『メジロバナの咲く』女学園の寄宿舎でじっくり距離を詰める百合

 

『メジロバナの咲く』（中村明日美子）読了。

中村明日美子先生は初長編ガールズラブなり。めっちゃ良い。

 

海外の女学園とその寄宿舎を舞台に展開する、著者初の本格的長編ガールズラブ待望の第１巻。繊細な描線で紡がれる耽美の極にありながらも風通しの良い物語です。

 

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『メジロバナの咲く』

雰囲気が美しい

1話

 

どこかの国の女学校の寄宿舎生活のお話。いかにもお嬢様っぽい雰囲気とレトロな魅力の学校や寄宿舎がたまりません。本場の「マリ見て」であったような学校といったところ。美しい絵としっかり作り込まれた設定が魅力的です。

 

本当にありそうな世界観なんですよね。学校の様子から、会話内容でぼんやりと時代や政治状況や事情などが浮き彫りになっていきます。こういうしっかりしてる（ように見える）設定で、リアリティというか深みがあるんですわ。

 

それでいて、お嬢様学校の寄宿舎、あまりそれを感じさせないけど先輩後輩って間柄、クリスマス、雪、2人きりの勉強会…など、学園百合モノの王道ともいえるシチュエーションが満載。トキメキ成分も補充できる。

最悪の出会いから

ルビーとステフ

 

主役は2人。ごくごく平凡な2年生のルビーと、女子校の王子様のような「鋼のステフ」。ルビーは黒髪ショートでかなり感情をストレートに出す子で、両親が離婚しそうってバックボーン。ステフは金髪で佇まいから仕草まで完璧な「鋼」。おそらく東ヨーロッパ（ハンガリー？）からの亡命者ってバックボーンがあります。

 

1巻ではまだまだ2人の物語はこれから始まるって感じなんですけど、それでも濃厚に漂ってくる百合百合しい空気が最高。出会いはお互い悪い印象。ルビーはステフを「偉そう」と言い、ステフは「失礼な態度」とバッサリ。

 

それでも段々とお互いが惹かれてるのが分かりニヤリングが増し増しです。特にルビーのチョロさ（褒め言葉）。ステラは普段は無表情なのに鳩が豆鉄砲を食ったように驚く顔が良き。

 

『君曜日』のカップリングも言えたけど、中村明日美子先生は正反対の2人が惹かれ合っていくのを丁寧に描くのがめちゃくちゃ上手い。1話ではルビーの傷口をしっかり癒やして勇気づけたステフ。こういうエピソードを積み重ねていくわけで、「これは惹かれるわ！」ってすごく納得できる。

「いけないことしてる」感

キスしてもいい？

 

やはり中村明日美子先生といえば背徳感…ぶっちゃけ「いけないこと」をしてる様子が最高なんですよ。1話で少し距離が縮まる2人。背景にあるのはルビーの両親離婚とステラの亡命者って心の闇。そこをちょっとさらけ出して近づくんですが…

 

足にキスしてもいい？ってのがすごい。絵面も芸術的でしたね。もちろんステラの足には事情があるんですけど。それを愛しく思って（？）キスしたくなるルビーもさせる方も、なんかいけないものを見てる気がしてくる。心のなかで「キャー！」って叫んでいました。

 

暗闇を照らす一筋の光ならぬ、お花畑のようなキラキラしてキャキャウフフの女子達の中に目立つ影よ。これがコクを出してます。さわやかな青春百合だけでは決して無い。でも全体的にポップに明るい塩梅なのもグッド。

めちゃくちゃ可愛い

2話

 

はい！可愛い！

 

なんだかんだでルビーはかなりチョロいので、もうどう見ても恋に落ちてるだろ！ってのが丸わかりなのが良い。そこで叩き出す赤面がもう最高に可愛い。すでに2話にしてとびっきりのメス顔になっており、ついつい頬が緩んでしまいます。

 

ルビーが「可愛い」ならステフは「美しい」。

まだ1巻じゃステフの赤面は観測されませんが、それでも無表情の鉄仮面が時折崩れる驚いた表情や笑みの味わいはなかなかどうしてよ。てかさ、中村明日美子先生の描く目つき悪い三白眼の子ってめちゃんこぶっ刺さるんですけど。

 

なんなんですかね。この良い意味で「アヤシイ」雰囲気を醸し出す目力（ぢから）は…。大人っぽいミステリアスってだけない謎の魔力が秘められてる。そんな目が、ルビーに言動によってしばしば見開いてしまうのがたまらんぜよ。

 

どんどんステフの色んな表情が見てみたくなりますね。

脇役も光る

レナさん

 

『メジロバナの咲く』は脇役の存在感も侮れません。

もちろん、メインはルビーとステフです。特に脇役にスポットが当たるわけでないけど、それでも漂ってくる魅力的なキャラの匂いよ。

 

レナさんはステフの相部屋の3年生。みんなに慕われる心が広い慈愛に満ちたキャラであります。ステフを優しく論じたり、ルビーを気にかけてくれます。ちょっとしか登場してないのにめちゃくちゃ良いキャラ。既にお気に入りです。

 

黒いガウンをよく着てて、それが後に奨学生の印だと判明します。彼女も家庭の事情で何かありそうと思わせるなど、さり気ない小ネタの描写が丁寧なり。

 

他に1年生のステフに横恋慕してるリズもええキャラや。

 

4話

 

令和ビンタ合戦である。

リズはステフと同じ家に住んでる（？）ことを匂わせており、こちらも何かありそうな細かい設定が見えます。そんでヤキモチ全開でルビーに絡むのが楽しくも可愛いらしい。

 

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百合に限らず恋愛モノで大好きなのは世界は2人だけのものであって違うってこと（何言ってんだって感じだけど）。この漫画でいえば、ルビーとステフの2人のように太い縦軸があって、そこに「世界は2人だけじゃない」と色んな横軸がクロスするんですわ。縦にきちんと縦軸の2人がいてこそ、映える横軸（脇役）よ。

 

レナさんとリズのおかげで、メインのルビーとステフの存在感をより引き立たてます。彦摩呂の言葉を借りれば、人間関係の宝石箱や～！ですよ。

 

そんなこんなでじっくり描かれる2人のソフト百合。世界観、キャラの魅力、魔力のある表情、人間関係…とこれからも楽しみです。おすすめ！

 

 

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