傑作だった…。
『麻衣の虫ぐらし』(雨がっぱ少女群)読了。
年末に友人に勧められて読んでみたらこれが大正解。
良い作品でした(しみじみと)。てか作者は雨がっぱ少女群先生なのね。
断筆宣言から9年――。
伝説の絵師・雨がっぱ少女群の中で
新たな美少女たちが芽吹きだす。天真爛漫でいつものほほんな、職探し中の麻衣。
孤独な生い立ちを抱えつつ、
祖父とふたり暮らしをしながら、農業を営む菜々子。
この土地に生息する虫の保護活動に力を注ぐ来夏。
虫と戯れ、虫に翻弄される、彼女たちの軽やかな日々。
<試し読みできます>
『麻衣の虫ぐらし』
作者の雨がっぱ少女群先生は昔コミックLOで執筆していましたが突然引退を表明。
せっかく復帰させていただいたのに、申し訳ありません。
8月に某誌でホラーを1本描かせていただくのを最後に、雨がっぱ少女群を終わりにしようと思います。今まで応援してくださった読者の皆様、編集部の皆様、LOの先生方、こんな至らない人間に付き合ってくださって、本当にありがとうございました。
一旦漫画家を辞することになりますが、精進は続けていこうと思いますので、いつかどこかでプロに復帰できたらなと思います。
それがLOであればな・・・と、思っています。さようなら。
どういう経緯があったのかは分かりませんが、こうしてプロとして復帰されたのは実にめでたい。で、この『麻衣の虫ぐらし』めがっさ良かったです。全2巻できれいにまとまってる。
虫をテーマにした田舎暮らし
episode01「ナミテントウ」
主人公の桜乃麻衣は20歳で入社1年目でリストラされたプー。友人の清水菜々子がやっている無農薬農園のお手伝いをしています。土・日の夜はレストランのシンガーのバイトもしてます。
基本的には麻衣と菜々子、そして老舗旅館の娘・須藤来夏の3人による虫をテーマにした1話完結の日常キャキャウフフです。テーマである虫のうんちくといい、一緒に語られる田舎暮らし&農業&自然保護などもかなり掘り下げられています。読んでて勉強になります。
特にエピソードと絡めた虫語りが面白い。無農薬農業におけるてんとう虫などの益虫の有用性から、雑学としてのあれこれ、生体などを話と合わせて上手く日常に落とし込んだり。ピックアップされる虫について「なるほどなぁー」とか「こうやって話に絡ませるか」と感心しきり。
何度も読み返す楽しみ
episode03「クロナガアリ」
3話で来夏が初登場したアリ話。働き者のアリは冬に巣に籠るから、クロナガアリは逆に秋にかけて働くなんてトリビアを交えつてました。ついでに無色の麻衣を小バカにしてるってのが第一印象でした(来夏もお嬢様で無職)。
2巻20話では「働き蟻の法則」で来夏のアリの例えというのが「私は仕事をしない2割の側である」と。実は働きたいという描写が見て取れました。で、働かない2割のアリは不測の事態で突然働きだすそうで、実は立派な予備勢力という話でした。それを踏まえて3話を読み返すとまた来夏の印象が変わりますな。
あとで戻って読み返すと意味深的なのが多いのも面白いところ。特にストーリー展開は何気ない日常の積み重ねでしたが、実は伏線だらけで後で「こういうことだったか」と気づき痺れる。きちっとした設定が最初からあったことが伺えます。なかなかのストーリーテラーや!
女の子がめがっさ可愛い
ぐうかわ
ふつくしい…。
麻衣と菜々子と来夏のメイン3人がとにかく可愛い。本編の田舎風景や畑の中に生えるヒロインズには何度も目を奪われてじっくり鑑賞してしまいます。背景とマッチしててカチンとハマっている1枚絵のような美しさがありました。
特に扉絵的なカットは控えめに言って最高。何気ない仕草のヒロインの生活描写が多いんですが、どれも見惚れてしまうレベル。視覚的にもインパクト抜群です。なんか古臭い田舎臭い背景がとこれほど美少女に溶け込んでマッチするもんだと感心しきり。
あと着てる服装のギャップによる「可愛い力(ぢから)」もなかなかどうしてよ。
服装も刺さる
可愛らしいオシャレな服装というのはほとんどありません。基本的に農作業しているので、農業に適したオバちゃんが着てるような服とか二重線の入ったジャージとか山下清スタイルがデフォです。これがダサい…かといえばそんなことなく、イモい服装なのに可愛い。ペロペロできる。
可愛らしい服装でなくても可愛らしい…このギャップはすごい。田舎背景で白いワンピースを着た麦わら帽子少女が究極ならば、田舎背景で山下清スタイルの少女は至高である。
そ・し・て!
絶妙なあざとさも外せません。
入浴シーンだったりパンチラだったりがけっこうな頻度で拝めるのですけど、それがすごく自然なのんですよね。こう、いかにもな「わざとらしさ」が無いと言いますか。日常を過ごせばお風呂に入るしパンチラもするよね…って自然のあざとさがあります。
グッとくる
episode07「ヤマトシミ」
『麻衣の虫ぐらし』の見どころは、女の子可愛い、設定がきちんとしてる、虫のうんちく、田舎暮らし…など数多くありますが、個人的に一番刺さったのはシナリオ展開でしょう。表のテーマが「農業と虫」なら裏テーマは「生死感」と「家族」といったところか。
1巻ラスト…普通に号泣しちゃいました(´;ω;`)。
なんだよこれ…(震え)。
1話完結の女の子可愛いキャキャウフフの田舎ライフ漫画と思ってあなどるなかれ。涙腺にクリティカルヒットさせるストーリーの妙でもっていかれる。グッときます。随所に昔話を挟んで、これがまた染みるんだわぁ。
そして2巻はそこからの再生の話なのですがこちらもハラハラドキドキしつつ心温まるとても良い話だった。読了後に「いい話だったなー」「ええもん読んだなー」と確かな満足を得られました。濁ったハートが浄化されるかのようでしたわ。ラストは鮮やかな感動を呼ぶ。
1話と最終話
上手いなぁと思ったのはてんとう虫の話ですね。1話がてんとう虫にはじまり、最終話もてんとう虫で締めたのですが、「テントウムシが体にとまるのは幸運の兆し」ってうんちくがいい意味で効いてた。多幸感で胸がいっぱいス。
濃厚な百合でもある
最高か…
控えめに言って最高だった…。
尊すぎる。
『麻衣の虫ぐらし』で個人的に心の琴線を鷲掴みにされたのは歴史的な百合漫画でもあったことでしょう。初期から菜々子が麻衣を大好きってのは一目瞭然でした。でも、それはあくまでもコメディ調でギャグとしてのほんわかソフト百合という要素でした。スパイス程度でした。
それが2巻からの凄まじいシリアスっぷり。ガチです。マジです。それでいて納得できる濃厚な百合百合展開はマジ最高だったぞい。「虫」をテーマに雌同士でも…という例えがまた刺さるんです。性別を超えてお互いが惹かれ合うことを丁寧に描かれてます。むっふー!大満足。
虫や農業や自然のうんちく。女の子の可愛さ。グッとくるストーリー。絶妙なあざとい描写。超最高の百合展開。読了後の幸福っぷり。すべてが最高すぎた。とても面白かったです。お勧めです。まる。
コメント
こうやって知らない漫画を知ることができて嬉しいです
結構買っちゃうんですよね
読んでみます
電子版の特別編もなかなかくるものがあったで