『時間停止勇者』(光永康則)は傑作である(断言)。
昨今、いわゆる「なろう系」ブームで、ラノベ原作でなくても「なろう系」の人気ジャンルである異世界転生してファンタジーする作品がめちゃくちゃ増えている。
『時間停止勇者』もそういったいわゆる「なろう系」の異世界転生ブームの作品の一つではある。あるが、この漫画の面白さは流行りに便乗したものとは一線を画する。斬新で残念で…残光なのです。
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『時間停止勇者』レビュー
なろう系テンプレ設定
オレは見知らぬ場所にいた
主人公・葛野セカイは現実世界のSNSで大炎上かましてしまう。人生詰んだ…と現実世界にはいたくないと強く思ったら見知らぬ中世ファンタジーな世界にいたのです。
清々しいぐらいのテンプレ「異世界転移」です。転生もの(大体トラックに跳ねられるか過労死か神様のミスで死ぬ)と転移もの(勇者召喚で呼ばれるかクラスごと転移か気づいたら異世界だった)の王道である。
葛野セカイは「気づいたら異世界だった」のテンプレそのまんまといっていい。そして、異世界へ転移・転生する主人公はチート能力を持ってるのもデフォ。それこそ、食パンくわえた女子とぶつかったら、転校生で隣の席になるぐらいお約束です。
そして主人公にはチート能力を与えられるまでが「お約束」です。
この漫画の主人公もやはり与えられたのです。チート能力が!異世界に転移してしまったセカイが授かった能力は「時間停止」である。
異世界へ転生・転移した主人公に与えられるお約束は「捕食」「能力奪取・簒奪」「アイテムボックス」「(現実世界やネット通販から)取り寄せ」「成長速度」…とある中で、セカイが授かったのは「時間停止」です。
やっば!約束された勝利のチート能力じゃん!時間停止といえばジョジョのDIO様や空条承太郎を筆頭に、絶対に勝てる勝利のチート能力ですからね。えっちなことするのもお約束です。
セカイは時間を止められる!これは異世界転移としても存分に「俺TUEEEEE!」ができる…って、あれれれ?
無敵のチート…ではない!
こいつメチャ硬い…!?
『時間停止勇者』の面白ポイントはいわゆる「なろう系」のテンプレで「俺TUEEEE!」で突っ走るようでいて、まったくそんな事が無いところです。「俺YOEEEE!」ですよ。
時間止められるなら無敵だろ…と思わせておいえ、まったく無敵でない。まったく強くない。凡人が時間止められる能力持ったって、そのふざけた幻想をワンパンできないし、手に汗握る激戦もできないし、多角的に無敵キャラにもなれない。
この漫画のキオは「時間停止」って能力持ってても、スカートめくったりパンツ盗むぐらいの非力な主人公な点です。だから時間止めてもめちゃくちゃ苦労するわけ。
あれから今日で275日目(だいたい)…
硬い敵には、強い剣パクっても通用せず、時間止めたままめっちゃ筋トレしてる図である。
時間停止なんてチート能力持ってたら普通は楽勝で蹂躙できるだろって思うかもしれませんが、セカイはそんなチート能力持ってても相応の苦労をするのです。
時間停止して長期戦となる。この程よい弱さが魅力でもある。例えるなら『無限の住人』の主人公・万次さんですよ!
