ひどい友達がいるんだ いじけたその人を
一発ぶん殴ってやりたいんだ
「四月は君の嘘」9巻を何度も読み返しちまったぜ。面白すぎて脳汁出るんですけど。
もう読んでる時のテンションがヤバイ。上がったり下がったり鳥肌立ったりグッときたり…、ジェットコースターのような感情の揺れ幅なんだってばよ。圧巻であった。
9巻は公生のカッコよさが半端でなかった。ひどい友達(かをり)を一発ぶん殴る公生△□×(さんかっけー死角無し)といったところ。思わず、ぶるっと震えちゃうじゃないの。なにこの爽快感と読後の気持ちよさは。なぜ、公生はここまでカッコよかったのか。
そこに至る過程をまずは振り返ろう。
8巻のラストを思い出して欲しい。
8巻ラスト
「あなたってほんとに変な人」「病院にお見舞いにきたのに、ずうっと黙り込んでいるんですもの」「あたしと心中しない?」
8巻ラストの32話「似た者同士」で、かをちゃんが公生に対して言い放つ、吹き出し中で括弧でくくられている台詞。どっかで聞いた事があるデジャブ?と感じた人も多いのではないでしょうか。教科書にも載ってる「いちご同盟」の台詞である。
ピアノをしてる主人公、野球部のエース徹也、不治の病の直美の物語。
今さらながら、「四月は君の嘘」は「いちご同盟」のオマージュ的なところがあることに気づきますね。
いちご同盟というのは15(いちご)歳の同盟であり、公生達と同じ年だし置かれてるキャラのポジションもかぶる。
んで、8巻ラストのかをちゃんは「いちご同盟」のヒロイン直美の台詞を暗唱したわけである。おそらく「いちご同盟」のヒロインと自分を重ねたのであろう。これをあえてそのまま公生に述べた、そして公生もその真意を理解している。この流れが素晴らしい。
まず、かをちゃんが「いちご同盟」を手に取ったのは27話「重なる輪郭」です。
かをちゃんが二度目の入院をし、はじめて3人(公生、椿、渡)でお見舞いに行った時で。渡が図書館から沢山の本を無断で借りてきた中で、「こんなに読む時間ないよ」と呟きながら手に取ったのが「いちご同盟」である(表紙から察するに)。
かをちゃんは「いちご同盟」を読む
入院中に「いちご同盟」を読むかをちゃんの図。
公生が1人でお見舞いに来た時にもこれを読んでおり、公生が入ってくると「キャー」と図書館で借りてる本なのに投げつけていました。
ここで括目すべきは、公生も読んでいた点と、それをかをちゃんが知っていたことである。図書館から渡が無断で借りて来た本であり、かをちゃんは図書貸出カードにはある名前が記載されていた事に気付くのである。
図書貸出カード
有馬公正も以前に同じ本を借りていた。
つまり、かをちゃんは「いちご同盟」のヒロインと同じ台詞をそのまま公生に叩きつけたのは、公生も読んでいた事を知った上で、あえてまったく同じ台詞を暗唱してみせたのである。
公生はそれに気付いていた事でしょう。色々と悩んだ末に、再びかをちゃんのお見舞いに行きます。そして、かをちゃんは久々に来た公生に対して再び同じように「いちご同盟」の一文を暗唱。
「もう来ないかと思ったわ」
基本的に入院中のかをちゃんの台詞で吹き出しの中で敢えて「」(括弧)で括られてるものは「いちご同盟」の台詞の暗唱である。ネタバレで申し訳ないですけど、「いちご同盟」ではヒロイン・直美は死んでしまうのである。自殺すら考えていた主人公は直美と出会い心の成長をし、最後に直美を忘れず生きようと強く思う話である。
モチのロンで公生も読破済みなのでかをちゃんが何でわざわざ「いちご同盟」と同じ台詞を暗唱した心境を理解していることだろう。なにを理解かって?かをちゃんの心境とはズバリ、「いちご同盟」のヒロイン・直美と同じように死を受け入れたことであろう。
「あなたに会えて、よかった」
「いちご同盟」の死を受け入れた直美の台詞より。
なんつーかね、ダブるんですよ。一連のかをちゃんと公生のやり取りと、「いちご同盟」の死を受け入れた直美が。
ダブるんですよ!
