ふつくしい…。
『よふかしのうた』最長となった北海道編(キク&マヒル編)は、2人の明確な死…そして消滅を描くことで完全なピリオドを打っていました。
ぶっちゃければ、メンヘラ女とネグレクト受けて病んだ男子が心中する結果になったという身も蓋もないものだけど、モヤモヤすると同時に美しいラストだったという感動まで沸き起こったのです。この巨大感情なんなんだよー!
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全てが消え去った
164話
星見キクと夕マヒルは完全消滅という形で消えていった。
なんか序盤のキクさんは得体の知れない強敵のような描かれ方をしてたので、コウとナズナちゃんにとってラスボスなんかなぁと思ってたので、この顛末にはビックリです。
そもそも『よふかしうた』の吸血鬼は太陽は苦手でも普通に出歩けるし灰になって消える事はない。それなのに2人は日出と共に消えてしまった。
なぜだろう?
この辺は読者の解釈に委ねられてると思う。
星見キクの消滅
まずキクさんは最初に読んだ時は夢を叶えられずに吸血鬼として消滅したと思ったんですよ。数百年以上生きてたきた吸血鬼で寿命がもうすぐと描かれてました。
だから弱った吸血鬼のまま日光で死んだのかなぁと。
しかし、166話のニコさんの解釈が一番ストンと胸に落ちる。
おそらく…〝人間に戻る〟とは吸血鬼として生きた時間を一気に経過させることなんだろう…(166話)
そうか。キクさんは夢を叶えたのかと…。
もちろん、実は吸血鬼のままだったかもしれないし、最期に夢を叶えて人間になれたのかもしれない。読み手の受け取り方次第ですが、やはり人間になれた。夢を叶えたと解釈すると美しいラストに見える。
実を言うとね。人に戻れる方法、私は「これなんじゃないか」…ってのがあるのよ。もちろんハルさんにも言ってるわよ。ハルさんには否定されたけど。それはね、人に恋すること。(146話)
私ね人間になりたいの。人として死にたい。ずっとず~っと夢見てきた。その方法は吸血鬼が人間に恋をして血を吸わなきゃいけない。私は君を好きになりたい。恋をしたいの。(158話)
吸血鬼が人間に恋をして血を吸うと人間になれる。それがキクさんの提唱した説であった。
しかし同時に121話では「吸血鬼から惚れた人間の血は吸ってはいけないってルールがある(吸血鬼は感覚で知ってる)」「ルールを破れば一説によるとその人間を殺してしまう」という事も提唱されていた。
つまりアンサーは出てない。吸血鬼が人間に惚れて血を吸うと…「人間に戻れる」「その人間を殺してしまう」は今回のキクとマヒルのケースは2つとも相容れる。でもそれだとちょっと切ない。
夕マヒルの消滅
マヒルが消滅したのも読者の解釈に委ねられる。ススキっぴが言ってた吸血鬼が惚れた人間の血を吸うとその人間が死んでしまうでも説明つくけど、その場合はコウとの競争の勝ち逃げにならない。
コウ、俺も吸血鬼になるよ。だからさコウ。俺とお前、どっちが先になれるか競争だな!(51話)
マヒルは自分も吸血鬼になる。コウとどっちが先になれるか競争だと告げていた。
紆余曲折あって喧嘩して仲直りした後にコウに対して「俺の勝ちだな(162話)」と勝利宣言。そして消滅後にコウはマヒルを思い出しながら「勝ち逃げはずるいよなぁ…(166話)」と呟いてました。普通に読めばマヒルは吸血鬼になったのだろう。
人間が吸血鬼になるのは初期から語られてたし一般的な定説でした。それは吸血鬼に恋して血を吸われること。マヒルはキクさんにベタ惚れだったので、血を吸われれば100%眷属になれる。
じゃあ、マヒルは吸血鬼になったのになんで消滅したのか?キクさんは自分が人間になって死ぬ夢を叶えるだけで、直前までマヒルは吸血鬼として生きると思ってた。コウたちも一緒で修学旅行回ろうと約束してた。
マヒル君。日が出たらなるべく木の陰とかに入りながら移動するんだよ。日に当たったからってすぐに影響はないけどなるべくね。服すぐ新しいのにね。あとは…これからたくさんモテちゃうけど、ハシャぎすぎないようにね。仲良い吸血鬼は作っておくんだよ。(163話)
