『スクールゾーン』(ニンギヤウ)読了。
マッグガーデンの担当編集者さんから献本して頂きました。私好みの作品だから是非読んで欲しいと。で、実際読んでみたらこれが大正解でした。
女子高生のおバカ系なテンションで突き進みつつ、時にほっこりし、時に(百合的に)ニヤリングして、たいへん面白かったです。物語が進むにつれ人間関係も物語も深みが出てくるのが素晴らしい。
【10話まで試し読みできます】
『スクールゾーン』レビュー
おバカな女子高生2人組から
鬼太郎みたいな片目隠しててる高身長女子が横江礼(美人)。
ショートカットの小さい子が杉浦契(けーちゃん)。
最初はこの2人の漫才のようなやり取りのハイテンションおバカコメディです。
基本的にバグってる横江さんの頭おかしい(褒めてます)言動と、それに突っ込んでいくけーちゃんの凸凹コンビのやり取りを楽しむもの。
非常にテンポが良くサクサク展開していく漫才劇となっております。リズミカルな応酬劇は、まるで短歌でも聞いているかのような…、そんな心地良さすらある。思わずクスリとしてしまうギャグ。
まあ、序盤のギャグ一辺倒はノリとテンポが合う人と合わない人がいるかもしれません。でも、後からこんなしょうもないやり取りすら「尊い」と思える程のエピソードを盛ってくるから凄まじい。
『スクールゾーン』は後から尻上がりに加速度的に面白さを増していく作品なのです。
どんどん面白くなってく
おバカなJKの時速200キロ暴走激からの「深み」がキモよ。
- 徐々に増えて広がっていく人間関係と世界
- 僅かに確かに漂うラブコメ的な百合
- それらがピースのようにハマる
読んでて「うっひょー!」と転げ回るぐらいの破壊力が確かにあった。
『スクールゾーン』は、徐々に登場人物が増えていき、それぞれのバックボーンを掘り下げていく過程がめっちゃ面白いんですわ。
登場人物が増えて青春群像劇になる
八手さん
5話から登場する隣のクラスの八手さんを筆頭にキャラが増えていくごとに面白さが増していく。
八手さんと同じ映研所属の後輩・日生(椿)。椿のクラスメイトのギャル山城要。山城のギャルコンビの中谷。椿の双子の妹で別の高校に通う柊。柊のクラスメイトの転校生・空木れん。八手さんのクラスメイトの藤まつり。藤まつりが通うゲーセンのお姉さん…。
エピソードによって焦点を当てられる彼女たちは、それぞれ独立したオムニバス作品のようにまったく違う世界となってる。それらが徐々に繋がっていく人間関係の模様がね。いいんだ。
- 少しずつ登場人物が増えていく
- 各キャラにはそれぞれ独立した物語(人間関係)がある
- それが繋がっていく様が極上
横江さんとけーちゃんの2人からはじまる物語も話が進むにつれて徐々に登場人物を増やしていき、各キャラが主人公する青春群像劇となっていきます。
パズルのピースがはまるように広がっていく繋がっていく関係が深みを物語を彩り深みを増してく。
はじめはコマの隅っこにいるようなキャラが後で重要人物として主人公でもある。
ラブがコメって百合百合
また、『スクールゾーン』を語る上で外せないのが破壊力抜群の百合です。
メインの横江さんとけーちゃんは客観的に俯瞰して冷静に判断しても「両想い」と言い切れる。
横江さんがけーちゃん大好きオーラ(性的な意味で)発しまくってるのは序盤から明白でしたが、けーちゃんはけーちゃんで…というのが素晴らしい。ニヤリング&ローリングで身悶え3回転半を記録します。
14話
けーちゃんこと、杉浦契は高2時ではボーイッシュなショートカットですが、中学時代はロングの髪型でした。なぜ髪の毛を切ったのかといえば…という理由が14話でピックアップされるのですが、控えめに言って最高に「尊い」ものでした。
横江礼と杉浦契はそれぞれの視点で「現在」「(中学時代の)過去」が随所に掘り下げられおり、もう読ん出て「あー!」って拳を上げて叫びそうになるエピソードが満載。同じ中学時代の過去である横江視点の49話はほぼイキかけましたね。