不死で死なないけど程よい弱さでバトルを盛り上げてくれたあの感じです。適度に弱くて盛り上げてくれた。
チート能力なのにてんわやんわ
2話
時間を止められるのに全然無敵じゃねー(ように読者が捉える)のが『時間停止勇者』のキモであり、なんだかんだで手に汗握る緊迫感を演出している。
時間止めたら最強だろって思ってる大多数が唸るのです。「あ、全然無敵じゃなかったわ…」と。時間止めてる間の試行錯誤がしょうもなくてめちゃくちゃ面白い。
「時を止める能力」って、ジョジョのDIOを筆頭にワンパターンというかやり尽くした無敵能力って感じだったじゃないですか。それを『時間停止勇者』は逆手にとって、無敵なのにめちゃくちゃ努力が必要ってコメディに昇華してる。
時間止めてる時の努力が面白い
ゴーレム相手に物理攻撃は無理と時間停止してせっせと彫刻するの図である。時間止めて2ヶ月近くもかかってゴーレムを彫り続けていたのは涙なしには語れません。
もちろん時間停止してるのでまわりの人は一瞬で何かをやったとか倒したように映るのです。華麗に泳いでるように見える白鳥も水面下では必死に足を動かしているといいますか。見えないところで凄い努力してると。まあ、白鳥が必死に足動かすのはウソらしいけど。
『時間停止勇者』はいわゆる「なろう系」のフォーマットでありながら、めちゃくちゃ努力していることがポイント。四苦八苦さを笑えるギャグにしてる。
あと、1つのミッションに攻略時間が表示されており(本当にゲームオーバーになるかは不明)、いい意味で緊張感もある。
1つのミッションクリアするまで大体3日の時間が用意されており、そのカウントを進めないように時間停止して攻略していきます。リアル時間は3日でも、主人公は数ヶ月かかってクリアしていく。
- 時間停止ってチート能力
- 主人公は弱いのでかなり努力が必要
- 3日でミッションクリアしなきゃ死ぬ(?)って縛り
この辺が絶妙のバランスで織り成しており、時間止めてどうクリアするかってゲーム的な楽しみや戦略性もある。異世界転移してチート能力手に入れて…って100万番煎じなネタなのに新鮮で新感覚で読める。
主人公が良い意味で狂ってる
何より『時間停止勇者』最大の特徴は主人公の頭がおかしいことです(褒めてます)。時間停止したらやってみたいことの一つにスケベなことは誰もが夢見ることですが、セカイはスケベに対する気概が桁違いです。
もはや時間を止めるたびにスカートめくってパンツずりおろしているレベル。他にも狂ってる言動が随所にあり、もはや面白いヤツを通り越して狂人です(褒め言葉)。
いわゆるなろう系の主人公のパターンって「やれやれだぜ…」とか言いながらニヒルなクール系(中二病)か、いいヤツなんだけどニブチンって相場が決まってるじゃないですか。そこいくとセカイはエキセントリックすぎる。まるでランスが異世界に転移したようなものです。
主人公の良い意味で狂人っぷりが異世界ワールドをより引き立たせる。登場キャラもみんな魅力的でバカゲーのような世界観を構築してます(賛辞)。
『時間停止勇者』レビューまとめ
そんなこんなで、「異世界転移してチート能力で無双」という何番煎じだよ!って設定なのですが、主人公の狂気(スケベ)と時間止めてどう攻略するかってところが焦点なので、斬新に楽しむことができます。おすすめです。
おパンツやお尻やB地区比率も高めですのでムフフです。
マガポケなら無料で読める
講談社公式アプリ「マガポケ」なら『時間停止勇者』が無料で読めます。他にもマガジン系作品を中心にわんさか読める。主に読めるのは以下の通り。
- はじめの一歩
- EDENS ZERO
- 化物語
- 東京卍リベンジャーズ
- 炎炎ノ消防隊
- 彼女、お借りします
- 不滅のあなたへ
- ブルーロック
- シャングリラ・フロンティア
- カッコウの許嫁
- 黙示録の四騎士
- カノジョも彼女
- 女神のカフェテラス
- アルスラーン戦記
- トモダチゲーム
- あせとせっけん
- コウノトリ
- 転生したらスライムだった件
- 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令状に転生してしまった…
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コメント
セカイは脱がすけどこっそりヤッたりしない真の勇者
時間停止したら内燃機関は停止するのがお約束だからな
しっかり中に出してあげないといけないはず
光永康則はスゴイよね
なんなら本作よりも『アヴァルト』をちゃんと楽しみたかったし、『棺探偵』ももったいないと思ってる
上の人も書いてるがアヴァルトの打ち切りは惜しかった(売上悪ければ仕方ないが)。
画力はスゴイとは言えないが良作を連発している。
アヴァルトは本当に面白い漫画だったけど打ち切り食らって謎が尻すぼみに
なっちゃたんだよなあ。ファンタジーとSFを絡めた傑作になるはずの惜しい漫画だった。
アヴァルトの反省(読者へのサービス不足)から時間停止勇者が生まれたと思うと感慨深い。