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あだち充先生最高傑作読切は『ショート・プログラム』収録の「チェンジ」説

ショート・プログラム

 

あだち充先生の最高傑作読切は「チェンジ」であると主張したい(挨拶)。

 

数々の名作があり連載漫画の最高傑作は『ラフ』という方が多いかと思いますが、では同じぐらい数々の読切名作がある中で一番は何か?ちょっと考えてやっぱ『ショート・プログラム』1巻収録の「チェンジ」だよなぁって結論になる。

 

※あだち充作品は読切含めてサンデーうぇぶりで無料で読めます。

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主な登場人物

名前 皆人
年齢 高校生(高3?)

 

名前
年齢 中二(来月14歳)

 

名前 悦子
年齢 皆人の1年と10ヵ月年上

 

名前 不明(喫茶店マスター)
年齢 不明

 

主な登場人物は4人。と言っても悦子さんと喫茶店マスターは舞台装置のようなキャラなのでメインは皆人と圭の2人のやり取りの話です。

 

皆人は悦子さんが好きで悦子さんはマスターと付き合ってる(皆人は知らない)、そして圭は男だと思ってたという絶妙な関係です。

出会い

 

皆人と圭の出会いは冒頭。皆人の家が経営するスーパーのメロンをひっくり返してしまった圭を追いかけてついでに男4人をのして助けた格好になる。

 

圭はメロン代弁償のためスーパーで無償で働きながらも何だかんだで皆人の弟分的なポジションになります。ある意味良いコンビ。

 

ちなみに皆人は圭を小学生男子だと思ってるし、来月14歳と言われてもまったく信じてない。チビの男子と思い込んでるところが「チェンジ」が最高すぎる所以です。

伏線が効いてる

考えさせてという時は、本当に考える時だ!

 

あだち充先生と言えばインタビューなので策の展開をほとんど考えてない行き当たりばったりと述べてますし、それが魅力でもあるんですが、「チェンジ」は伏線がめちゃくちゃ効いてる。

 

読切だと読み返すことで「お、これはそういう事だったんだ!」という気付きがあって何度も楽しめるのがあだち充読切の面白いところ。スルメのように噛み応えあって味が染みる。

 

例えば、あとで圭が女子だったと判明したらそういう仕草や行動が「なるほど」と読み返しで納得できる。

 

そして最高に効いてる伏線は「考えさせてくれ」です。皆人はモテるようで、ある女子からラブレターを貰う。速攻フルわけですが、圭はあの断り方は無いと指摘する。

 

それにしてもあの断り方はないっすよ。男は思いやりです。とりあえず考えさせてくれの一言くらい言ってあげて。少しくらい夢見る時間を与えてやったって、罰はあたらんでしょが。

 

そして皆人は「考えさせてという時は、本当に考える時だ!」とスタンスを変えません。

「間」の取り方が神ってる

 

あだち充作新といえば風景や空などを頻繁に使う「間」の取り方が絶妙です。連載漫画でもよい意味でスローテンポを演出してます。短編だとこの「間」がさらに絶品。

 

「チェンジ」はちょっと時が流れた演出で風景の「間」を入れて舞台・時間が飛びます。

 

特に葉っぱが待ってる「間」があるんだけど、再余は青々としてはから落ち葉が待ってる。時が経ったのかと分かる。この使い方が唸るぐらい上手い。

モノローグは一切無し

あだち充作品は今も昔もモノローグが一切無い。心の声が男女共に無いので仕草や表情で想像するしかないのですが、めちゃくちゃ分かりやすい。

 

意味深あるいは笑顔で「…」となってる時に「あー、惚れたな」とか「寂しがってるな」ってのが人目で分かる。逆にモノローグがないからこそのあだち節が効いてます。

圭が女子だった

あらあら、すっかり女の子しちゃって。

どうしたの学校以外でスカートなんかはいたことなかった人が。

 

ひょんな事で圭に揉めてしばらく会わなくなった2人。再会は「まさか!」の連続でした。男子だと思ってた圭が実は女の子だった。しかも悦子さんの妹だったのです。タイトル「チェンジ」はそういう事かと。

 

もちろん心の声は一切ない。だからこその機微がある。皆人の驚いた表情と焦ってる様子が良い味だしてるんですよ。

 

そして圭の言葉がさらなる「まさか!」である。

 

5年前のお姉ちゃんの写真…。5年後にああなるとは約束できないけど。可能性はあるわけよね。努力するから…つき合って。

 

 

悶絶。

 

破壊力が桁違いである。

 

まさか圭が女子だった。

まさか圭が悦子さんの妹だった。

まさか圭が皆人のこと好きだった。

 

「まさか」の三連星ですよ。読み返してみると「あー!そういう事か」と納得できる仕様なのも味わい深い。神ってる伏線と回収すぎる。

あだち充漫画ラストは芸術

考えさせてくれ。

 

はぁ~(感嘆)。

 

「考えさせてという時は、本当に考える時だ!」という前振りが完璧に効いてるアンサーである。本当に考える時がきたのである。ただこれから2人がどうなるかは分からない。あえて「OK」でなく寸止めなのも美学の一つ。

 

あだち充作品はちゃんと告白したのって『タッチ』ぐらいしかない。ほぼ「これから2人はどうなるのか?」ってラスト。でもその後の結末は容易に想像できる。そこがエモい。

 

例えば『スローステップ』。誰とも結ばれなかったけど夢で転任する山桜先生と将来暮らしてるようなことが示唆されました。「ほー!山桜先生と結ばれるのか!?」と想像させる終わり方でした。

 

『ラフ』は二ノ宮亜美が告白したっちゃ告白したけど、大和がそのウォークマンを後で聞いたかどうかは分からない。『虹色とうがらし』も同様。七味と菜種いつもの日常で締めるが、未来予知能力がある麻次郎が2人の婚約してる絵を描いてた。『じんべえ』も「お食事、ご一緒にいかがですか。」と元義娘から誘って終わる。

 

結末をはっきりさせてるけど、関係がはっきりしないオチ。

 

これあだち充美学なり。

 

『ショート・プログラム』収録の「チェンジ」はこの辺の「結末ぼかし」と「2人は結ばれるな」って塩梅が絶妙すぎる。余韻が半端ない。

 

色褪せぬド名作です(断言)。

 

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