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最後の神崎くんシリーズ『セカンドバージン』が超良かった件


セカンドバージン (芳文社コミックス)
 

二宮ひかる先生の『セカンドバージン』を読了。
良い。実に良い。表題作の「セカンドバージン」が4本、独立した短編「君の名は」「くじら」「7年ごとの彼女」「寝室の猫」「ハヤブサ」が5本、「セカンドバージン」の後日談「ユウコの手紙」の合計10本が収録された短編集。読了後の満足度は文句無しなり。

 

さて。ちょっと豆知識でも。

別に知らなくてもまったく問題ないんですけどね。表題作にもなっている「セカンドバージン」は二宮ひかる先生が芳文社で発表している作品の中で共通点があります。それが2人の登場人物、神崎とユウコです。

 

最初は関連としてリンクしている『ダブルマリッジ』という作品。

 

この漫画は少子化や晩婚化を解消するために「重婚法案」という法律が出来て、結婚する相手はただ1人の伴侶を選ぶ事でなくなった「if」のストーリーです。

 

メインに登場するのはユウコ(伊藤裕子)という看護師と、ユウコと不倫関係にあるサラリーマン生田と、生田の嫁の詩織、生田の同僚の神崎…の4人です。


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神崎 / ユウコ
 

『ダブルマリッジ』単体できちんと完結しています。

非常に面白い作品なのですが、4人の登場人物の中で生田の不倫相手のユウコと同僚の神崎が、後の作品でとても重要なキャラとなります。別に抑える必要は無いんですけど、神崎とユウコは今後の作品に繋がっていきます。

 

それが後に発表された『神崎くんは独身』である。

 

『神崎くんは独身』は、長編「神崎くんはいとこ」(4話)と「海辺の町にて」(3話)の計7本と短編「千年婚」と「青」が収録されています。「神崎くんはいとこ」と「海辺の町にて」は一つの神崎くんシリーズとなっています。この神崎くんは『ダブルマリッジ』の神崎なんですが、そのまんま同一人物という訳ではありません

 

二宮ひかる先生は以下のように後書きで説明していました。

 

この本(神崎くんは独身)は一応、この本と同じく芳文社様から出た「ダブルマリッジ」のアナザーストーリーとして描かれました。が、正直、あまり関連はないです。この本である神崎くんが書いたつたない小説が「ダブルマリッジ」という位置づけで、同じキャラクターを使って全く別のお話を作る、ということをやってみたかったわけです。が。まあ全く気にしなくていいです。

 

というわけで、一応の設定は『ダブルマリッジ』は『神崎くんは独身』の神崎が書いた小説という位置づけになりました。登場人物の神崎&ユウコは勿論のこと、『ダブルマリッジ』の生田も詩織もキャストを変えて登場します。

 

『神崎くんは独身』は「神崎くんはいとこ」「海辺の町にて」の2つの長編の物語なり。これがね、実に良い話だったんです。神崎くんとユウコはいとこ同士(幼なじみでもある)。三十路手前で神崎くんの家に転がりこんで来たユウコ(15年振り)とのアレコレ。とてもニヤニヤできました


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神崎くんはいとこ
 

15年振りに再会したいとこ(幼なじみ)が一つ屋根の下で暮らす。
頬の筋肉を痙攣させるぐらいニヤけちゃう展開の連続。そもそもユウコは奥さんいる男と不倫してたんですが、あっさり捨てられ。神崎は大学の頃に付き合ってた彼女に私怨あったり。まあ、神崎もユウコも色んなことを経験してイイ年になりました。

 

そんな2人の紆余曲折しながら心を通わすようになるわけです。
そりゃニヤニヤしますよ。これぞラブがコメるですよ。大満足だった「神崎くんはいとこ」である。
がしかし!しかしである。
「神崎くんはいとこ」の後日談だった「海辺の町にて」。これが問題だ。私の精神をガリガリ削るとても悲しい話だったのです。過去の回想シーンがいちいち涙を誘うっちゅーの!切なくなるっちゅーの!


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「海辺の町にて」の過去回想
 

神崎とユウコは期待してたニヤニヤな未来はあった。
同時に胸が締め付けられるセンチメンタルブルー全開でした。
「海辺の町にて」は劇薬すぎた。見たかった、待ち望んだ未来はあったのですが、さらにその先がなんとも…。胸の痛かぁぁ!

 

そんなわけで思ったものなんですよ!
もっと神崎とユウコがイチャコラするシーンが見たいって!
それを叶えてくれたのが『セカンドバージン』なのです。

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とても良い作品『セカンドバージン』

ユウコと神崎はいとこ同士。無邪気になついてくるユウコとは裏腹に、彼女の過去の過ちを赦すことができない神崎だが…!? そんな二人がどうにかなるまでのあれやこれ。表題作4編ほか同人誌で発表された「ハヤブサ」を含む珠玉の読み切り5編も収録!

