鳥山明先生が亡くなった。僕ら世代にとっては『ドラゴンボール』は人生だっただけにショックは計り知れない。
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— ドラゴンボールオフィシャル (@DB_official_jp) March 8, 2024
履修して読むものでなく、もう生活の一部で男の子の共通言語でした。はじめて知り合う子ととりあえず『ドラゴンボール』の話で仲良くなるとかね。どのキャラが好きとか、誰が強いとか…。
『ドラゴンボール』『ドラクエ』『クロノトリガー』なんて一般常識で鳥山明ワールドで育ったといって過言でない。
そんな『ドラゴンボール』は後世に影響を与えた。ジャンプに限らず胸に亀川流のマークある作品は枚挙にいとまがない。その一つが残像・姿が消える超スピードである。
残像・姿が消える超スピード
『ドラゴンボール』48話
『ドラゴンボール』以前からバトル漫画はあったけど、外連味溢れる攻防の妙といいますか。迫力満点でやり合う・必殺技出すだけでなく、避けたりガードするバトルシーンもいちいち魅せてくれた。
また、カンフーからより超人レベルの戦いになった天下一武道会で表現するのが「残像拳」と「一般人が消えたと錯覚する超スピード」である。残像やバトル中に消える現象を鳥山先生が最初にやったかは知らんけど、広めたはのは間違いない。
気功派(エネルギー派)と一般人から(読者も一般人の視点で)姿が消えたように見せる演出・残像は『ドラゴンボール』以降のバトル漫画では一般的な常識の攻防として使われるようになったと思う。
その中で、今回取り上げたいのはその延長線上でバックを取ることです。
敵の背後を取る
うしろだ(『ドラゴンボール』84話)
ここだ(『ドラゴンボール』200話)
残像・消える現象で起きるのは相手が見失うので最も攻撃しやすいポジション取り。つまり背後を取って攻撃することです。『ドラゴンボール』ではこの有利ポジションを取る現象が頻発します。
残像拳や超スピードや目くらましで相手の視界から消えて背後に回って攻撃する。鳥山明先生の格闘描写はスピーディーで分かりやすいのが特徴で、バックを取って一言述べる場合が多い。「残念でした」「うしろだ」「ここだ」「ひっかかったな」…等々。
もちろん『ドラゴンボール』では、後ろを取ったら100%ぶっ飛ばして攻撃が成功してるので、バック取った後に一声かけるのは余裕の表れでもありました。
そして、後に影響受けたバトル漫画でも消えてバック取るDB構文は常識の攻防になったのは前述の通り。この超スピードでバック取る有利ポジションを間違った解釈も生まれます。それが『ブラックキャット』です。
紳士的な戦いと呼ばれた黒猫バトル
後ろがガラあきヨォーン!!!(『ブラックキャット』173話)
『とらぶる』以降は神と言われる矢吹健太朗先生も、一昔前…はインターネッツで嘲笑の対象で叩かれてもいました。
『ブラックキャット』は、『ドラゴンボール』『カウボーイビバップ』『ハンター×ハンター』『るろうに剣心』の影響を多分に受けておりました。
もちろん先人の影響を受けるのは当たり前。
それを踏まえて漫画は進化するものです。
ただ、『ブラックキャット』は上辺だけの薄さというか…。「レールガン」って中二心をくすぐるネーミングセンスで電磁気力関係なくオリハルコンの力だとかビーム砲まで出す誤解釈としか思えないものなど、非常に突っ込み所満載でありました。いまの矢吹先生は神です(フォロー)。
で、もちろん鳥山明構文のバトル外連味があったわけです。超スピードで相手の背後を取るのはお約束でもあった。そこで有利ポジションで攻撃前に一声かける余裕に留まらず、それ故に起きた現象は今なお伝説です。
「後ろがガラきヨォーン!!」と教えてあげた故に反撃食らうの図
バトル攻防で絶対的ポジショニングの相手の後ろを取って、「後ろがガラあき」と教えてあげた故に反撃にあってバック取ったのに攻撃が当たらなかったのである。
絶対『ドラゴンボール』以降の肉弾戦の魅せる演出の一つ…超スピードで相手の後ろを取って攻撃する…であるが、攻撃前に一声掛けてしまったが故に当たらなかったという突っ込み所を生みまくったシーンである。
この現象を黒猫紳士とも当時は言われてました。わざわざ未知数のはずの相手でも、戦う前に未知数なのに「自分の能力詳細をベラベラ喋って教えてあげる」「バックを取って攻撃前に忠告して避けられてしまう」です。
