『田島列島短編集 ごあいさつ』心にぶっ刺さりまくり至高の短編集やで!

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田島列島短編集 ごあいさつ (モーニングコミックス)

『田島列島短編集 ごあいさつ』読了。

田島列島先生初の短編集です。これがね。めちゃくちゃ良いんだ。

まさに珠玉の短編集というやるでしょう。

表題の「ごあいさつ」は、姉の交際相手の奥さんが
突然部屋を訪ねてくるという”大事件”を瑞々しい感性と言葉で切り取り、
かわぐちかいじ氏、さだやす圭氏に絶賛された2008年の新人賞受賞作。

その後10年の月日をかけて発表され続けた珠玉の短編全7編に加え、
「モーニング」誌上に時々掲載されていた1P漫画やイラストも収録。
ファン必読、オールアバウト田島列島とも言える一冊です。

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『田島列島短編集 ごあいさつ』

6作品とおまけ

収録されているのは以下の通り。

・収録作品

「ごあいさつ」「官僚アバンチュール」「おっぱいありがとう」「お金のある風景」「ジョニ男の青春」「花いちもんめ~おらが村にUFOが落ちた~」「Not found」「おまけ 蔵出し田島列島」

短編6本とおまけ。

おまけは田島列島先生がこれまで描いた広告カットや1P漫画や販促用ペーパーなどが収録されております。短編作品はどの話も最高に田島列島漫画だった(褒め言葉)。

静かにしかし着実に濃厚にハートに染み渡るのです。ええ漫画やでー!

「ごあいさつ」

「ごあいさつ」

昼ドラが我が家にやってきた。

田島列島先生のデビュー作である。姉と2人暮らしする少女坂野ちか。ある日、ひとりの女性が訪れる。

いわく「うちの主人がりかさんに大変お世話になってるそうだから、一度ごあいさつに伺っておこうと思って」である。

姉りかは不倫をしてたのでした。

不倫をされた側の奥さんが突然家へ訪れてきたわけですね。

それが昼ドラ!湾岸戦争!

そんなテレビの向こう側のシチェーションが訪れるのです。

修羅場になるかと思いきや、予想外の方向へ遠回りしながら突き進む。

その機微が素晴らしい。

姉は逃げ出しいつも訪れる不倫された奥さんが訪れるうちに2人に変な情のようなものができてくのです。読んでると「何だそりゃ!?」と「あー分かる!」の相反する2つの感情が沸き立つ。姉が不倫してる少女と夫が不倫してる奥さんの、奇妙で不思議でおかしな2人の距離感が絶妙です。

「官僚アバンチュール」

「ごあいさつ」と同じ世界感で数年後でいいのかな。坂野ちかのバイト先の同僚が不倫の末に傷ついた。前から相談をされていたので、止められたのではないかと姉と相談する話。

現在連載中の『水は海に向かって流れる』といい不倫がテーマです。この頃から作者の中で不倫に対して思うものがあったのでしょうか。言葉遊びなど含めて軽妙な会話テンポが心地よくするらある。

「…」

現在ほど洗礼されてないけど、この頃から独特の「間」や「仕草」が際立つ。

めちゃくちゃええよね。私はあだち充先生に近いものを感じる。

一見すると何の意味があるんだって言葉とかシーンが無駄なようでいてやっぱり無駄なんだけど、無駄だと感じさせないことでええ感じの機微となってる。この雰囲気めちゃすこすこのすこ。

「おっぱいありがとう」

おっぱい吸わしてください

はい!優勝!

個人的に一番好きなのは「おっぱいありがとう」です。坂下さんはある日、ふと気づくのです。赤ちゃんの頃は男も女もおっぱい大好きだったのに、大人になったら女は女のおっぱいが吸えないのズルイと。頭がおかしいですね(褒め言葉)

で、同僚の頼めばなんでもやってくれると有名な宮本さんに「おっぱい吸わしてください」と頼み吸わせてもらう話をコミカル一辺倒に描いた傑作なり。普通に全部ギャグなんだけど、そこはかとなく闇と救いがあるのがスゴイ。

『田島列島短編集』の中で最もバカバカしく、それでいて最も奥行きがある作品でした。宮本さんが自分をアバズレっぽく語るのは切なさを含みつつ、坂下さんのおバカキャラがいい感じで打ち消してる。ラストの展開は謎の感動があった。

別に直接描かれてないけど宮下さんは子供が産めないとかそういう類の裏設定があるのではと思ったり思わなかったり。おっぱいを吸われるシーンは愛が…母性愛が半端なかったです。はい。

「お金のある風景」

コタツの世界

田島列島作品の旨味を凝縮しているのが「お金のある風景」や「ジョニ男の青春」でしょう。それは昭和臭さです。コンクリートジャングルと一味違う昭和や平成初期風の下町風の世界。そしてドラマもたいして起きない絶妙の会話劇場

ダメ彼氏にお金あげてたお姉さんが、その彼氏に好きな人できて真面目な人でした。元カレは改心しお姉さんにお金返し振られてしまいました。自暴自棄なお姉さんは暇な大学生男子と出会い、返された金の使いみちを議論する…という。

「お金のある風景」の世界はコタツを挟んだ会話がほぼ全てです。ボロアパートで話しただけ。ストーリーもドラマも殆どないのに、まったく飽きさせず面白い。昭和の下町日常劇っぽさが現代にブラッシュアップされてるんですよね。

「ジョニ男の青春」

妊娠中の女性が、このまま子を産んでいいのかと悩む話。

なんたって相手は甲斐性無しのダメ男風ですからね。

そこで、レンタルロボットを借りて男の真意を確かめようとする話。

なんだかんだで良い話になってるのがええね。設定が2064年だけど、やはりすさまじい昭和の町並みや部屋描写の味わいも良き。なんだかんだで一番分かりやすくキレイに「起承転結」でハッピーエンドでした。

「花いちもんめ~おらが村にUFOが落ちた~」

過疎化してる村にUFOが墜落して宇宙人が現れた。マツコ(デラックスそっくりんさん)に恋をした。宇宙人捕獲を目論むFBIのイケメン外人に取られた。謎の三角関係が繰り広げられる。シュールギャグで始まって終わった。他の作品に比べるとあんま刺さらなかったかも。

「Not found」

あのさぁ私、告白されたんだ

ディテールは違うけど「To HEART」のあかりルートです。この作者が初代東鳩をプレイしてるわけないので、「幼なじみ」というものの普遍的なテーマなんだなって改めて思いました。

高校が別々の幼なじみ。今でも一緒に遊ぶ仲です。ある日「私、告白されたんだ」と述べる幼なじみ。子供の頃から当たり前のように一緒にいた。恋愛感情なんて微塵も無い。なのに誰かに取られるのはいやだと感じてしまうモヤモヤ感情の名をぼくたちは一生追い求めていくのだろう。

これは「幼なじみ研究会」では「恋愛感情」って解き明かされているのですが、自覚してしまう(したくない)までの過程のアレコレはとても難解です。「一緒にいるのが当たり前→腐れ縁→この感情は何だ!?」である。

そんな我々の大好物を、昭和日常風に調理して壮大に無駄描写の味を出すのは田島列島先生が描くってんだからすごい破壊力とコクを出してる。幼なじみって本当に良いものですねぇ…。

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