というわけで『セカンドバージン』大満足なり。
前作の『神崎くんは独身』を知らなくてもまったく問題ない、この本だけで一つの完成されたつくりになっています。

 

でも、『神崎くんは独身』を読んでいるとより深く楽しめるのも事実です。前作読んでるとニヤニヤ指数が倍増!でも切なくなるのも倍増の諸刃の剣なり。

 

「セカンバージン」は、時系列的に「神崎くんはいとこ」と「海辺の町にて」の間に入ります。もうね、これぞ俺の読みたかった神崎くんシリーズですよ!2人が心惹かれながら結ばれるまでを描いた超絶的にニヤリングできる内容なり。


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「セカンドバージン」
 

だー!くっそ!ニヤケるんじゃ!
なんというかアレですね。
ユウコのような小悪魔ちゃんにイタズラされてみたいですね(小並感)。

 

最後の神崎くんシリーズは、「誰か彼女を知らないか」「彼女は何をする人ぞ」「何が彼女をそうさせた」「セカンドバージン」の4話が収録。4本ともとても良かったです。

 

神崎とユウコがどのようにして結婚したのかが描かれるのが描かれます。2人の関係ってさ、ユウコにいじられる神崎っていう立ち位置だったじゃないですか。勝手に家に上がり込んでは神崎をドキマキさせるっていう。振り回すユウコと振り回される神崎という仲。

 

それが、ユウコも恥ずかしがっていたというシーンは相当な威力でありました。


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「照れてる?オレと同じ?」
 

一瞬!だけど乙女のように!見せた一瞬の恥じらい。
普段は振り回す系の小悪魔ちゃんで、朝起きたらベッドにいたりとドギマギさせたユウコの恥じらいは格別なり。

 

そして、2人が結ばれるのは控えめに言って最高でしたね。
読んでてとても幸福感が味わえました。ハッピーエンドの一言ですよ。まあ、その先を知っているとなんとも言えない気分になってくるんですけどね。

 

他の短編集もとても良かった。
「君の名」「くじら」「7年ごとの彼女」「寝室の猫」「ハヤブサ」はそれぞれ独立した短編。まさに珠玉の短編というに相応しいもの。個人的なお気に入りは「君の名」と「7年ごとの彼女」かな。

■「君の名は」

「君の名は」は、奥さんが旦那を「みーくん」と何度も呼ぶラブラブ夫婦の話。ある日、神様が枕元に立って人の名前は一生で呼ばれる上限が決まってるのでもう夫を「みーくん」と呼んではダメと言われます。


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もう「みーくん」と呼んじゃダメ
 

まあ夢だったんですけど。
そんな夢を見たあとのオチ。確かにもう「みーくん」とは呼ばれないでしょう。最後のオチ含めてとても綺麗に終わります。

■「7年ごとの彼女」

イギリスで伝説を現在進行形で築いてる「UP」シリーズという史上最高傑作のドキュメントがある。

 

最初は1964年に発表され、イギリスの階級格差にパンチを放つ目的で様々な階級出身、男女別、7歳の14人の子供にインタビューしました。7歳までの環境がどれだけ成長に影響を与えるのかを問いかける意味で。
それが7年後にあの子供たちはどうなったのか?と続編として14歳の彼らにインタビューしました。そのまま7年毎に彼らを追うようになったのが「UP」シリーズである。現在56UP(63歳)まで追い続けています。もはやリアル人生の記録です。必ずしも出身階級が人の運命を決めるわけではないことを証明する凄いドキュメントなり。

 

これを上手に落とし込んだと思われるのが「7年ごとの彼女」。
物語は吉田とハルナが7歳からはじまります。

 

よく一緒にいる2人はクラス中でヒューヒューとか結婚コールが起きるなど茶化されます。実に小学生低学年らしいです。この時、吉田はハルナに初恋をしました。

 

そして7年後。
14歳の2人は野球部と野球部のマネージャーでした。


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7年後の14歳
 

吉田はやっぱりハルナが好き。
7歳の時のアレコレも14歳の時のアレコレも読んでてニヤけちゃうような青春を送っています。あ、これ俺の好きなラブコメや!そう思ったものの…そうはなりませんでした。2人は別々の高校に進学します。

 

さらに7年後…。
大学生になった2人は再会するのであった。時系列は21歳の大学生!
あい分かった!これ7年ごとに描かれる2人の物語や!21歳の2人は付き合っていました。しかし破局してしまいます。

 

またも7年後…。
という感じで吉田とハルナは7年ごとに再会を果たしていきます
7年毎に歩む2人の人生が描かれるわけです。これが実に心の琴線に触れてきます。吉田とハルナの7年毎の記録…。2人の人生がギュッギュッと濃縮されていました。


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人生
 

いはやは、もう本当に素晴らしい。
吉田とハルナが歩んだ人生。あまりにも色々あった。たった20ページの短編で見事に2人の人生を描き切っていました。読後は清々しくなったね。

 

うむ。『セカンドバージン』はとても満足度高いものでした。
神崎くんシリーズを知らないでもまったく問題ないし、収録されてる短編はどれも最高でした。二宮ヒロインはみんな幻想的というか謎めいたところがありますな。そこが魅力的なんだけど。

 

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