優しくて紳士すぎるバトルと言われた所以です。黒猫紳士は『ドラゴンボール』の影響を受けつつ、ちょっと間違った解釈が起きた。DBなら後ろ取ったら100%攻撃当ててましたからね。
そんな残像・超スピードをバトル漫画で一般常識にした『ドラゴンボール』の外連味で、しっかり軌道修正したのが『ハンター×ハンター』でもある。
優しさに定評のあるナックル
なんて…優しいんだ…!言わなければ秒殺だったかもしれない。あえて教えてくれる(207話)
鳥山明先生が最初かは知らんが、残像・超スピードで消える現象をバトル攻防で入れるのは『ドラゴンボール』以降で常識となった。その中で、『ブラックキャット』のように間違った解釈で余裕の表れでなく、それが致命傷になる間違った解釈を正したのが『ハンター×ハンター』である。
ナックルは当時のゴンたちよりも遥かに強者だったのですが、超スピードで消えて背後取れば「後ろだ、コラ」とわざわざ教えてあげてました。また技について講釈してレクチャーもしてあげてました。
戦ってるゴン本人が思うのです。
「なんて…優しいんだ…!」と。
冨樫先生の『幽遊白書』は絶対DBの影響を受けてた。エネルギー波的なレイガンや展開一武道会要素や戸愚呂弟筋肉増量(フリーザ様の100%)など。必殺技応酬合戦でなく、攻防の妙といった外連味溢れるものもわんさか。
そんな冨樫先生が読者に「これドラゴンボールのリスペクトです!」と包み隠さず出すのがゴンのジャン拳(初期孫悟空の必殺技)であり、間違った鳥山バトル構文だった『ブラックキャット』を正す的なナックルの言動でもある。
まさに純度100%の『ドラゴンボール』リスペクトであり、影響受けまくったからと漫画で表現するアレコレだったわけです。平成~令和で最先端と評されるハンターがDBを持ち上げ影響受けたのを堂々と表現する。素直にカッケー!
「ジャンプGIGA 2016 vol.2」の岸本先生との対談でも鳥山明先生リスペクトをしまくってました。ジャンプ黄金期ではライバルみたいな関係だったのに、素直に鳥山先生を持ち上げまくる言動と、作中の堂々としたDBリスペクトが凄く良いんだ。幽白時代と違う人間味と胸の内を晒す感じ。
ある種、『ドラゴンボール』リスペクトとその凄さを今に伝えてるのはハンターかもしれん。まあ、令和でも天才漫画家と称される冨樫先生がどんだけDB影響受けたか…正しく鳥山明イズムを伝えるかってのもハンターの味にもなったる(ような気がする)。
そんなこんあで、ド派手なアクションや必殺技応酬でなく細かい攻防を絵で魅せるのは『ドラゴンボール』以降でバトル漫画が劇的に変わった。その延長線上で残像・超スピードで消えた(一般人…その視点の読者も)外連味攻防、そして有利な背後取るポジショニングよ。
余裕の表れ(DB自体はバック取ったら100%攻撃成功させてる)だし、影響受けたバトル漫画構文(後ろだって教えて避けられる)があり、平成後期できちんと鳥山明バトルの外連味を伝えたハンターがある。
いまのバトル漫画では、バック取ったら言葉を発することなくきちんと優位に攻撃してる。その紆余曲折も『ドラゴンボール』があったからこそ。今もバトル漫画に限らず鳥山明先生が表現した漫画シーンはきちんと受け継がれ、よりディティールに凝ってる。
『ドラゴンボール』の戦ってるシーンは偉大過ぎる!
コメント
チャンピオンの「ブラックジャック創作秘話」の鳥山先生版をジャンプで連載してほしい。
いいな、それ
ぜひ読みたい
ヤマカムさんならDB特集をして下さると期待しておりました。背後を取るをいう動作や、後世の影響に着目するのは、いかにもヤマカムさんらしいマニアックな視点です。
和月伸宏の武装錬金でも背後をとるのをギャグにしてましたね。互いに背後を取り合って移動手段にしたやつ。
背後を取る話の裏でヤマカムが悲しみを隠してるの伝わる
何度も記事の題材にしてきたDBについて
また新しい視点の記事を書くところに愛情の深さを感じられます
格ゲーでも残像表現が使われたりするけどDBの影響なんだろうか
スカウターの戦闘力表示もかなりの影響を与えてますよねえ
それに関しては『キン肉マン』の超人強度が先ですね
強さを数値化するのゆで先生が最初かは分かりませんが、広めたのはキン肉マンです。
どうやって数値(超人強度上)の格上に勝つって側面で盛り上げたのは私の知る限り『キン肉マン』かなと。
たしかに!