仲良すぎて親友を超えた中学からの腐れ縁のメイン2人には何人も入れない確かな「絆」があり、強固な「想い」が糖度200%で紡がれる。「あー!もうちくしょう!」と不器用さに撃ち抜かれる。
メイン2人の横江礼と杉浦契は濃厚なスイーツもさることながら、『スクールゾーン』は青春群像劇なのがキモでもある。色んなカップリング(?)がある。砂糖の幅が広すぎる。
ド甘だけでなく、少甘、甘酸っぱさ、しょっぱさ、闇…とバラエティ豊かなところも女子青春群像劇の見所です。甘いだけでない独特の雰囲気のヒューマンドラマが色々とある。
日生椿×仲谷×山城
10話
個人的に最高のお気に入りなのは「日生椿と山城と仲谷」の1年ズによる三角関係(?)ともいえぬゴチャゴチャした雁字搦めで変な風に絡み合うもの。
陰キャでコミュ症の日生(姉)さん。彼女はひょんなことからクラスメイトのギャル・山城と仲良くなっていきます。この2人の間にも僅かだが、しかし確実に如実に濃厚に百合カップリングの匂いが感じられる。
そして、椿さんと山城が仲良くなっていく様子が面白くないのが、山城のギャル相方である仲谷である。
む~~~…(39話)
親友の山城が椿さんに取られるといった感じで面白く無さそうなりアクションを連発。どう見ても嫉妬とヤキモチです。
彼女自身、山城のこと好き好き大好きなのが明白なほどメスの反応をしてるわけです。そりゃ、好きな子を取られてイラッときてしまう心情も分からないでもない。
大好きな親友が取られるって危機感もあり、モノローグで椿さんを「嫌い」と言い放ったり、ちょっとしたイジワルのようなこともしてしまう。
「なろう系」で例えるならイジワルお嬢様のような立ち位置だったのが仲谷のポジションです。でも根はいい子なんで、それを気にしたりして、徐々に椿さんとも近づくわけで…。
72話
最高かよ!
うわ!なんだろう。見てるだけでこっちがドキドキしてきた。繰り返すけど、この2人の関係って友達の友達…よりも、もっと遠い位置関係だったからね。
- 仲谷にとっては、親友が絡んでるクラスの陰キャ
- 椿さんにとっては、最近話しかけてくるギャルの相方
2人きりだと会話が「話・即・終」で続かない。
100万光年も離れてたのに自然とキャキャウフフして手を握ってるんですよ。手握り合ってことに気づいてお互い赤面するんですよ。ピュアカップルかよ!
ってか、たった数ページしか描かれていないこの2人の手つなぎが濃厚すぎる。
こういったニヤリング&妄想を掻き立てるシーンがそこかしこに描かれ、単行本で10冊分は描けるであろうイベントの数々をたった2話で描いてしまったのは、もったいないと思うと同時に、その描き方があまりにも上手すぎて、芸術的で大満足していた。
手を繋いから2人の台詞は全くない。サイレント。仲良くデートならぬ遊んでる様子が描かれるのです。
2人が全く喋ってないのに、その表情や仕草、ピックアップされる手を繋いでるコマが、あまりにも生き生きとしてる。台詞無いのにまるでキャキャウフフ実況が聞こえてくるようです。
たった1ページで描いてしまう2人の距離を近づけるシーンが芸術的。女子の友情なのかLOVEなのかあやふやな百合的妄想できる独特の雰囲気よ。
いつまで手握ってんねん(笑顔)
そんなこんなで気づいたら1年ズだけで大勢力になってた。
- 椿さん×山城 ←有り!
- 山城×仲谷 ←有り!
- 椿さん×仲谷 ←有り!
気づいたらワンピの三大勢力のような均衡が築かれてたのです。この3パターンのカップリングに結びつくエピソードはどれも極上で甲乙つけがたい。
百合脳を持ってる者はオーバーヒートする燃料満載です。
『スクールゾーン』まとめ
各キャラが主人公の青春群像劇ですわ。
バラバラでオムニバス漫画のような状態だが全てが繋がりそうなのも必見。
まだ3巻なのに濃密で濃厚なヒューマンドラマが味わえる。思わず頬を緩めてニヤニヤしてしまう関係から、こいつらの関係って…「?」から、雁字搦めでほどけそうもない関係(褒め言葉)。
どんどん重厚になっていく物語の厚みも見所です。
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