループ
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- ベルセルク
- 3月のライオン
- ハチミツとクローバー
白泉社漫画の名作・傑作が盛りだくさんです。
無料ですので通学や通勤のお供に是非アプリを入れてみてください。
コメント
某Aブログにてこの作品が紹介されて、とても興味を持ちました。髪の描写が非常に丁寧で、同時に遠すぎず、近すぎない二人の距離感が絶妙でした。しかも男性作家だそうで、相当豊かな感性の持ち主だろうと思われます。とりあえず電子版を買っておいたので、時間ができたらじっくり目を通そうと思います。