『グヤバノ・ホリデー』(panpanya)読了。
もう最高。1冊丸ごと骨の髄まで楽しめます。
「楽園」からの5冊目のpanpanya作品集。表題シリーズ全8本はじめ「いんちき日記術」「比較鳩学入門」「学習こたつ」「宿題のメカニズム」等、著者ならではの描写が輝く21篇。日記も併収。
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『グヤバノ・ホリデー』
panpanya作品のキモといえばデフォルメされた可愛い少女が奇妙で不思議な街並みを冒険したり、変な生き物やオブジェについての考察だったりと「物事をこういう風に捉える視点もあるのか」と何度も頷くってもの。
デフォルメ少女とリアルな背景
やはり絵そのものが映えるのう。表紙も本編も同様に、えんぴつで描いたかのような簡易化された少女。この主人公は、時に小学生だったり女子高生だったり社会人だったりと「毎回違う人」でありながら、見た目は全て統一されてます。
この少女に乗っかって、僕ら読者も不思議で不気味な追記体験へいざなってくれます。人物がデフォルメなのに、描かれる背景のリアリティよ。このようなギャップがより一層味わい深くなりますね。
あきらかなフィクションである漫画チックな少女と現実のような背景のコラボ。これは夢なのか現実なのかその中間なのか…という体験ができます。
おもちゃ箱のようなアイデア
家を建てる
なによりもpanpanya作品のキモは「日常生活のふとした疑問」とか「あるある」ってものを漫画で具現化させるセンスでしょう。一度でいいからpanpanya先生の脳内を見てみたい。一体どういう視点でモノを見て、ナニを脳内で組み立ててるのか。
『グヤバノ・ホリデー』でもまるでおもちゃ箱を開けたのような作品が盛りだくさんです。例えば「家を建てる」では、雑誌で毎号付録が付いてて全部集めたら一つのモノが完成するってのがあるあるじゃないですか。あれのふとした疑問と「あるある」がギッシリ。
あの手の雑誌って最初は物珍しさや1号の安さで購入することがあるのですが、全部買って付録を完成させる人ってなかなかいないと思うんですよね。むしろ完成させる人はスゴイ!って。その辺のことを追記体験させてくれます。
童心にかえれる
夢があるよ
さらに、「家を建てる」の雑誌で付録が実物の家という。「ねーよ!」って突っ込むと同時に「あー!」って頷く。なんつーのかな、子供が考える発想というか。頭の柔らかさというか。そういう懐かしさがあります。実際に完成させた人には感動的ですらある。
付録で「あんなのあったら」ってその発想がすごい。子供の頃って荒唐無稽なことを思いつくものじゃないですか。大人になるとそれは現実的じゃないってストッパーが発生するのです。panpanya作品は忘れてしまった大切な何かを思い出させてくれるのである。
例えるなら、子供の頃って穴掘るじゃないですか。大抵数メートルも掘ればコンクリとか下水パイプとかで終わるものです。しかし、誰だって一度は夢見ることがあるじゃないですか。このまま穴を掘り続ければ地球の裏側にいけてしまうのではないか!って。
そんな夢を具現化してくれる漫画でもあるんですよね。あの頃の僕らはきっと全力で少年だった♪って思い出させてくれます。なにか懐かしさがある。
表題作の「グヤバノ・ホリデー」
グヤバノ・ホリデー
panpanya先生の作風といえば、リアルでちょっと不思議で不気味な背景、おもちゃ箱のような発想とは前述した通り。読んでてこれは夢なのか現なのかって楽しい体験ができます。その辺の真骨頂が発揮されたのが表題作「グヤバノ・ホリデー」でしょう。
全8話からなるフィリピン旅行記です。グヤバノは主に東南アジアで食べられる果物で、アメ横でジュースを飲んだことから始まります。ところがジュースが販売されなくなり、グヤバノとの縁が切れかと思いきや、ひょんなことでグヤバノの果実を求めてフィリピンへ行くことになるのです。
フィリピンの体験記をこれでもかとpanpanya節で綴られてめちゃくちゃ面白かった。リアルな旅行話ではない良さ味。フィリピンでも非日常世界であり「夢と現の間」って魅力がこれでもかと詰まっています。日本の生活のエピソードでも「何だこれ!?」が満載なのに、フィリピンは不思議が多すぎ。
グヤバノだけでなく、フィリピンの犬から街並みの様子(写真と絵のすごい背景)、店でモノを買うエピソードからバロットを食べるなども秀逸です。一つ一つがただの旅行記では収まらない味わいがあります。
いやぁ~、panpanya作品と旅行記の相性がここまで抜群だったとは気づきませんでした。夢と現実が交差してる。全て味わい尽くせる。「グヤバノ・ホリデー」は集大成のようでもありました。まる。
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コメント
この人の作品では身近な場所を探検するような話が一番好きですね
本作だと芋蔓ワンダーランドのような
あまり関係ないけど、本作を購入したらAMAZONにお薦めされた
“有害無罪玩具”というのも面白かったです