コウとアキラと3人で修学旅行回るつもりだったし海鮮丼食うつもりだった。キクさんも吸血鬼になってからの生活のアドバイスを受けていた。
マヒルは吸血鬼となって今後は長生きするはずだった…。しかし、キクさんと一緒に塵となってしまった。これはやはり吸血鬼の弱点が関係してるのでしょう。
吸血鬼は人間だった時の私物が弱点になる。それへの思い入れが強いほど高い効果を持つ(55話)
吸血鬼は人間だった時に強い思い入れがあるモノが弱点。生まれた時から吸血鬼のナズナちゃんなんて生まれる前のへその緒が弱点です。
マヒルは吸血鬼になるために思い入れのあるものを処分したし、コウから木刀貰うのも弱点になるからと拒んでいました。しかし、吸血鬼の弱点は本当に「モノ」だけなのか?その答えが示された(ように見える)。
164話
兄が死んで家に居場所が無くなった時に家族だって嫌っていいと教え救ってくれたお姉さん。いわく「俺に勇気をくれた人」「あなたのおかげで生きてこれました」である。
マヒルは血を吸われる直前まで幼少期に会ったそのお姉さんがキクさんだと気付いてなかった。しかし、最期の最期で気付いてしまった。
これはすなわち吸血の弱点のモノ…いや人(相手は吸血鬼だけど)がそのままマヒルに降りかかったのだろう。モノでなく人も思い入れが強ければ強いほど高い効果を発揮することの証左かな。
ハーデンベルギアの花言葉「運命的な出会い」は、配達でキクさんに出会ったよりも遥か前。運命の女性はもっと強固な運命の女性で弱点となり灰となった。
もし、マヒルが最後にキクさんがあの時の女性と気付かなければ吸血鬼として生き長らえていたでしょう。しかし、吸血鬼になった瞬間に最大の弱点で消滅するも気付けた事のほうが良かったとすら思える妙よ。
- キクさんは人間になって消滅(数百年一気に経過で消滅)
- マヒルは吸血鬼になって消滅(キクさんが弱点&日光で)
幸せだったね
キクさんは大の恋愛映画好きだ。俺はあまり見たことがない…というより映画自体ほとんど観たことがない。キクさんの好きな映画には特徴がある。本来出会うことのなかった二人が惹かれ合い。いくつものトラブルを乗り越え結ばれ。最後はどちらかが死ぬ。(144話)
キクさんは恋愛映画好きで、好むのは運命的な出会いをした2人が恋をして必ず「最後はどちらかが死ぬ」結末という作品だそうな。
これ本来ならキクとマヒルにも当てはまったよね。
少なくとも消滅直前まで、マヒルはこれから吸血鬼として生きてくつもりだったし。吸血鬼の生活をアドバイスして自分だけ死ぬつもりだった。結果として、キクさんが好んだ映画のような結末にはならなかった。
しかし、夢は叶ったよなぁと。
マヒル君はさ。夢ってある?私はねマヒル君。私は、普通に誰かを好きになって、できたらその人も私を好きでいてくれて。結婚して、子供ができて、幸せだったねって最後に言いたいな。(100話)
まあ、そんな夢は叶うはずないんですけど、それでも最後は「幸せだったね」という夢は叶ったのがあまりにも美しい起承転結だった。
…キクさん
幸せだった?
うん。
2人が消滅に至るまでの紆余曲折とラストの過程がすこぶる泣けましたね。無情に、それでいながら優しく、単純に、それでいながら斬新に、描かれているのです。
なんか微妙にモヤモヤは残るけど、2人で幸せだったと言って逝くのはこれこそがベストとすら思ったもん。2人の満足感、至福感を表現しているから、すごく清らかで、荘厳なシーンに見えました。
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コメント
現実感ない悲劇(褒め言葉)が心地よい
空気読まずに本音を言えばメンヘラちゃん一人で逝って欲しかった
キクさんについてはなるほどそうかもと思ったけどマヒルについてはちょっと違うかなと思った
「これが一番幸せな終わり方」だと思う自分もいれば、「もっと良い終わり方なかったのかな、、、」と少し後悔?のようなことを思う自分もいて、うーーーーーん。なんかモヤモヤとスッキリが同時に存在する、とても素晴らしく美しい終わり方だと思ったかな。ダメだ、語彙力がなくなってる。