「君でいいや」
からの~
「君でよかった」
ふむ。めがっさ名シーンではある。
公生の「死んでも忘れない」という台詞を聞いた後に「うん、やっぱり、君でよかった」というかをちゃん。1巻の渡の代役として公生を任命したように、「君でいいや」からの「君でよかった」(31話)。公生に出会えて良かったという名シーンではありますね。だがしかーし!これはつまり、かをちゃんは「自分を忘れないでいてくれる=自分は死ぬことを受け入れた」なのである。
それを踏まえた公生の回答。
公生△□×(さんかっけー死角無し)
ひどい友達がいるんだ いじけたその人を
一発ぶん殴ってやりたいんだ
意訳すると「まずはそのふざけた幻想(自分の死を受け入れる)をぶち殺す」、「生きたいと言えェ!!!」といったところか。少年漫画の主人公である。公生は言葉で直接かをちゃんに言いません。演奏で訴えかけるのである。音楽は言葉を超えるかもしれないからね。
9巻のキモは間違いなく公生&凪の2人の演奏であろう。
2人には、共通点がある。演奏(思い)を「ある人」に届けさせたいのです。2人が届けたい相手は、2人にとっては背中を追いかける存在だったのである。
背中を追いかけます
いつも後ろにいる。思い出すのはいつの後ろ姿である。
背中を追いかける相手が立ち止ってしまったようだ。立ち止まった先に進む相手を後ろから蹴っ飛ばすかの勢いでハッパをかけたのが9巻の公生&凪の演奏。それがまあ鳥肌が立つぐらいの勢いと圧巻の演奏でありました。
今回の演奏は最初は公生の視点ではじまったのに「邪魔だなあ 邪魔だから 消えろ―」と音を消し、そこから凪が狂言回しの役割で語られたけど、凪から武志への訴えであると同時に、公生からかをちゃんの訴えでもあるところがグッときますね。これは紛れもない2人のワルツであった。
2人の演奏です
あの日のように、また、その背中を追いかけさせて
私の(僕の)ヒーロー
演奏中の凪の心の声。
同時に公生の心の声であったとすら思うね。
演奏終了後の「届いたかな…」「うん、届いたよ」「きっと―」のやり取りが、これまた胸熱すぎるというもの。届いたのである。武志は「上等だ、やってやるよ」と再び凪の前を進みだす。凪はその背中をもう一度追いかけることでしょう。そして、かをちゃんも…。
届いた
「未練が生まれたのは君のせいだ」「夢が叶ったからもういいって思ってたのに」「諦めてたのに」と、自分の死を受け入れて達観してたかをちゃんが再び立ち上がる。
この瞬間に「四月は君の嘘」は「いちご同盟」を超えたと思いましたね。
いや語弊があるな。作品として上か下かでなく、少なくとも宮園かをりは「いちご同盟」の上原直美ではなくなったのである
公生
「君は王女様じゃないよ」
「僕はラヴェルなんて絶対弾かない」
これは「いちご同盟」冒頭の主人公がラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を音楽室で弾き徹也、そして直美と知り合った。そして病室で直美にも弾いてみせた曲を指していることでしょう。
それを公生は真っ向からかをちゃんは王女様じゃないし、僕は「いちご同盟」の主人公みたいに弾かない、と言い切った。
あ、これかをちゃん生きるなと思いましたね。
そも作中でもかをちゃんの病名は一切語られてないからね。
私はかをちゃんは死ぬものだとずーっと思ってました。でも、9巻を読んで考えが変わりましたね。また見たい!2人のワルツを!てか、この展開からかをちゃん殺したら作者はまじもんの鬼畜やで!
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