仙石寛子先生の漫画が2冊同時発売!
一気に『あなただけ宝石』『花はニセモノ』(仙石寛子)を読了しました。
超良かった!仙石作品は極上の甘さの中でどーんと真ん中にある「切なさ」がキモだと思うんですけど、もう甘いようで切ない話のオンパレードで心に響きまくるってものです。
『あなただけ宝石』は楽園WEB増刊とひらりに掲載された作品の短編集。
収録されているのは「あなただけ宝石」5話、「ぷよぷよ」「日向で咲いて」「夏が終わっても熱い」「白、またはピンク」「バニーカフェ」「白いことが多いドレス」「本と兄と弟」「尻と姉と妹」「金魚と兄と妹」の10本。ヘテロ(しかし問題が多い)から百合やBLまで雑多。
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とてもニヤけた
これが珠玉の短編集である。
ヘテロと言っても、姉弟だったりと基本的に問題有りの禁断の恋である。全編通して、この恋は世間的にはまずいんだけど、それでも好きという心の機微や雰囲気が素晴らしい。切なさMAXである。
表題作の『あなただけ宝石』は実の姉と弟の話。
仙石作品の王道で正道なり。いやー、やっぱり実の姉と弟はいいですねー。
最近、告白されて彼氏が出来た姉と、それを聞いて「変な顔」をした弟。
彼氏になんて言われたの?と冗談半分で押し倒すような格好になれば動揺しまくる姉。
弟が「俺も彼女作ろうかなぁ」と呟く弟に対して変な顔する姉。実は、姉の彼氏は弟に声や名前が似ている…という。そう、お姉ちゃんは実の弟が異性として好きだったのであった。それは弟も同じという。
いちいち心の声が刺さるというもの。
弟を好き、姉が好き…だけど!
という切なさがこれでもかと味わえる。
痛いというかSAN値を削られるというより、ただただもどかしい。
基本的に、仙石先生のカップルって「受け」と「受け」でこそ真価を発揮すると思う。
「攻め」などいなくて、「受け」と「受け」だからこそ、独特のじれったさと切なさともどかしさに昇華する。この姉弟は実に良いね。両方「受け」だから。
「受け」VS「受け」の仁義なき戦い。
もちろん、受けと受けじゃ話が転がらないんだけど、そこは上手にラブがコメる展開にさせてくれる。ずるいお姉ちゃんと卑怯な弟である。
姉がファーストキスは弟だと思ってこの人(彼氏)とはキスできないと絶妙のスルーパスを送ったのに始まり、弟のキス!なお弟はキスしておいて「俺にだったらキスされてもいいって話じゃないの?」と卑怯な言い回し。以下、姉弟はあくまで「受け」の姿勢でそっちから攻めろっていう押し問答をするのであった。最高だった!
全編通して「禁断の恋」がテーマのようになっていたと思う。
たまに、切なさなど一切無い糖度100%の甘いだけの作品もあったので、切なさの中で箸休み的な役割をはたしていた。それでも禁断かつタブーな恋心は濃く深く胸に刺さる。
『花はニセモノ』はその発想は無かったというもの。
男と男の同性カップルであるが、いつまでも一緒にいられますようにと神様に願った後…片方の男が女の子になっていた。なんか朝起きたら女の子になってたんです!
いままで数多くの性転換するTS漫画を読んできましたが、この角度から描かれたのははじめてじゃないでしょうか(多分)。元々が男同士の同性愛者でありながら、片方が女の子なったら?愛は貫けるのだろうか?
基本的に性転換して男が女になっちゃうのはあくまでコメディですよ。
『かしまし』のように、性転換しても女が好きだを貫き極上の百合漫画になるのはオタク受けするけどさ。逆に女の子として覚醒するも良し。
で、今作『花はニセモノ』は、元々が男同士の世間的には禁断のカップルだったのが片方が女の子になれば世間的には万事オーケー…とはならないよな!
「なんで女になっちゃうんだ」「女になっても俺は俺なんだけど」のやり取りは深いね。奥が深い。いや業が深い!中身は同じです。でも性別は変わりました。どうしよう…!?
『花はニセモノ』の面白いところは、男同士の同性愛カップルの片方が女の子になるだけでなく、周りの記憶の書き換えが行われているところ。
両親や仲の良い友人まで、性転換した事象を元々女の子だったという記憶に書き換えられてしまっている。
つまり、本当は男だったと知っているのはメインのカップリ2人だけ。
で、世間の認識としては付き合ってるわけですよ。男女が普通に付き合ってる…なのに!両者は上手くいかない。すれ違いまくるし今までのようなラブラブになれない。
そりゃそうだ。
だって、もとは同性同士のカップルだったんだからねぇ。同性愛者と知って恋を諦めて、ようやく巡り合ったのに!まさか女の子になっちゃうなんてね。2人はどうなんねんっていうね!
「俺だって好きで女になったんじゃない…!」ってのは真理かな。
愛は好きは性別を超越するのだろうか。よく見た目じゃなくて中身が性格が好きになった理由ってのはあるけど、性別が変わっても貫き通せるだろうか。究極かつ禁断の愛の証明なのかもしれない。
真面目に考えると愛のありかがひょっとしたら見えてくかもしれない傑作である。このすれ違いと痛さは、私の心の琴線を鷲掴みにします。男と男、一変して男と女…そこに愛はあるのかい?中身が好きってこういう事じゃねーの。色々と考えさせられる。お勧め!
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